恋心は急激に加速します
ポーリュシカの家に訪れていたゼレフは、怒りを宿した家主の瞳に睨まれていた。
ナツが島を出た後、ゼレフはポーリュシカの元へと訪れた。ナツがいない事を誤魔化すために言葉を並びたてたのだが、それはわずかな時間も保つことはできず、最初は訝しんでいた瞳が、すぐに怒りに染まった。
「ポーリュシカ、落ち付いて……」
「これが落ち付いてられるかい!まさか、あんたが手を貸すとは思わなかったよ」
ポーリュシカは、近くにあった椅子に座り込むと、手で目を覆った。顔を隠すように俯いた、その手は震えている。
「あの子が、この島でしか生きていけない事は、あんたも分かってるだろ」
ポーリュシカの声が重くその場に落ちる。手同様に声も震えており、ゼレフは眉を落とした。
「だから、約束をした。与えたのは三日、その間の薬も渡してある」
「帰ってくると思うのかい」
「僕は信じている。ナツは、絶対に約束を破らない」
過去に、ナツが約束を守らなかった事はないのだから。
ゼレフの真っすぐな瞳に、ポーリュシカは窓へと視線を映した。窓から覗く景色は変わらないはずなのに、暗く感じる。
「そう、思うのかい……」
口から漏れた声は、己では気づかない程に寂しいもので、ゼレフもそれ以上言葉を発することはなかった。
口にした事などない、食事。柔らかいベッド。優遇されて、数時間が経過した。昼食はすんでおり、腹は満たされている。足の包帯も変えられ、痛み止めの薬も飲み終わった今、退屈な時間を過ごしていた。
「……つまんねぇ」
ベッドに寝転がったナツは、シーツに顔を埋めた。
怪我が治るまで留まっていいと言ったラクサスとは、部屋に案内されてから顔を合わしていない。朝、昼と、食事の時間にも会う事はなく、その間面倒を見てくれたのはミラジェーンだ。これでは、島から出てきた意味がない。
ナツが呻っていると、部屋の扉をたたく音が響いた。ナツが返事をして、すぐに開いた扉から顔を覗かせたのはミラジェーンだった。
「ミラ」
起きあがるナツの元へと歩み寄りながら、ミラジェーンは口を開く。
「退屈そうね」
「おお、つまんねぇ」
不満を隠すことなく表情に出すナツに、ミラジェーンは苦笑した。
「足に負担がかからなければいいんだし、行きたいところがあったら言って?私も付き合うわ」
「いいのか!俺、海に行きてぇんだ!」
ナツにとっては、海は陸と等しく身近なもの。泳がない日などなく、ホテルの一室からでも海は見えるが、触る事も匂いを感じる事もできないとなると、妙に落ち着かなかった。
目を輝かせるナツに、ミラジェーンは眉を落とした。
「海に行くのは構わないけど、中に入ってはダメよ」
「なんでだよ」
「今日は波が荒いみたいなの。その足だと、何かあった時に心配だわ」
分かりやすく落ち込むナツに、ミラジェーンは即座に浮かんだ案で、言葉を繋げる。
「泳ぎたいなら、プールに行きましょう。プールなら波もないし、何かあっても助けてあげられるわ」
己の名案に表情を輝かせるミラジェーンとは逆に、ナツはきょとんと首をかしげた。
「ぷーるってなんだ?」
ナツは、知識が全くないわけじゃない。ポーリュシカやゼレフから、計算や読み書き、島外の事も多少は教え込まれている。島の内外関係なく、知性が全くないのでは生きていけないからだ。しかし、島外の事は、ポーリュシカやゼレフは、口にしたがらない。ナツには、ほんのわずかな情報しかないのだ。プールは知識外だった。
説明するよりも早いと、ナツはミラジェーンに、ホテル内のプールエリアに連れてこられた。
やたらと広い空間の中央には、長方形のくぼみがあり水がはってある。それを囲うように、サイドにはデッキチェアがいくつも設置されていた。
「すげー!」
「これがプールよ」
ナツの記憶内にある、水がたまっている場所というのは、海か湖か風呂のみ。
ナツは反響する己の声にも興味深く、高い天井を見上げる。落ち着きのない様子にミラジェーンはくすくすと笑みをこぼした。
「好きなだけ泳いで」
「おお!ありがとな、ミラ!」
ナツは、プールエリアへと入る前の更衣室で、すでに水着を着用している。今まで水着さえ身に付けた事がなかった為に戸惑ったが、それは最初だけで、順応性が高いのか、すぐに違和感は消えてしまった。
ナツは床を蹴ると、水中へと飛び込んだ。水しぶきが上がり、乾いていた床を激しく濡らした。他に客がいない事は幸いしただろう、迷惑にならずにすんでいる。
ミラジェーンがデッキチェアに腰かけて眺めていると、潜っていたナツが顔を出した。
