罰ゲーム





その日のギルド内は拍手で満ちていた。それはマカロフと対峙しているナツへと向けられており、当のナツは顔を俯かせて身体を震わせている。

「流石ナツだな」

「何たって火竜って呼ばれるぐらいだからな」

「本当にめでたいな」

言葉とは逆に目には憐れみが浮かんでいる。
ナツは周囲で手を叩く仲間たちを睨みつけた。

「うるせー!喧嘩売ってんのか!」

目を吊り上げるナツの頭に、マカロフの手刀が落ちる。

「ナツ!ちっとは反省せんかぁ!」

「ぅぐ……だ、だってよぉ、じっちゃん」

「言い訳は聞かん!約束通り罰を行う!」

しょんぼりと肩を落とすナツ。
実は先ほど評議員から連絡が入った。内容は、ナツの起こした被害の始末書の催促。そして、今回でナツが問題を起こした回数が通算百件に達したのだ。
ギルドで一番問題を起こすナツに頭を抱えたマカロフが、百を超えたら罰を与えるとずいぶん前に告げていたのだった。

「罰って何するんですか?」

心配そうに顔をゆがめるルーシィに、ミラジェーンが苦笑した。

「これから決めるのよ」

マカロフはサイコロをナツへと手渡した。サイコロの目には数字ではなく疑問符が描かれている。促される様に、ナツはサイコロを床へと投げた。
サイコロが音を立てて床を転がる。周囲の目が集中する中、ナツがごくりと喉を鳴らす。そして、サイコロが動きを止めた。

「うぉ!?なんだなんだ?」

サイコロが音を立てて吐き出した煙、それがナツを包み込んだ。暫くして煙が晴れた時には、ナツの姿は変わり果てていた。

「な、何だこりゃー!!」

ナツは自身の姿を確認して驚愕した。
服装はミラジェーンが着ている物と同じギルドの従業員の制服。ナツの桜色の髪は腰まで伸び、身体は女性らしく丸みを帯びていた。声も若干高くなっている。

「一日ウェイトレスじゃな」

マカロフがあっさりと告げたのに、ナツは床に手をついて項垂れた。

「しっかり働きなさいね」

マカロフの手がナツの肩を叩いた。

「な、何ですか、あれ!」

ルーシィが説明を求めてミラジェーンへと振り返る。

「あれは、サイコロマジック。ゲームで使う魔道具の一種なの」

あらかじめサイコロの目の数分罰ゲームを設定しておき、サイコロを投げて出た目の罰ゲームを行わなければならない。衣装なども設定できるので、目が出た時点で罰ゲームは強制的に始まる。拒否をする事は出来ないのだ。

「ていうか、ナツが女の子になってるみたいなんですけど」

「ええ。あれは魔法屋に頼んで作ってもらった特注だから、性別も変えられるの。罰ゲームを終えるまで魔法は解けないわ」

いくら問題ばかり起こすからと言ってやり過ぎなのでは。ルーシィがナツを憐れむ様に見ていると、ミラジェーンは両手を腰にあてた。

「ナツったら全然反省しないんだもの。たまにはキツイお仕置きをしなきゃね」

ミラジェーンは楽しそうに笑いながら、ナツへと歩み寄っていってしまった。

「さぁ、ナツ。お仕事よ」

こうしてナツの一日ウェイトレスが始まったのだった。

しかし、いつも騒がしいナツがウェイトレスとして一日働くには無理があった。
いくつもグラスを割ったり、客が注文した料理を食べたりと、全く仕事になっていない。それでも根気よくナツに指示を出すミラジェーンを流石だ。

「ナツ、地下の倉庫からこれと同じ物を持ってきてくれる?」

ミラジェーンに渡された空のボトル。酒の銘柄が書いてあるラベルを見ながらナツは頷いた。
ナツは地下に降りると倉庫へと足を向ける。遊技場とは逆に位置にしている倉庫側は薄暗く人気がない。薄気味悪さを感じながら倉庫へとたどり着いた。ナツも倉庫までは足を踏み入れた事がなったのだ。
明かりをつけ、周囲を見渡しながら奥へと進んだ。酒が並んでいる棚を見つけ、ナツはラベルを確認しながら一つずつ目を通す。

「見つかったか?」

「いあ、まだ……て、何でここにいんだよ。グレイ」

声の主はグレイだった。
首をひねったナツが、背後にいたグレイに顔をしかめる。酒を探すのに集中していて背後に近づいた事に気付かなかったのだ。
振り返ろうとするナツだったが、ナツに覆いかぶさるようにグレイが棚へと手をついた。
グレイの両腕に囲われていてナツは身動きが取れない。

「退けよ!」

もがく様にナツの手がグレイの腕を振り払おうとする。その手をグレイの手が掴んだ。

「おい、いい加減に……ッ」

ナツの手を掴んでいたグレイの手の力が強まる。痛みに顔を顰めるナツに、グレイは歯を食いしばった。

「もう、その格好やめろ」

言葉の意味が分からずに困惑するナツ。そんなナツの目をグレイの瞳が射抜く。怒りが瞳の奥に垣間見えナツはびくりと体を震わせた。

「お前、周りにどんな目で見られてんのか分かってねぇのか?」

「な、何が、」

グレイは手を引いてナツを振り向かせると、身体を棚に押さえつけた。

「目も、伸びた髪も、胸も足も……全部、男にとっちゃ挑発してるように見えんだよ」

まだ幼さの残る瞳は長いまつ毛で覆われ、綺麗な桜色の髪は女性らしく腰まで流れている。実際には男だから無防備なのも仕方がないのかもしれないが、ナツが激しく動くたびにスカートが翻り、足がむき出しになる。揺れる胸だって男の視線を集めるのだ。

「我慢できねぇんだよ」

ナツの身体を押さえつけるグレイの力が強まる。

「お前が、例え想像でも、他の男に汚されるなんざ……我慢ならねぇ」

「お前何言っ……ぅん!?」

ナツの唇に己の唇を重ね、抵抗するナツを抑えつけながら、無理やり口内を犯す。
ナツの抵抗する力が弱まっている隙に、グレイはナツの衣服へと手を侵入させた。白い肌へと手を滑らせる。手が胸の突起をかすめるとナツの身体が大きく跳ねた。

「んん!……やだ、グレ……ひん!」

グレイは、ナツの股へと膝を割りいれた。刺激するように足を擦りつけながら、耳元で低く囁く。

「人前に出れねぇようにしてやる」

初めて与えられる快楽に、次第にナツはグレイに身をゆだねていった――――







「……って事にならねぇかな」

頬杖をついたグレイが、夢現で遠くを見つめる。
グレイのいるテーブルの前には、罰で一日ウェイトレス中のナツが立っていた。顔を赤くして身体を震わせている。

「そんできっとナツは『俺、これからはグレイだけのウェイトレスになる』とか言って俺から離れられねぇんだよ。ナツが毎晩御奉仕とか堪んねぇよな」

おそらくグレイは全て声に出している事に気付いていない。その証拠に怒りで全身から炎を噴き出させるナツにも気付いていないのだ。
ナツは潤んだ瞳でグレイを睨みつけると拳を握りしめた。

「火竜の……鉄拳!!!!」

容赦ないナツの攻撃がグレイに直撃した。無防備だったグレイの身体が吹っ飛び、壁を突き破ってギルドから姿を消す。
肩で呼吸を繰り返すナツに、周囲はただ同情の目しか向けられなかった。




20100902

蒼様から頂いたリク「問題起こした罰にウエイトレス」でした。

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