『…好き…』

「…っ、明…?」

「…っ…!」


戸惑ったトレインさんの声が聞こえて、自分の発言に目を見開いて背中に回していた腕を引っ込めた。彼も私を抱きしめている腕を離す。体を少しだけ離して見上げれば目が合った。お互い何も言わずに見つめ合う。目を逸らせなかった。胸がバクバクと鳴ってうるさい。どう、しよう…!


「ご、ごめん!今の気にしないで!」


とにかくこの場から逃げないと心臓がもたない。動揺しながらもトレインさんの体を少し押すと簡単に距離が出来る。多分トレインさんも驚いていたからだと思う。


「わ、私、先に戻るねっ!」

「お…おい明…!」


この場に留まるなんて出来なくて、恥ずかしくなって走った。トレインさんが私の腕を掴もうとしても、私が走る方が一足早かった。この気持ちを落ち着けたくてただただティアーユさんの家へ戻る事を考えながら走り続けた。















  第24話  気づく恋心















ティアーユさんの家へ着いて直ぐ様自分が寝ていた部屋へと向かう。明らかに様子がおかしいと思ったのかスヴェンさんとイヴちゃん、それにティアーユさんに心配そうな目で見られていた事に気づいてはいたが、それどころじゃなかった。閉めた扉に背中を預けて力なく座ってしまう。


「…私…!」


未だにドキドキと速まる胸。それは走ったからではなく、先程の自分がトレインさんに言った言葉が原因だろう。
トレインさんに対する自分の気持ちに気づいてしまった。唇を手で覆いながら呟く。彼への想いを。


「…私、トレインさんが…好き、なんだ…」


旅を始めてからトレインさんの事は好きだった。だけどそれはいつしか"仲間として"の好きではなく、"恋愛として"の好きに変わっていた。
思えば好きだからこそそうなっていた場面はいくらでもある。例えばキョーコさんがトレインさんに惚れて色々とアタックしていた時。見ていて胸がモヤモヤして凄く嫌な気分になった。その時は何故かと思っていたけど、今考えるとわかる。嫉妬していたのだと。
そしてトレインさんに避けられていた時。胸が張り裂けそうになるくらいに痛くて苦しかった。嫌われたと考えたら怖くて体が震えた。
トレインさんが自分の傍にいてくれるとドキドキする。安心するのもあるけど、妙に心が落ち着かなくなる。でもやっぱり、"傍にいたい"と思ってしまう。今でも彼の顔が思い浮かべば胸が高鳴ってしまう。
このような気持ちになっていたのにどうして今まで気づかなかったのだろう。


「でもいくら気づいたからって、口に出しちゃうなんて…!」


あの時は想いが込み上げてきて口から出てしまった。自覚して直ぐに告白したようなものだ。自分の失態が恥ずかしくて、これからトレインさんの顔が見れるかわからない。というか見れる気がしない。…だけど…。


「…トレインさんは…どう思ったのかな…」


ブレスレットを見ながら呟けば、彼の表情が浮かんでまたドキドキする。驚いてはいたけれど…トレインさんがどう思ったのか知りたい。訊く勇気もないのに、そう思ってしまうのだった。
 
 
 
 
 


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