「明って前の世界ではどんな人だったの?」
それはとある日の事。のんびりと皆でアジトにいた日、不意にイヴちゃんがそう聞いてきた。
「今と変わらないかな。…あ、でも私眼鏡かけてたんだ」
「眼鏡を?」
「何で今はかけてないんだ?」
「この世界に来てから視力が戻ったみたい」
だから最初この世界に落ちた時視界がぼやけていた。…今となっては視力が戻って嬉しいと思っているけどね。
「へー。明の眼鏡姿見てみてーな」
「え?」
「私も見てみたい」
「別に普通だよ?」
そんなに変わる事でも無いと思うし。それでもトレインさんとイヴちゃんが見たいと言うので私は自分の部屋から眼鏡を取ってきた。
「…はい、これでいいの?」
ぼやけているが皆が見たいと言うから仕方ないよね。…今全然皆の顔が見えないのだけど、どうなってるのかな。
「明可愛い」
「へ?」
「似合ってるぞ」
「…ほ、本当?」
確かに前の世界では私の眼鏡姿が結構評判だった。でも改めてそれを言われると嬉しいけど戸惑ってしまう。…なんか伊達眼鏡でもしようかな。時々眼鏡をかけていると思って眼鏡を上げる行為をしてしまう事がある。それが恥ずかしいし…。
「っと、わっ…」
突然誰かに眼鏡を取られる。慌てて取った人を見上げる。取ったのはトレインさんだった。え、え、顔が近っ…!?
「…俺眼鏡無い方が好きだけどな。ちゃんと明の顔見れるし」
「っ、っ…!」
「…どうした?顔が真っ赤だぜ?」
耐えられなくなって私が少しだけトレインさんの体を押すと、トレインさんもわかったのか離れてくれた。
「…トレイン顔真っ赤」
「一々言うなって姫っち…」
胸がドキドキと鳴ってうるさい。先程のトレインさんの言葉が頭から離れない。
『眼鏡無い方が好きだけどな。ちゃんと明の顔見れるし』
…好き。この言葉に凄くドキドキした。何故ドキドキしたかなんて答えは一つしか無いのにそれに気づかない私だった―…。
他の何よりも
(あなたの言葉が、ドキドキするよ)
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