お題   内緒の話
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「内緒」「秘密」


人は、それを必ず持っている。「秘密なんてないよ」なんて綺麗事をほざいている奴等も大抵10個20個持っているのだ。だってそれが人間なのだから。そんな事を言っている僕にだって秘密くらいある。甘いものは嫌い。実は結構な努力家だったりする。小学校時代はひきこもりだったりする。ほら、今そこを歩いていった奴だって腹の中は秘密で煮え繰り返っている。窓の外の、部活に励むリア充も自分の親友や彼氏に秘密を隠しているのだ。そんなものたちを抱えて、僕らは今生きている。



「…ね、晶って私に隠し事してる?」


僕「高梨 晶」に気さくに問い掛けてくる彼女、「仲山 佐奈」にも秘密はあるのだろう。佐奈曰く、「晶に隠し事はない」…らしい。僕は佐奈を信じているが、やはり人間は分からない。いつか裏切られるかもしれない。いや、僕自信が裏切るかもしれない。…しかし人の腹の中などは分かるはずもなく。



「…あるわけないでしょ、佐奈には全部話した」


「うそ、私晶のこと知らないもの。」


「知ってるよ、生年月日だって家族構成だって身長体重だって教えただろ?」


「えぇ知ってるわ。1994年3月15日生まれ、家族は両親と兄と妹、身長176pの体重62sよね。」



驚く程に人の個人情報をスラスラと笑顔で並べてくる彼女にはいつも関心させられる。大通りなどの人の居るところでも平気で言うのがたまに傷だが。


「それ以上、何を知りたいの」


「私、晶の気持ち聞いてないわ。」



僕は依然、佐奈に告白された。佐奈が言う好きというのは、もちろん恋愛感情なんだろうが、そんなことは承知の上で僕はその返事はしていない。佐奈は返事の催促はしなかったが、2ヶ月も溜めていたのでさすがに呆れられたのだろうか、今初めて催促されてしまった。


「…う、ん」


「私はまだ晶のこと好きよ、それは変わらないわ。」


「…うん、」


「うん、だけで返さないでよ」


「ごめん…なさい」


佐奈はため息をついて空を見上げた。正直、返事には困る。僕なんかじゃ佐奈には到底及ばないし、似合わない。佐奈の言う通り、僕にはまだまだ秘密がある。全て打ち明けるのはさすがに勇気が要る。


「…大丈夫、私は晶を受け止めるわ。」


笑顔で空を見上げたまま、佐奈は僕の心を見透かすように呟いた。空は、宇宙まで透けそうな程に透明だった。

僕は、たくさんの秘密を抱えている。両親にだって打ち明けず、佐奈にだって打ち明けていない秘密がある。たくさんのたくさんの秘密を抱えて、長い長い道を歩む。それが人間。それこそが人間。さまざまな内緒、秘密の中で僕は生きている。


そんな僕は今から、佐奈に
2ヶ月越しの秘密を1つ打ち明ける。






「…僕は─────…」






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お題提供:モノクロメルヘン

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