中に入り少し先に進めば老人が座っていた。この方がジイジさんだとは直ぐにわかる。ジイジさんの左右にはスレイさんとミクリオさんが座っている。例えジイジさんは歳をとっていても男の人なのは変わりない。目の前には男性三人。


「緊張しなくても良い」

「ジイジ、彼女は」

「わかっておる。しかしじゃ、このままでは話が進まん」


そうだわ。わたくしが座らないと話は始まらない。…怯えたら駄目。相手が男性だとしても礼儀くらいはきちんとしないと。落ち着く為に息を吐いて「失礼、します…」と躊躇いがちに言い座った。背筋を伸ばしジイジさんを見る。自分自身情けないと心底思う。これくらいで手が震えるなんて。


「…スレイ、ミクリオ。後で話すからの、今は席を外してくれ」

「え?でもジイジ…」

「いいから出ていかんかっ!」


ジイジさんが声を張り上げたと同時に雷の音が聴こえてきておもわず肩がはねる。な、何故雷の音が?あれだけ良い天気だったのに。
スレイさんとミクリオさんは顔を見合わせ、渋々といった表情で出ていった。一方ジイジさんはキセルを持ちふかしながらわたくしに声を張り上げてすまぬと謝るので首を横に振る。


「男性が苦手だとしても老いぼれ一人じゃ。もう大丈夫かの?」

「…す、少し怖いですが…大丈夫です。気をつかわせてしまって…ごめんなさい…」


恐らくジイジさんはわたくしの震えを見てスレイさんとミクリオさんに出ていくように言ったのだろう。本当にここの人達は優しい。対してわたくしは気をつかわせてばかり。わたくしも向き合わなければ。まずはこの方に。


「…お初にお目にかかります。わたくしは実優と申します」

「うむ。ワシはゼンライと言う。まあジイジで良いぞ」

「は、はい…。…あの、わたくしにお話とは…?」


緊張をしながらも言えばジイジさんは笑ってくれて少し安心しながらも本題に移る。ジイジさんはキセルを持ちながらもわたくしを見る。そしてわたくしに問う。何故森にいた、と。


「ワシはあの森に誰かが入る前に必ず気づきこの杜に入らせないようにする。だかの、実優は突如森に現れたのじゃ。ワシは直ぐ様入らせないようにしたが…一体何をした?」


いつまで経っても森に出られなかったのはジイジさんの影響だった。そうまでしてこの杜と皆さんが大切なのだとわかる。だから怒るなんて感情は一切無かった。ただジイジさんの質問に答えられなくて困惑する。


「いくらお前さんが天族だとしても天響術であの中に入るのは…」

「てん、ぞく?てんきょ、う…じゅつ?」

「…知らんというのか?まさか自分が天族というのもか?」


ジイジさんから放たれる言葉はわたくしにはわからない。わたくしが天族?いえ、その前に天族って何?
言葉に困って悩んでいるとジイジさんが話してくれた。天族というのはグリンウッド大陸…この世界で語り継がれていて普通の人々の目に見えない存在。人間と違って長く生きるみたいで、現に天族であるジイジさんは随分長生きをしているらしい。天響術は天族が使うことが出来る自然を操る特殊な力。


「ワシは実優を天族だとわかったから杜に入れた。どうやら天響術も使えるからのう」

「え?わたくしが…?」


わたくしが天族で天響術を使える。信じたくないがトリップというのは何が起きるかわからないから面白いと友達は言っていた。…まさかわたくしはこの世界では天族になったの?だから皆さんが見えるの?


「イズチはスレイ以外全員天族じゃ」


スレイさんはわたくしと同じ人間。何故人間が住んでいる所に行かないのですかと思ったがわたくしが口を出す事じゃないと謹む。ジイジさんの話によると霊応力というのがどうやら人間が天族を見るのに必要な能力?で、スレイさんは霊応力があるから皆さんが見えるらしい。
…わたくしはジイジさんに話すべきなのかもしれない。違う世界から来たのだと。元は人間なのだと。


「…ジイジさん。実は、わたくし…」
 
 
 
 
 
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