「…あの、あなたがシズクさん…ですか?」
「自己紹介がまだだったわね。初めましてイヴ、それからトレイン君。私はシズク。明をこの世界に来させた本人よ。ユヅキは私の部下」
優しく微笑むとイヴちゃんは一度止まってお辞儀をする。トレインさんはというと、「特に人間と変わらねぇな」とじーっとシズクさんを見ていた。今のシズクさんはいつの間にかコートを脱いでいるが、天使の時の服装でもなく、白い翼も出ていない。普通の人間と何も変わらないと言ってもいいとは思う。ユヅキさんも普通の人間にしか見えないし。
ユヅキさんがシズクさんを守る様に前に立った。
「ジロジロ見るな」
「ユヅキ。仲が良いのはわかるけど、今は私が話しているのだから邪魔をしないでちょうだい」
「仲良くなんかねぇよ!」
「…申し訳ございません。ですがこの男と仲が良いというのは冗談でもやめていただければ幸いです。虫酸が走りますので」
心底嫌そうな表情で言うユヅキさんにトレインさんが「こっちの台詞だ!」なんて怒りながらユヅキさんを睨んでいた。シズクさんはそれを見て楽しんでいるみたいだけど。この二人のこういう言い合いも少し慣れた気がする。ハラハラはするけど、見ていて楽しい。口にはしないけどね。
するとイヴちゃんが私にどうして二人がスイーパーズ・カフェにいたのかを訊いてきたので私は一から話した。その途中で。
「ところでトレイン君。明の事、どう思うの?」
「…は?」
「えっ!?」
突然シズクさんがとんでもない質問をするから慌ててシズクさんの口を手で塞いだ。首を傾げているトレインさんを見て「何でもないの!気にしないで!」と必死で質問の事を忘れさせようとする。が、私の手を離したシズクさんは追い討ちをかけるように言う。
「いいじゃない明。今ここでいっそのこと伝えてみなさい」
「っ〜!」
無理に決まっている。周りに皆がいるし、何よりも心の準備すら出来ていないのに。いや出来ていたとしても告白なんて出来るわけない。
あまりの恥ずかしさに何も言えないし、耐えられなくなった私は目の前にいるリバーさん達の方へ走った。正確には逃げた。
「逃げられちゃったわ。…ユヅキ、どうすればいいと思う?」
「明さん達の問題でしょう。あまり口出しはしない方がよろしいのでは?」
「もう、あなたは本当に冷めすぎよ」
私が逃げたのならば、彼の反応はどうかとトレインさんを見る。シズクさんの突然すぎる質問と、逃げた私の反応に何なんだと小さく呟くトレインさんにシズクさんは思わずイヴちゃんに言う。
「…イヴ。あなたよくこんな焦れったい二人を見ていられるわね。私なら絶対本人達に言いまくってるわ」
「陰ながらサポートするのも大変だろう。お疲れ様だな…」
(…二人に憐れみの目で見られてる)
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