夢小説 完結 | ナノ
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little mermaid4


計画の実行はなんと明日らしい。
そんなに急なのか。
「苗字さんは明日に備えてもう休みな」という伊月さん。
その言葉に甘えたいのだけれど、その前にお風呂に入りたい。
それを伊月さんに伝えると、女性の使用人さんが手伝ってくれた。
私がお風呂から上がると、二人は部屋をあとしたので、私も休むことにした。









ガチャ

夜中、そんな音がした気がした。
誰か入ってきたのだろうか。
ゆっくりと瞼を開けて、体を起こしベッドサイドの電気をつけると、そこにいたのは驚いた顔をした宮地さんで、私も頭が冴えてしまった。


「わ、わりっ…起こしちまったな」


返事の変わりにブンブンと首を横にふると、宮地さんは笑いながらベッドの隣にある椅子に腰かけた。


「昼間に来れなくて悪かったな。ちょっと捕まっててな」

『っ』


やっぱり婚約者さんと居たのは本当らしい。
ぎゅっと下唇を噛んでいると、「苗字?」と不思議そうに宮地さんが私を見つめた。

私は、今自分のことしか考えてないけれど、もしかすると宮地さんはその婚約者と結ばれたいのではないだろうか。

バッと顔をあげて、枕元においていた紙とペンをとると、宮地さんは不思議そうに私を見ていた。


『〈あの…もし、宮地さんが婚約者さんと結婚したいなら、無理しないで下さい〉』

「…はあ?」

『〈いくら夢だったとしても、結婚は好きな人とするものです。だから…宮地さんが婚約者さんを好きなら、私のことは気にせず、その人と結婚して下さい〉』


書き上げた紙を見せると、宮地さんは大きなため息をはいた。
すると、宮地さんが手をこちらに伸ばしてきた。


「バカ」

『っ!!』


デコピン、されてしまった。
そういえば、前にもこんな風にされたような気がする。

ジンジンと痛むおでこを押さえながら宮地さんを見ると、少し怒った顔をしていた。


「なんでお前は、そんなに他人優先なんだよ?」

『〈だって、私は、宮地さんに幸せなってほしくて…それに、この世界は現実ではないから、例え泡になっても〉』

「消えないかもしれない、だろ?」


紙にペンを滑らせていると、その途中で手を捕らえられて、思わずペンを落としてしまった。
そして、私が書こうとしていたまさにその続きを宮地さんが口にした。
そうです。その通りです。
その意味を込めて頷くと、宮地さんは眉間に皺を寄せた。


「“かも”だろうが。どう転ぶか分かんねぇんだ」

『(…それは…)』

「大体、いつ俺があの女と結婚したいなんて言った?勝手に話進めてんじゃねぇよ」


え、と思って宮地さんを見上げれば、呆れたように息をはかれた。


「会って間もない女を好きになんてなるか」

『っ…』

「だから変な心配してんな、バカ」


掴まれた手が引き寄せられると、そのまま自分の体も傾いた。
ポスリと宮地さんの腕の中におさまって、恐る恐る顔をあげれば、とても優しい笑みを向けられた。
それが恥ずかしい反面、とても嬉しくて、自分も笑って返すと宮地さんの腕が首の後ろに回されて、顔を肩口に埋めた。


「絶対守ってやる」


そんな宮地さんの台詞を最後に、私はまた眠りに落ちたのだった。








翌朝、目を覚ますと宮地さんは居なくなっていた。
いつの間に帰ってしまったのだろう。
まだ冴えない頭でそんな事を考えていると、ドアが開いた。


「おはよう、苗字さん。よく眠れた?」


伊月さんの問いかけに笑って返す。
すると今度は昨日お風呂に入るのを手伝ってくれた使用人さんが入ってきた。
どうやら、着替えを手伝ってくれるようだ。
それに気づいた伊月さんは一端部屋を出て、着替えが終わると、また中へ入ってきてくれた。


「…うん。その服、似合うね」

『〈ありがとうございます〉』


さすがにウエディングドレスではないけれど、使用人さんが持ってきた服は、普段は着ることのないようなドレスだった。
淡い水色のそれになんとなく黒子くんを思い出してしまった。


「もうすぐ朝食が来るはずなんだけど…」

「はーい!!今持ってきたよー! 」


伊月さんの言葉通り、朝食を持った葉山さんが現れた。

「あのなぁ、ノックくらいしろよ」「えー?」「ここは彼女の部屋なんだぞ」「?苗字さんの部屋だとノックしなくちゃいけないの?」「いや、それは…女の子の部屋だからってことだよ」「え?女の子部屋だとノックしなくちゃいけないの?」「…」

なんだかよく分からないやり取りをする二人を見ていると、伊月さんが諦めたように息をはいていた。
それから、持ってきてもらった朝ごはんを食べ終わると、伊月さんは時計を見た。


「…そろそろ行こうか」


伊月さんに頷いて立ち上がろうとすると、またもや足に激痛がはしった。
学習しないな、わたし。
そんな私を受け止めたのは、葉山さんで「あ!そういえば、足が痛いんだよね」もにこやかに笑った葉山さんは軽々と私を抱き上げてくれた。


「よし、それじゃあ行こう」

「うん」


伊月さんの言葉に葉山さんと二人で大きく頷く。
それに笑顔を見せてから伊月さんは歩きだし、そのあとを葉山さんは追うように歩きだしたのだった。

向かうのは、もちろん、結婚式場だ。

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