「プールって変な匂いだな。味も海と違ぇ」
「飲み物じゃないのよ、ナツ」
いくら清潔を保とうとしても、所詮は人が中に入るのだ。化学物質を不使用としていても、飲み物ではない。
「でも、海とは違うけど、あそこにずっといるよりマシだ」
部屋に閉じ込められるのは、短時間でもナツには耐えがたいものだ。ナツの生活環境は自然と共にあったのだから。
ナツは笑みを浮かべると、再び水中へと消えてしまった。それを眺めていたミラジェーンは、デッキチェアに体を預けている内に、意識を沈めていく。
耳に入ってくる、静かな水音は、まるで魚が跳ねている様だ。人工的なプールという場所だと忘れてしまう程に、ミラジェーンは心地良さに包まれていた。
暫く目を閉じていたミラジェーンは、目を開くと時計を見やった。短針が、最後に確認した時よりも一刻程動いており、わずかだと思っていた時間は、思った以上の経過を許していた。
プール内へと視線を向ければ、静かな水面が、わずかに跳ねた。瞬間覗いた桜色の髪に、ミラジェーンは目を細める。
立ち上がり、プールの縁へと歩み寄れば、それに気づいたナツも水中から顔を出した。
「本当、人魚みたいね」
「人魚って、魚に足食われてるやつだよな。俺なんともねぇけど……」
ナツが水中にある足を見やるが、知識が間違っている。
「魚に食べられているんじゃなくて、足が魚なのよ」
「おお、うまそうだな!」
にっと笑みを浮かべるナツに、ミラジェーンは苦笑した。今ナツの脳内では、ミラジェーンが描いている人魚の形を超越した物体が浮かんでいるのだろう。聞かなくとも、ナツの反応を見れば分かる。
涎を垂らしそうな顔に、ミラジェーンは小さく噴出して口を開く。
「ラクサスがずっと探してるのよ」
食欲で満ちていた表情が、ラクサスの名が出た瞬間一変した。瞳は先を促しており、急かされる様にミラジェーンは言葉を繋げる。
「十年前ね。風にとばされて海に落ちた私の妹の帽子を、ラクサスが取ろうとしてくれたんだけど、今日みたいに波が荒れてて……」
「ラクサス大丈夫か?!」
ミラジェーンにとっては、ラクサスは妹の為をと思って行動し、事故になった。彼女にとっても心の傷である。
少し言い淀むミラジェーンに、ナツは食いつく様にミラジェーンを必死に見上げる。その青は不安で歪んでおり、ミラジェーンは膝を追って屈むと、ナツの頬に手をあてた。
「昔の話よ、今、ラクサスは元気でしょ?」
「そ、そっか……そうだよな」
安堵して強張っていた体の力を抜くナツから、ミラジェーンの手が離れる。
「その時、溺れたラクサスを助けたのが人魚よ。とってもキレイな桜色の長い髪を持った、幼い人魚姫だったらしいわ」
ナツの脳裏に、早朝の事が蘇える。ようやく対面できたと思ったラクサス、その口から吐き出された言葉。
『俺が探してるのは、お前と同じ髪の色した女なんだよ。そんな短くねぇ、長い髪だ』
ナツの手が、無意識に己の髪へと伸びる。半日前はまだ髪が長かったのだと、そう主張すれば、ラクサスは触ってくれたのだろうか。
ナツの気持ちが沈んでいく中、ミラジェーンは言葉を続ける。
「今もラクサスは探してるの。人魚姫が落としていった涙を大事に持って」
「……涙?」
「人魚の涙って言うのは異名で、宝石の種類よ」
ナツの口から適当な相槌の声が漏れる。沈み込んでいるのは、誰が見ても明らかだ。ミラジェーンは、少しでも気持ちを浮上させようと、明るい声をあげた。
「ねぇ、ナツ。そろそろお茶にしない?ここのカフェのケーキは凄く美味しいのよ」
「……うまいの?」
「ええ、とっても。保証するわ」
「うまいもんなら食いてぇ」
暗かった表情に輝きが戻る。ナツは、プールの縁にしがみ付いていた手に力を入れると、水中から上がった。勢いのまま、更衣室へと急ぐ。
「ミラ、早く行こうぜ!」
「急がなくても大丈夫よ、一番人気のケーキをとっておいてもらっているから。ナツは、ゆっくり着替えてきて」
ナツの性格を察し、すでに予定として組み込んでいたのだろう。
背後からかけられる明るい声に、ナツは心地良さで顔を緩めた。
島外の事を知らないナツにも優しく接するミラジェーンの姿は、姉の様だ。ナツにとって、家族と呼べるのはポーリュシカのみ。接する人間となれば、もう一人、ゼレフしかいない。島外の人間を遠目で眺める事は合っても、会話をする事はなかったのだ。もし、姉という存在がいれば、ミラジェーンのようなのかもしれない。
走っていたナツは、足を止めて振り返った。
「へへっ、俺、ミラが笑ってるの好きだ!」
