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大学1年になりました20


日向くんたちが指輪を見つけてくれてから数日。
大学も休みの休日に無事に見つかった指輪を身に付けて向かったのは、秀徳高校の体育館だって。そういえば、初めて来たかも。
バスケ部は強豪ということもあり、いくつか目に入る体育館のうち、当てずっぽうで1番手前の体育館を覗くと、予想的中。目立つ緑色の髪をした彼を見つけて思わず顔を綻ばせる。


『失礼します、』

「え……なっ!?名前さん!?」

「はあ!?」


挨拶をしながら、半開きになった入口から顔を出すと先ず真っ先に気づいてくれたのは和成くんだった。驚くように大きくなった和成くんの声に他の部員の人達の視線も集まってくる。
苦笑いを浮かべていると、慌てたように駆け寄ってきた清志くんが周りの目から隠すように目の前に。


「おまっ…!何してんだよ!?」

『何って…お礼?』

「は?」

『だから、お礼を言いに来たの』


ポカンとしている清志くんを横目にチョイチョイと和成くんと緑間くんを手招きすると、不思議そうにしながらも2人ともこちらへ。うん、素直で可愛い。
「どうしてここに?」と首を傾げる和成くんの頭を思わず撫でると、ふにゃりと顔を緩められて、自分の頬も緩んでしまう。和成くん、マジ天使。
緩みきった顔で和成くんを撫でていると、不機嫌そうな顔をした清志くんに手首を捕られてしまった。


「…いつまでしてんだよ」

『…ふふ、ごめんごめん。和成くんが可愛くて、つい』

「でも、あの、マジで何かあったんすか?わざわざ来てくれるなんて」

『うん。ちょっとお礼を言いたくて…今平気?練習中?』


三年生である清志くんにそう尋ねると、その場で振り返った清志くんが大坪くんに声をかけた。
「大坪ー今いいか?」「ん?ああ、もう昼休憩に入るところだからな」「さんきゅ」
というやり取りのあと、またこちらへ向き直った清志くんが掴んだままの腕を引いて体育館の外へ向かう。自然と彼に合わせて外へ出ると、それに続くように和成くんと緑間くんも外へ。何も言わずに暫く歩いた清志くんは、体育館の裏の方で漸く足を止めた。


「…で?礼ってなんだよ?」


ぶっきらぼうにそう聞いてくる清志くんに思わず笑ってしまう。


『…指輪、探してくれたんでしょ?』


「ありがとう」と3人に笑いかけると、三者三様の反応が帰ってきた。清志くん、ほっぺた赤くなってるなあ。口に出したら怒られるけれど、やっぱり可愛い。
そんなことを考えていると、「気にしなくていいですよ」と和成くんが言ってくれるものだから緩く首をふった。


『気にしてるとかじゃなくて、言いたいから来たの』

「…見つけたのは俺らじゃねえよ」

『でも、探してくれたんだよね?だから、ありがとう』


できるだけ柔らかく笑ってみせると、照れ隠しなのか、髪をクシャクシャに撫でられた。ああ、大きな手だ。ずっと傍で見てきた清志くんの、大きくて、暖かい手。私は、この手から逃げようとしていた。この人から、逃げようとしていたんだ。
ソッと清志くんの手をとって握ると、「名前?」少し屈んだ清志くんが顔をのぞき込んできた。そうか、もう屈まないといけないくらい、背が高くなったんだな。


『…ごめんね』

「あ?」

『…清志くんの気持ちから逃げ出した。だから…ごめんね』


和也さんのことが好きだ。過去にするとは言っても、まだ、あの人のことを愛する想いがなくなったわけじゃない。
でもそれが、清志くんやタツヤや翔一くんの想いから目をそらしていい理由になんてならない。彼らの“本当”から逃げていいことになんてならない。
握り締めた大きな手。それがゆっくりとに切り返されて顔を上げると、不機嫌そうな清志くんの手に前髪をかきあげられた。


「…怒ってねえわけじゃねえ」

『…うん』

「でも、また…お前が笑ってくれんなら、それでいいよ」


清志くんの顔がゆっくり綻ぶ。
それにつられたように微笑み返したところで「あ、あー…お2人さーん?」和成くんが気まずそうに話に入ってきた。あ、そっか。和成くんと緑間くんも居たんだった。
慌てて手を離した清志くんに笑ってしまいながら、2人にも「心配かけてごめんなさい」と謝ると、和成くんと緑間くんも柔らかく笑ってくれた。


『…それじゃあ、私は帰るね』

「えー?帰っちゃうんですか?」

『これ以上お邪魔したら悪いしね』

「…また、連絡する」

『…うん、待ってるね』


3人に緩くふった手。
海常や桐皇にも行かなくちゃ。
校門に向かって歩きだそうとしたとき、1つ、大事なことを忘れていた。


『清志くんっ』

「?あ?なんだよ?」

『…私は、まだ、指輪をくれた彼のことを、忘れられないけど!でも…清志くんのこと、ちゃんと“男の子”として見るからねー!』


「バイバーイ!」今度は大きく振った手。
ポカンとした顔の清志くんたちが見えたけれど、見ないふりをすることくらいいいだろう。私だって恥ずかしくないわけじゃない。

もう和也さんを理由に向けられる想いから逃げるのはやめよう。ちゃんと向き合って答えを出そう。
仰いだ空の上で、和也さんが笑ってくれている気がした。

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