前回までは!
悪の秘密結社、幽鬼の支配者の罠によって、サンダーパンサーの正体がラクサスだとナツにばれてしまった。
戦意喪失になったラクサスと、何故か戦闘不能までに鼻血で出血多量なグレイ。残されたルーシィだけでは戦力不足となり、一時撤退を余儀なくされた。
囚われたままのナツを救うために、フェアリーファイブは再び幽鬼の支配者のアジトに乗り込む。その時、四人目の戦闘員ウィングキャットもといハッピーが忍びこみナツの元へと訪れていた。
部屋の片隅で縮こまっていたナツに、ウィングキャットは司令官から託されたものをナツへと渡す。
それは、フェアリーファイブの証しの入った、フェアリーウォッチ。



30話「ファイアキャット」


ピンクとブルーはエレメント4に苦戦を強いられ、イエローは幽鬼の支配者の首領ジョゼと相対していた。
力を使い果たし、その場に膝をついたイエローは変身が解けてしまった。まるで、ジョゼに跪いているかのような姿に、ラクサスは顔を歪める。

「残念ですが、あなたは私のタイプではないのですよ」

ジョゼがラクサスへと手を向ける。その手から放たれたエネルギーがラクサスの身体を捕らえる。

「……くそっ」

変身もしていなければ、防ぐ力もない。
ジョゼの手が徐々に拳を作り、折り曲げられる指に連動するように、ラクサスの身体は締め付けられていく。
ラクサスの口から呻く声がもれ、ジョゼは口端を吊り上げた。

「消えなさい」

「ハッピー!マックススピード!」

「あいさー!」

声が二つ響いたと同時に、ジョゼの身体はふっとんだ。
ジョゼの力から解放されたラクサスは、未だ残る体の痛みに顔を歪めながら、顔を上げる。

「……ナツ」

視界に映ったのは、ウィングキャットに掴まれて宙を浮くナツの姿。
ナツは、キャットの手から離れて地に着地すると、ラクサスへ駆け寄った。
遠目でも分かる傷は、近くで見ればより酷い。傷だらけのラクサスに、ナツはくしゃりと顔を歪めた。

「オレのせいでラクサスがケガしちまった」

ラクサスは重い手を持ち上げ、涙をこぼすナツの頭を撫でた。震える手を情けないと考える余裕もなく、ただ、ナツを安心させるためにラクサスは笑みを浮かべる。

「お前のせいじゃねぇよ」

安心させるはずだった言葉は、ナツの涙をさらに溢れださせた。

「ごめ……ウソついて、ごめん」

ナツは嗚咽をもらしながら、必死に言葉を紡ぐ。
正体を偽っていたのは己の方で、ナツが謝る理由はない。訝しみながら、無言で言葉を待つラクサスに、ナツは続ける。

「恥ずかしかったんだ、オレ、ラクサスの事いっぱい話しちまったから……」

サンダーパンサーとナツが始めて出会った時、ナツはラクサスを慕う言葉をいくつも口にした。
本人とも名乗れずにラクサスは、ナツから贈られる言葉を耳にする。その時動揺した事は、ラクサス自身忘れることはない。

「キライじゃ、ねぇからな」

ナツは手の甲で涙を拭って、ラクサスを見つめる。

「キライなんかじゃねー……ラクサス、大スキだ」

枯れてしまうのでないかと思う程に、いくら拭っても零れる涙。

「ああ、俺もだ」

涙でぐしゃぐしゃの顔が、ラクサスの言葉で笑顔に変わる。

「言いつけを守れないなんて、悪い子ですね」

空気を壊すような地を這う声が響き、ナツは声の方へと振り返った。
先ほどふっ飛んだジョゼが、ゆっくりとナツ達へと向かって距離をつめている。
ナツは、未だ涙で潤む目でジョゼを睨みつけた。

「あれほど、部屋から出ないようにと言ったのに」

ジョゼの言葉を無視して、ナツは立ち上がるとジョゼに向かって指をさした。

「ラクサスいじめたお前だけは、ぜったい許さねー!」

ナツは、手首に巻きついていたフェアリーウォッチを口へ近づけた。

「変身!」

声に反応してフェアリーウォッチが輝きを放つ。眩い輝きはナツの身体を包み、光が消えた時、ナツの姿は変わっていた。
なびく鱗模様のマフラー。桜色の頭からは黒い猫耳が生え、耳を覆う通信機ヘッドフォンと、ゴーグル。

「ナツ……?」

呆然とナツを見上げるラクサスに、ナツは振り返った。

「オレは、フェアリーファイブのファイアキャット。今度はオレがラクサスを守るからな!」

無邪気な笑顔を浮かべるナツに、ラクサスは苦笑した。

「ていうか、特別仕様!?」

「ももももも萌えー!!!!!」

二つの声は、他の場所でエレメント4と戦っていたピンクとブルー。
突っ込みと変態。二人が現れたことで、シリアスな空気は完全に消え失せたのだった。




20110817

レッドようやっと登場。ファイアキャットの戦闘スーツ(?)は渾身の出来だと開発したあのお方※お父様が申しておりました。
ちゃんと説明書がついているので、ナツでも絶対安心に使用できます☆


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