※ゼスティリアメンバーが全員います。アリーシャ、デゼル、ザビーダも普通にいます。
アリーシャは従士のまま。スレイの負担の件は忘れて下さい(え)





変異憑魔を倒す為に色々な場所を巡るわたくし達は一旦アイフリードの狩り場の丁度海が良く見える所で休憩を取っていた。持っていたお菓子を食べたり、海を眺めたりとそれぞれ違う休憩の取り方。わたくしは心地よい風を感じながらも海を眺めていた。


「皆さん、今から大切な人に感謝を伝えましょう!」


突然ライラさんの明るい声が後ろから聞こえてそちらに顔を向ける。皆さんもわたくしと同等、ライラさんを見ていた。
「いきなり何だ」、そう告げるのは明らかに面倒だと態度に出ているデゼルさん。エドナさんは「面倒」と包み隠さずあっさり仰るエドナさんにライラさんは紙葉を見ながら占いで出たのだと楽しそうに述べる。が、一向に自分の意志を曲げない二人。さらにはミクリオさんまでもが反対した。…少し顔が赤い所、改めて感謝するのが恥ずかしい…のでしょうか。


「オレは構わないよ、ライラ」

「あたしはどっちでもいいなぁ。という訳で皆に合わせる」

「俺様はライラの頼みなら喜んで受けるぜ」

「私は賛成です、ライラ様」


ライラさんの意見に賛成する人が三人。反対の人が三人。どちらでもいい人が一人。必然的に最後に残ったわたくしの一言で感謝をするか、しないかが決まる。どちらでもいい、という選択はわたくしには無い。皆さんの視線が怖い。ここでその選択を取る度胸は無いわ。後から怖いもの…!
胸元に手を当てて息を吐く。緊張する心を落ち着かせてしっかりと皆さんを見た。


「わたくしは…改めて感謝をしたい人がいます。だから、ライラさんに賛成です」


反対している三人にはごめんなさいと頭を下げる。するとロゼさんに背中を叩かれた。顔を上げればエドナさんの傘がペシンと頭に命中。一体何事かと目を見開いているとデゼルさんが「自分で決めた事に一々謝るな」と呆れながら言う。



「わかったよ。言えばいいんだろう、言えば」

「改めて感謝したい人がいる、だなんて言わなくてもわかるわよ。全くバカップルも大概にしてほしいものね」

「え!?」

「流石ですわ、実優さん!」


眉間に皺を寄せながら渋々告げるミクリオさんと淡々とわたくしに告げるエドナさん。お二人を見て困っていればライラさんに抱き締められた。く、苦しい。
一通り話し終わった所で本題に戻る。まず初めは誰から言うか。またもや緊張が走る。一番最初というのは嫌なのか、誰も何も自分がとは言わない。口を開けば押し付け合いになってしまう。


「いきなさいよミボ」

「断る!元々反対だった僕が何で初めに言わないといけないんだ!…スレイ!」

「お、オレ?最初はちょっと恥ずかしいから…ザビーダはどう?」


俺様は初めに言うキャラじゃない。笑いながら断ったザビーダさんはロゼさんへ。
いや、初めは提案したライラが言うでしょ。何言ってのと断ったロゼさんはライラさんへ。
私はお菓子を食べているので無理です!…何処か無理やりお菓子を頬張っている様に見えるライラさんはデゼルさんへ。
真面目な奴が初めに言うべきだろう。一言で片付けているものの顔はアリーシャさんの方へ向いている為、デゼルさんはアリーシャさんへ。
独自の断り方で押し付け合う皆さんの気持ちはわかる。わたくしも初めは嫌ですから。アリーシャさんは…どうするのかな。


「私はまだ、心の準備がっ…!」

「あなた緊張しすぎ」

「も、申し訳ございません!」


このままじゃ一生決まらないわね、とエドナさんがため息をついて目を向けた先はーーーわたくし。まさか。
次の言葉が予想出来てしまったわたくしは首を横に振った。しかしエドナさんは拒否権など無しだと言うようにわたくしの名前を呼ぶ。


「どうせスレイに言うつもりでしょ?早く言いなさいよ」

「ち、違います!わたくしは…!」

「実優が最初に言うんだ」


ロゼさんの一言に全員がそうなのかとこちらを見た。な、何故こうなるのですか!?
あれだけ反対していたミクリオさん、エドナさん、デゼルさんは興味津々にわたくしを見ていて恥ずかしさが余計にこみ上げる。…でも、本当に伝えたいから。黙らないで伝えよう。大切な人に。


