「はぁ!?黒猫[おれ]の…ニセモノだぁ!?」
車の中でトレインさんの声が響く。に…偽物って…。
「おお。少し前にセレストの街の酒場に黒猫を名乗る黒いコートの男が現れたって話だ。あくまでウワサ程度の情報だがな」
「ほーう」
「キョーミあるだろ?」
「…ねーよ、アホらし!」
トレインさんの偽物…。ということはカッコいいのかな。だって本物のトレインさんがこんなにカッコいいんだもん、偽物もカッコよくないとちょっとね。
「お前の名を騙って悪さしてるのかも知れんぜ?」
「んな事良くあるだろ。黒猫なんてのは元々悪名だし、今更尾ヒレの一つ二つついたって痛くもかゆくもねぇよ」
「つまんねー反応だな。怒り狂うと思ったのに」
「へへーん、俺は大人なんだよっ!」
うん、こういうのって大人なのか。私だったらすっごく気になるし、まずスヴェンさんの言う通り怒り狂うかもしれない。私ってまだまだ子供なんだなぁ…。
「それより目的の町はまだ遠いのか?」
「ん?ああ、地図ではそろそろのはずなんだが…」
車を止めて地図を見る前の二人。私は地図なんて見ても全くわからないから後ろで待機する。…ただ、結構時間がかかっていて流石にどうしたのかと思ってしまう。
「もしかしてさっきの道を左だったのか…?」
「だーから早くナビ直しといたほうがいいって言ってたのによ。あんたならちょちょいのちょいだろ?」
「電子機器はあまり詳しくねぇんだよ」
え?何これ迷子なの?そう思っているとイヴちゃんがスヴェンさんの肩をトントンとたたく。スヴェンさんがどうしたのかと聞くと、なんと私が見ると言いだした。み、見るってどうやって…!
そういう事だったのか…。私達三人は"飛んでいる"イヴちゃんを見る。変身で翼もだせるんだ…。なんだかシズクさんとユヅキさんみたいだ。
「天使みたい…」
「空から偵察とは…何でもアリだな、姫さまは」
「いや…そうでもねぇぜ」
「?」
そう言うとスヴェンさんは電話をしていたためイヴちゃんと話しだす。どうやら町はすぐそこみたいだ。電話を切る。そこでトレインさんは先程言った意味を聞いた。
どうやらイヴちゃん自身いろいろ試したのだが、連続して能力を使ってられる時間があるらしく、その時間は一分前後が限界。変身の度合いにもよるみたいだけどね。
「その時間を超えるとどうなるんだ?」
「変身が勝手に解けちゃうの」
「!」
「あ、お帰りイヴちゃん」
「うん、ただいま明」
翼を消して地面に着地するイヴちゃん。お疲れ様、と言うとお礼を言われる。疲れている様子もなさそうだから今は大丈夫なのかな。
「おそらく体に負担を掛けないために自己防衛機能が働くんだろうな」
「へぇー」
「なるほど…」
「へへっ、なーんだ。万能ならスゲーと思ったんだがなぁー」
あああ、またそんな挑発するような言い方して…。ほら、イヴちゃんがムッとしてるよ…。
「じゃあトレイン…飛べるの?」
「飛ぶ必要ないもんねー♪」
その一言で怒ったのかイヴちゃんから物凄いオーラを感じた。それに比べてトレインさんは笑ってるし…。なんとなくこれはやばい予感。
「…ねぇトレイン。勝負しよう」
「はぁ?」
バッとイヴちゃんがトレインさんの目の前に賞金リストを見せる。その人物はこれから行く町にいる標的。その人を先に捕まえた方の勝ちだと言うイヴちゃん。スヴェンさんも流石にそれは駄目だと思ったのだろう、イヴちゃんを止める。が。
「乗った!」
「おい!」
トレインさんが乗ってしまったのだ。それからまた車に乗り、目的の町についた瞬間、二人が降りるから私とスヴェンさんも降りる。
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