カウントダウン | ナノ



変えてみた


 
 
 
 
 
※もしもロイが僕ロイだった場合。


モテる。私の大好きな人で幼馴染でもある彼は素晴らしくモテる。話せない時が多いもん。私幼馴染み?って疑う程に多い。他の子達が誘っていて一緒に学校にも行けない時があるしなぁ。優しいから仕方ないんだけど。それにそんな所も素敵だからいい。


「おはようロイ」

「アイリ、おはよう。良かった、寝坊してないかって心配してたんだ」


朝からなんて幸せなんだろうか。会える事自体幸福なのに心配までされるとは。嬉しくて顔がニヤける。しかも優しく微笑むロイが輝いてて眩しい。相変わらず優しくてもう王子様みたいなものだよ。
今日一緒に登校出来なかったから起きれるか不安だったけどお母さんが起こしてくれたしね。一応今こうして教室にいる事が出来る。


「でも心配してくれてありがとう!だいす…」

「アイリさん、私達のロイ様に話しかけないでくれない?」


いつの間にか私の後ろにいたロイのファン達がキツい口調で言ってきた。…誰が"私達の"よ。ロイは誰のものでもないのに。出来る事なら私だけのロイになってほしいけど。無理だし。
意地でもロイとの間に入ろうとする女子に私は見せつける為に「ローイ!」なんて言いながら目の前にいたロイに近づく。発狂する女子には落ち着けと促しながらも私が近づいた事を拒まないロイ。つまり嫌ではない。それがわかってしまった私は間違いなく口角が上がっている。


「ただの幼馴染みがいい気にならないでちょうだい」

「うん、そうだね。だけど幼馴染みだからこそ皆の知らないロイを知ってるから」


ドヤ顔でキメる私に女子達は口をパクパクさせるだけだ。そう、これは幼馴染みである私だけの特権。誰にも譲れない。
私のドヤ顔に腹が立ったのか一人の女子が手を上げる。避けるつもりはない。迫り来る平手打ちを受け止めるつもりでいたから。だけどーーー。


「えっ…?」

「僕の幼馴染みに手を出さないでくれないか」


不意に体を引き寄せられて…ロイの腕の中に閉じ込められる。空いているもう片方の手で女子の手をつかんでいた。止められた子はロイに触れられた事が嬉しいのか何処か顔が赤い。酔いしれている声を出しながら頷く女子から手を離すと私を見る。


「大丈夫?アイリ」

「う、うん」

「?…顔が赤いけど…」

「何でもないから!」


抱きしめられている事自体恥ずかしくて堪らないのにこんな至近距離で見つめられると心臓が爆発しそうだよ!
ロイから体を無理矢理離しロイが私の名前を呼ぶ声を聞きながら教室を慌てて出る。バクバク鳴る胸を抑える為に走りながら先程の抱擁を思い出していた。


「守ってくれるなんて…。もう、大好き!」


頬が緩むのを、ロイに対する愛が深まった事を感じながら私はこの事をピーチに知らせようとそちらへ向かったのだった。ルンルン気分だったからかすれ違ったあの男には気づかずに。





「何ニヤニヤしてんだ?あの女」


俺は廊下ですれ違ったあの女の顔を思い出しながら歩いていた。まあ大方あいつのせいだろう。というかそれしかありえない。朝から騒々しい女だな、相変わらず。絶対に関わりたくねぇ。
鞄を置いていつも通り屋上に出て寝るか…ボーッとしながら考えた時だった。キラキラ光った物が廊下に落ちる。俺がつけていたピアスだった。


「ったく、何で落ち…」

「ユウヤのピアス?」


俺が拾うよりも早く先に拾う男がいた。…ロイ。はい、と手を伸ばし俺に渡すロイから貰い再びピアスをつける。誰かに踏まれるとかは無くて一応安心した。お礼は絶対言わないけどな。自分でも拾えたのに勝手に拾ったのはこいつだし。


「アイリを見なかった?顔が赤かったから熱があるのかもしれないんだ」

「…明らかにてめぇが原因だろ」

「僕が?何かしたのだろうか…」


顎に手を添えて本気で悩むロイを見てほんの少しだけあの女に同情したくなった。こいつはなんていうか…こういう事には鈍すぎる。普段は鬱陶しい程に細かい事には気づくくせに鈍い。わざとか?なんて疑いたくなる。まあ…素なんだが。


「何でもいいが俺は行くぞ。てめぇらに構ってる暇はねぇし」

「ああ、ごめん」


素直に引き止めたのを謝るロイ。まるで俺が悪い事をしたみたいじゃねぇか。深いため息をつき頭を掻く。こいつに謝られるとファンか知らねぇが女子が騒ぐのが目に見えてる。めんどくせぇ…何で俺が気をつかわねぇといけないんだ。


「おい、今度どこかに食べに行くぞ。だから一々謝るな」

「え?」

「聞こえなかったのならいい」


背中を向けて今度こそ歩く。出来る事なら聞こえなかった方がいい。こんな小っ恥ずかしい発言二度と言うか。あいつから誘われて嫌々ながら行く事はあるものの、自分から誘うなんてしたくなかったぜ。
機嫌が悪いと知らせるみたいに足音を煩く立てながら進めば声が聞こえた。


「ありがとうユウヤ。君は優しい人だな」

「…チッ、うるせぇ」


距離はあるのにロイの声がよく聞こえて思わず舌打ちをする。誰が優しいだよ。そんな俺に似合わない単語を言うな。気色悪い。…そう思っていたら周りは俺を見て笑っていた。何がおかしいのかわからないが何だか腹が立った俺は壁を蹴る。黙れの意味を込めて。


「ユウヤ!壁を蹴るなとあれほ、ど…?」

「何だよ?」


注意しに来た教師が俺の顔を見るなり言おうとした言葉を止める。一体何なんだと睨めば突然にんまりと笑う。それはもう楽しそうに。


「随分嬉しそうだな。嬉しい事でも言われたのか?」

「なっ…黙れ!」


咄嗟に言い返したのを後悔した。つまり教師の言葉通り嬉しい事を言われたという意味になるから。尚更楽しく見てくる教師にも腹が立ち俺はあの女と同様この場から去る為に走ったのだった。…顔が赤いぞーなんて言ってきやがる教師の声を聞きながら。










結果:女主はロイの優しさにメロメロ。
   男主はロイに甘くなる?

僕ロイ…恋愛面に関しては鈍い。ただし他の事に関しては敏感。優しくて王子様のような存在。




 

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