「…え?」
目の前の光景に戸惑いが隠せない。いつものカッコよさはなく、逆に可愛さが出ている彼を見て。着ていた服は先程より更にブカブカになっている。誰も何も言わない中やっと話したのはスヴェンさんだった。
「…あー…。残りの借金はいくらだったかな?」
「こらこら現実逃避しない」
だがやっぱり驚いているからか今関係無い事を話始めるスヴェンさん。思わずリンスさんがツッコミを入れる。
「しっかし驚いたわね。まさか…こういう形で変身するなんて」
「…?あれ?」
チラッと私が見るとトレインさんが口を開いた。何を言うのだろう。
「何でお前らがでかくなってんだ?」
「「違う!」」
やはりトレインさんはトレインさんだ。そう思ってしまった。
第19話 近づく距離
「…いやー、子供の姿になるとはねぇ」
「まあ化物になるよりかは全然良かったな」
「そうだね…」
後は元に戻す方法を考えなければならない。とはいえ流石に動くにしても明日からになるけど。今はとりあえず今の彼の体に合う服を用意するかとスヴェンさんがトレインさんに話しかけていた。
その間、私はイヴちゃんに声をかける。きっとナノマシンが共鳴をしていたから先程イヴちゃんも様子がおかしかった気がしたから。大丈夫だった?と訊けば頷くから一安心する。
「明。トレインにも声をかけたら?」
「え?」
「トレインがこうなる前、明泣いてたよね。…心配してたんでしょ?ちゃんと自分の気持ちを言った方がいいよ」
恥ずかしい所を見られてしまっていた。本当に直ぐに泣いてしまうのをどうにかしなければと思う。
イヴちゃんにそう言われ後押しされた気がした私はお礼を言って微笑む。同じ様に微笑むイヴちゃんを目に映した後、トレインさんの方へと歩いていけば先にスヴェンさんが気づく。私に微笑んでトレインさんの傍から離れていく。…もしかして気をつかってくれたのかな。心の中でお礼を言った。
「トレインさん」
「明?」
「本当に良かった。…こうやってトレインさんに触れられる。それが凄く嬉しい」
座っているトレインさんに合わせる為に目の前に座って彼の手に触れながら微笑む。例え子供の姿だとしてもトレインさんであって、こうして触れている暖かい手が化物じゃないって知らせてくれている。トレインさんは何故か私から目を逸らした。
「それにね、その…可愛いよ」
「…はぁ!?」
トレインさんの手を離して言いながら頭を軽く撫でてみる。私から撫でるなんて初めての行為に自分でしておきながら慣れない。でもどうしても可愛かったから…なんて理由で撫でたって言ったら怒るかな。
「あら、積極的ね」
「今だけだろ」
「ご、ごめん。嫌だった…?」
「うっ…。そ、そんな顔するなよ。…もう好きにしてくれ」
「あ、トレインが諦めた」
嫌なのかただ慣れないからなのかわからないけど、固まっているトレインさんに問いかける。でももう少しこのままでいたいなと思っていたのが顔に出ていたのか、観念したと言うようにそう言ってくれる。改めて撫でるのも恥ずかしいなと思いながら一言お礼を言って頭を撫でた。そんな私達を見て他の皆は笑ったのだった。
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