「ん?姫っち何やってんだ?」


それはいつも通りの朝。珍しくトレインは早くに起きていた為アジトから出ようとした時だ。金髪の少女、イヴが何かを箱に詰めていた。疑問に思い聞いてみた。


「ケーキ。今日の夜出すから冷蔵庫に冷やしておこうと思って」

「ケーキ?買ったのか?」

「私がスヴェンと一緒に作ったの。大事な日だから」

「…今日って何かあったか?」


未だに言っている事がわからないトレインは首を傾げる。イヴはまさかという表情で。そんな表情をされても全くわからないトレイン。やがて口を開くイヴ。


「…今日は明の誕生日だよ」

「へ!?マジかよ!」

「知らないなんて…最低」


呆れてため息までつくイヴ。トレインは何も知らなかった。寧ろ何で自分達は知っているんだと思ったぐらいだ。


「とにかく私は今からスヴェンと買い物してくるから。トレインは明の誕生日プレゼントでも買ってきたらどうなの?」


それだけ言い残しイヴはアジトから出ていった。幸い今彼女はいない。少し外に出てくると出ていったままだ。


(買ってくるって…何をだよ)


まだ動揺して頭が回らないトレイン。そもそも自分は余り彼女の好みを知らない。一緒にはいるが何が好きで何が嫌いかまでは全くという程知らないのだ。そんな情報の少ない中で一体何を買えというのだろう。


「…とにかく外に出るか」


ここにいても始まらない。そう考えたトレインは足を動かした。










「ただいまー。…あれ?誰もいないや」


誰よりも早くに帰ってきたのは明だ。誰もいない事を確認するとソファに座り息を吐く。寒いなぁ、と思いながらボーッとする。今日は自分の誕生日。それはわかっていて、朝イヴとスヴェン二人に祝われて凄く嬉しかった。だが彼―…トレインにはまだ祝ってもらってない。おはよう、と会話はしたもののその時も言ってくれなかった。スヴェンとイヴは前に聞かれたので答えたものの、彼には誕生日の事を言ってすらいなかった。だから仕方がないかな、と思う明。だがやはり寂しいと思ってしまう。


「…あれ、まだスヴェン達帰ってきてねぇのか」

「トレインさん。おかえりなさい」


そんな考えを遮るようにトレインがアジトに帰ってきた。彼が手に持っているのはミルク。自分用に買ってきたのだろう。トレインは明の顔を見ると黙って近づき隣に座った。
 
 
 
 
 


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