第2話 決意
「……………」
無言のまま私は彼を見る。彼も私を見る。…えっ、と…。これ今どういう状態なのかな?私、浮いてるはず…なんだけど。とりあえず自分の状態を確認する為に目を逸らした。
「っ…!?ええっ!?」
理解した瞬間、思わず叫んでしまった。いやだって!だってだよ!?
私今、この人にお姫様だっこされているんだよ!?初めてされたし、しかも初対面の人にと思うと顔が熱くなっていく。
「お、降ろして下さい!重いですから!」
私が慌てながら言うからか何も言わずにゆっくり降ろしてくれる。お…怒らせちゃったかな…?そ、そりゃあそうだよね。せっかく地面に落ちないように助けてくれたのに、『降ろして』だもんね。失礼な事言ってしまった。でもあのままなのは心臓が持たないし。
…それにしても一瞬しか見てないけどこの人…カッコいい、な。そういう事を思っている場合ではないと理解しながらももう一度目を動かすと見事に目が合って緊張が走る。
「え、あっ…その…。ありがとうございました」
まだお礼を言ってなかった為、慌てながらもきちんとお礼を言って頭を下げた。後はこの場から離れようと歩こうとしたのだが。
「待てよ」
「え…?」
声が聞こえて彼に手首を掴まれた。背中を向けていた為驚きながらも振り返り相手の顔を見る。その表情は私の事を明らかに怪しんでいるのがわかって息を呑んだ。
「上から落ちてくるなんて…お前、何者だ?」
「っ…!それ…は…」
馬鹿だった。普通に考えて上から落ちてくるなんて気になるに決まってる。このままはいさようならと上手くいくはずがない。だけど…どうしよう。だってこんなの言ったところで絶対信じてくれないと思う。私が逆の立場だったらきっと信じられないと思うから。人間です、なんて見ればわかるだろうけど上から降ってきた時点で怪しいに決まっている。
「…とにかく、ついてこいよ」
「え?わっ…!?」
何も言えない私の手首を掴んだまま方向を変えて歩きだす彼。グイグイと引っ張られる為私も歩く事になる。え、ちょっと待って!?
「あ、あの、どこに行くんですか!?」
「俺達のアジト」
「アジ…!?」
アジト…!?何、もしかして私今やばい感じ…?しかも俺"達"って…まだ人がいるんだよね!?まさか…これが集団リンチというやつ!?
「ま、待って下さい。何でそんなところに…!」
いくらなんでも身の危険を感じた私が尋ねると、彼はこちらに振り向き。
「面白そうじゃん」
そう言って笑った。その笑いが怖くて尚更嫌な事ばかり想像してしまう。こ…怖いんですけど!?何その笑顔!いや多分普通に笑ってるだけだと思うけど、今の私からしたら凄く怖いですからね!?
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