カウントダウン | ナノ



6月1日


 
 
 
 
 
「今日は6月1日!」

「ああ、そうだな。で、だから何だ?」


いつもの朝。学校に行くのは少し早い為起こしに来てくれたロイと私は自分の部屋で話していた。そしてカレンダーを見て言えばロイは如何にも朝から煩いと訴える様に私を見てきた。


「6月1日。つまりロイの日だね」

「…本当に下らない事を考えるのが好きだな、アイリ。まあ馬鹿だから仕方ないか…」

「可哀想だなっていう目で見ないでよ!」


って駄目駄目。ここで言い合いになったら本題に戻れなくなる。だけどロイもロイだ。確かに私は馬鹿だが流石にその目はやめてほしい。
あれこれ思っていたら私の言葉にロイがフッと笑う。きっとまた馬鹿にした笑いだろうけど私はたったそれだけでもドキドキして少しだけ悔しい。なんとか落ち着かせる為に咳払いをして話を戻した。


「と、とにかく!せっかくのロイの日なんだし、何か祝いたいんだけど…何がいい?」

「祝うって…勝手にアイリが言ってる日だし、特に祝う必要はないだろ」

「いいの。私が祝いたいだけだから」


私が言っても中々納得してくれないロイ。うーん、逆の立場だったら私は嬉しくて祝ってもらうけどなぁ。だって大切な人がこの日はあなたの日だよって言われたら嬉しいと思うんだけど。私だけ…なのかなぁ。
意地でも今日をロイの日だと認めてほしくて大人しく祝われてよーと何度も頼んだら渋々受け入れてくれた。


「何でも言って!…って言いたいけど、出来ればお金がかからないのがいいんだけど…」

「あー、心配しなくていい。金はかからないから」

「あれ、もう決まってるの?何な…に…」


不意にロイが私が座っているベッドに腰をかける。するとロイの両手が私の両肩に触れてそのまま押された。突然だった為抵抗すら出来ず、背中にベッドについてしまいぼふんとベッドに寝転がった音が鳴る。状況が理解出来ない。ただ…目の前にはロイ。背景は見慣れた天井。私の背中はベッドとくっついていて、頭の隣にはロイの両手。これって所謂ーーー。


「起こす時キスするって言ったら怒るくせに、押し倒されるのは反応なしかよ」


面白くないと呟くロイ。…待っ、て。やっぱり私押し倒されてるの?誰に?…大好きな、ロイに?


「っ、ちょ、ロイ…!」

「今頃顔赤くするのかアイリ。遅すぎ」

「何してるの!?」

「何、って…アイリが言ったんだろ。何がいい?って。しかもこれなら金もかからないからアイリにとってもいいだろ?」


何がいいのやら。本当に私は思った。ただでさえ普段でもドキドキしている私にこれはないだろう。ましてや私達は付き合ってる訳じゃない。幼馴染みで止まっているのに。私だけの一方通行だから余計にやめてほしいのに。


「アイリ」

「ロ、イ…」


ロイの甘い声が私の抵抗を消していく。見つめられて、このまま奪われても…なんて思ってしまう自分は重症だ。
ロイは制服の第一ボタンを開けている。特に気にはしていなかったが、最近は暑くなってきた為ロイは汗をかいていて妙に色っぽく見える。段々と近づいてくる距離に私は目をつぶった。


「よし、もういいだろ。悪いな押し倒して」

「…は?」


しかし今度は心底満足した声が聞こえた。目を開ければロイは既にベッドから降りていて、私も直ぐ様体を起こした。更にロイは私に何も言わないで出ていこうとするから慌てて声をかける。


「ちょっとロイ!一体何だったの!?いきなり、お、押し倒したりして…」

「だから俺はアイリの顔が赤い所を見たかったんだって。それがお前からもらう祝いでいい」

「なっ…!」

「ほら、そろそろ行くぞ」


何事も無かったようにロイは出ていく。残された私はドキドキと高鳴る胸と熱くなっている顔をなんとかしようと努力する。


「っ〜!ロイの馬鹿ー!」


ーーーそんな6月1日、ロイの日の出来事だった。





 
 
 
 
 

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