前編(2/10) 「61ページの最初からいくぞ。いいか?」 「うん」 えーと、61ページは…。姉の付き添いでダンスパーティーに来てしまった姫を王子が見つけ、踊ってくれないかと頼むシーンだ。 「《…美しい…。どうか私と踊っていただけませんか、姫》」 先程のだるそうな時とは全く違い、完全に役になりきっているロイ。顔はキリッとしていて私に近づくと、台本を持っていない私の片方の手を掴んでじっと私を見てきた。う、わ…。カッコいい、し…なんかもうロイが本物の王子に見えてきたし、とにかく胸がドキドキして目が合わせられな…! 「何してんだ馬鹿」 「あいたっ!」 とか考えていたらチョップされた。こんな乱暴な王子絶対いない、うん。でもそれでもさっきのロイ…いつも以上にカッコよかった…。 「ボーッとするな。次お前の台詞だろ」 「わ、わかってる。えっ…と…。《はい…。喜んで…》」 「アイリ…。お前ニヤニヤしすぎだ」 「しょ、しょうがないでしょ!?ロイがカッコよすぎるから悪いの!」 と文句を言いながらも次々と台詞を言い合う私達。…これの姫役、いいなぁ。今は『姫』なんて言っているが、本番では名前は決まってないからその姫役の子の名前が呼ばれる。本当に私だったら…アイリ姫、なんて呼ばれるんだよ? 「次ラストシーンだから見ておけよ」 「うん」 一番重要なシーン。姉が姫を強引に別の王子と結婚させられようとする所を止め、姫と一緒に逃げる。そしてその後、城から出て少し離れた所で王子は姫に愛の告白をする、というシーンだ。…私大丈夫かな。ドキドキしすぎてもう何回気絶しかけたかわからないんだけど。 「いいか?やるぞ」 「いいよ!」 と言った瞬間、ロイが私の手を握った。一瞬何事かと思ったが、一緒に逃げたわけだからそりゃあ手をつなぐだろうと考えて落ち着く。 「《姫…。私と共に逃げて、後悔していませんか?》」 台本にはここで何も言わずに首を振る、と書かれている為首を振った。その後の台詞を見る。そこに書かれていたのは、『私は姫を愛しております。どうか、どうか私と…結婚してくれませんか?』だった。あ、あいっ…!?結婚…!?ちょ、これをロイに言われるの!? [戻る] ×
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