俺の家族です





※ナツ女体
※妖精たちの恋のelementsのファンによる二次創作
※最終話
※すんませんしたー



初夏の風に髪を揺らしながら、青々とした草を踏みしめていく。
海近くの人気のない岬。崖の上にある目的物を見つけたナツは、寂しそうに目を細めた。

「母ちゃーん!」

幼い声と軽い足音に、ナツは振り返った。駆け寄ってくるのは金髪の幼児。
ナツは、幼児の名を呼びながら歩み寄る。

「母ちゃん、花忘れてるぞ」

「ありがとな」

花束を受け取って、再び視線を戻す。
幼児も、その視線の先へと駆け寄り、目的物で足を止めた。歩み寄るナツへと振りかえる。

「ここに父ちゃんがいるのか?」

幼児が指差した場所には墓があり、ナツは墓の上に花束を置いて、じっと見つめる。
ラクサスが手術の為に外国へ行き、ナツが無事出産してから五年の月日がたっていた。
ナツとリーダーであるラクサスが抜け、elementsは解散。グレイとミストガンは個人で活動している。

「ナツ」

名を呼ばれて振り返れば、青髪の男が歩み寄ってきていた。

「ミストガン」

「ようやく見つけられたな」

ミストガンは、ナツの肩に手を回して体を引き寄せると、墓を見下ろす。

「もう五年か」

「ん、五年だ」

「5年だー」

「五年だ、じゃねぇ!」

怒りのこもった声に、三人の視線が一斉に向く。

「てめぇ、毎度人の妻にちょっかい出すな!」

低く唸る声の主に、ナツは笑みを浮かべながら駆けよった。

「ラクサス!」

飛び付くナツの体を支え、ラクサスはナツを見下ろす。

「ナツ」

顔をあげたナツは、表情を固めた。
ラクサスの手がナツの頭を鷲掴みにする。

「いだだだだだ!」

「あいつに近づくなっつってんだろ。食われてぇのか」

ラクサスの言葉に反応したのは、言われた本人ではなく、ミストガンだ。
心外だとばかりに顔をしかめる。

「お前と一緒にするな。そんな野蛮な事はしない」

ラクサスはナツの頭から手を離して、ミストガンへと顔向けた。

「どうだかなぁ?」

「合意をえずにするわけないだろう」

合意があれば手を出す気だ。隙だらけのナツは危うい。言葉巧みに丸めこまれそうだ。
顔をしかめるラクサスに、幼児が声をかける。

「父ちゃん、いちゃいちゃしてないで、父ちゃんにゴアイサツするぞー」

体を離す前にナツの額に口づけを落とし、ラクサスは、幼児のいる墓の前へと足を進めた。

「父ちゃんじゃなくてじぃじだろ」

先ほどから父親とよんでいるが、正しくはナツの父親の墓。居所を掴めなかった存在、五年かけてようやく見つけることができたのだ。
残念だが、ナツがelementsに入って間もなくの七月七日、五年前の今日、亡くなった。
墓の場所が見つかっただけでも運がいいのかもしれない。
ラクサスは、片腕で幼児を抱えあげて、墓を見下ろす。

「挨拶が遅くなっちまったな……」

小さく呟いたラクサスの隣に立ち、ナツはラクサスの体に身を寄せた。

「父ちゃん、紹介するな」

俺の大事な家族だ。




20110418




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