「感謝したい人は、皆さんです」


ザビーダさんは…その、服を着ていないので無意識に避けてしまいます。そんなわたくしなのに、元気づけてくれたり励ましてくれたり…いつもありがとうございます、ザビーダさん。
ロゼさんは…後ろ向きなわたくしを明るく助けてくれたり、前向きに引っ張ってくれたりと支えてくれていますよね。ロゼさんの明るさには救われているの。いつもありがとうございます、ロゼさん。
デゼルさんは…喧嘩ばかりしてしまうのでムッとします。だけど厳しく言いながらもわたくしが困った時はさり気なく助けてくださっている事、わたくしは知っているわ。いつもありがとうございます、デゼルさん。
エドナさんは…えっと、失礼でしょうが…少し口がよろしくなくても不器用ながらもわたくしを心配してくれていて、エドナさんは優しい方だと何度思ったかはわからないくらい…。いつもありがとうございます、エドナさん
ライラさんは…わたくしが迷わない様、スレイさんを支える一人の天族として真っ直ぐに進む様に見守ってくれていますよね。わたくしは本当にあなたが主神で良かったと思います。いつもありがとうございます、ライラさん。
ミクリオさんは…イズチで出会った時からわたくしを気遣ってくれていますよね。多少言葉に刺が合ったとしても、ミクリオさんの優しさは充分伝わりますし、その優しさが嬉しく思うわ。いつもありがとうございます、ミクリオさん。
アリーシャさんは…天族であるわたくしを恐れずに話しかけて下さいました。あの時本当にわたくしは嬉しかった。アリーシャさんの真っ直ぐで純粋な心には胸を打たれます。いつもありがとうございます、アリーシャさん。
一人一人想いを込めて目を合わせて告げる。最後に…彼。


「スレイさん。あなたはわたくしをずっと守ってくれている。今でも憑魔を怖がるわたくしを強い言葉で救ってくれる。正直、スレイさんには感謝したりないです」

「オレは実優を守りたいから守っているだけだよ。感謝なんて…」

「いいえ、言わせて下さい。スレイさん、いつもありがとうございます。わたくしもあなたを支える様に頑張るから…隣に、いさせて下さい」


守られるだけじゃなく、わたくしもスレイさんを守りたい、支えたい。それは彼が導師だからじゃない。スレイさんだから、だ。


「実優…オレ」

「あのさ、いい所悪いんだけど二人だけの世界に入るのやめてくれない?」

「「!」」


スレイさんが全て言い終わる前にロゼさんが頭を掻きながら言ってきた。ハッとしたわたくし達だったが遅すぎる。今の発言は皆さんの耳に既に入っているのだから。わたくしとスレイさんは思わず目を逸らした。


「結局スレイじゃない。何なのこの甘い雰囲気」

「ロゼさん!何故止めたのですか!」

「止めて正解だロゼ。全く冗談じゃねぇ」

「スレイ、実優。君達は場所を考えてから発言してくれ!」


ミクリオさんが母親みたいにガミガミわたくし達に怒る中、ザビーダさんは「実優ちゃん」とわたくしの肩を触れてきた。いつもなら驚いて直ぐ様距離を取るのですが…ザビーダさんがいつになく真剣な表情だったから何かあったのかと訊ねた。すると。


「俺様実優ちゃんに感謝したい。…大人のキス、してもいっ!!」

「「変な事を吹き込まないで(下さい)」」

「大人のキス…?ザビーダ様がいう大人のキスとは一体…」

「アリーシャは気にしなくていいから!実優もアリーシャと同じく悩むんじゃない!」

「ミクリオさんはわかるのですか?」

「え、いや…き、訊かないでくれ!」


顔を真っ赤にさせるミクリオさんにわたくしとアリーシャさんは首を傾げた。が、突然誰かにポンポンと肩を叩かれた。スレイさん以外、皆さん目の前で楽しそうに話している。つまりわたくしの肩を叩いたのはスレイさん。自然に頬を緩ませて後ろに振り向いた。


「さっきの続きだけど…オレも実優には助けられてる。オレの方こそ、いつもありがとう実優」

「スレイさん…」


そっと抱き寄せられて額にキスをされる。キスからでもありがとうの気持ちが伝わってきてわたくしは胸が熱くなる。
照れくさいですが、お互いに笑いあったわたくし達だった。










伝え合うのは
(大切な人達、だから)
 
 
 
 
 
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