向けられる無邪気な笑顔に、ミラジェーンは目を開いた。すぐに背を向けて走って行ってしまったナツの背を見つめながら、ミラジェーンは微かに頬を紅潮させる。
ミラジェーンも、ラクサス同様に資産家の令嬢である。そのせいで、近づいてくる人間は欲を持った者が多い。だから、近しい者以外の、真っすぐな純粋な笑顔は久しぶりだった。
「私も、あなたの笑顔は好きよ」
その純粋な目がラクサスを求めていると気付いているから、ラクサスに嫉妬してしまう。
ミラジェーンは笑顔を浮かべながらも、困った様に眉を落としたのだった。
食事をとれと口うるさく言ってくるフリードから逃げたラクサスは、ロビーまで出てきていた。軽くでも腹に入れておけばいいと、カフェにまで足を伸ばしたのだ。ルームサービスですませたくとも、フリードの監視が鬱陶しくて耐えられるものではなかった。常なら反抗すらしない従順な彼だが、たまにいい加減になるラクサスの体調管理は例外だった。
ロビーを通りぬけていると、一角に人だかりができていた。このホテルのロビーには水族館並の巨大水槽が設置されており、人だかりは、そこに集まっていた。
珍しい魚でも入ったのか、そう考えていたラクサスだったが、その予想は外れている。水槽の中には、観賞用にと放りこまれている魚が泳いでいるのだが、その中でいるはずのない色が一つ。魚達と共にナツが紛れていた。
「何やってんだ、あのガキ!」
ありえない状況に、ラクサスは目をむいて、水槽へと駆け寄る。
人をかき分けて水槽に近づいたラクサスを、桜色の目が捕らえた。
楽しそうに細められる目、笑ったのか口から酸素が漏れ、泡が上っていく。水に漂う髪、水槽のガラスに手をついて外を窺う姿は、まるで捕らえられた人魚だ。
「人魚さんがいるー」
幼い声に、ラクサスは我に返った。下へと視線を下げれば、幼稚園児程の幼い子供が、ナツを指さしている。
幼児が水槽に手をあてると、それに気づいたナツは、挨拶でもするように水槽のガラスを数回たたいた後、呼吸をする為だろう慌てて水上に上がっていった。
それを見送ったラクサスも、ナツを追って水槽の上部へと急いだ。
ホテルは、幾度となく利用してきた場所で、おおよその内部図は頭に入っていた。階段を駆け上り、従業員以外は入室禁止と注意書きのされている扉に手をかけた。開けば、今までいた表とは違って薄暗い部屋。その奥に、人影を見つけた。
「お客様、水槽の中に入られては困ります」
「な、なんだよ、これプールじゃねぇのか?」
水から顔だけどを出したナツに、ホテルの従業員が窘めている。それを見つけたラクサスは、額に手をあてて溜め息をついた。妙な疲労感を感じながら、プールの縁へと近づく。
「悪いな、すぐに連れて行く」
振り返った従業員は、ラクサスの姿を確認して、あからさまに安堵の表情を見せた。ドレアー家の御曹司という肩書を持っているラクサスの存在を知らぬ者は、ホテル内ではいない。ナツは、そんな彼の関係者となっているのだ、扱いにも困っていたのだろう。
従業員が出ていき、二人きりとなった。沈黙するその場には、水の波打つ音しかしない。
ばつが悪そうに目をそらしているナツの口は、拗ねたように尖っており、ラクサスはまた一つ溜め息をついた。
「おい、さっさと上がれ」
聞こえないというわけではないのに、ナツは反応することはない。目をそらしたままのナツに、ラクサスは少し苛立ちを含ませた声を吐きだす。
「聞こえてんだろ、おい!」
「俺はそんな名前じゃねぇ」
口を開いたかと思えば、その声は不機嫌以外のなにものでもなかった。目は変わらずにそらされたままで、ラクサスは一瞬戸惑いながらも溜め息交じりに口を開く。
「名前なんか覚えてねぇよ」
言った瞬間、ラクサスは後悔した。ようやく顔を上げた猫目、最初は見開いていたそれは、一瞬で悲しみを宿す。くしゃりと歪んだ顔を隠すように、ナツは水中へと潜ってしまった。
覚えていないわけではなかった。ラクサスの立場上、人の顔と名前を記憶するのは得意で、ナツのように覚えやすい名前を忘れることなどない。ただ、子供じみた嫌がらせだった。
水面を見つめれば、揺れる水に歪まれながらも、桜色の髪が見えた。
「……冗談だ」
水面に反射されて、呟いた程度では、ナツの下へは声は届かない。ラクサスは一瞬間を置いて口を開いた。
「ナツ!さっさと上がって――」
ラクサスの言葉は途中で止められた。ラクサスが名を呼んだ瞬間、勢いよく顔を出したナツの手に足を掴まれ、引っぱられた。状況を把握する暇もないまま、激しい水しぶきと共に、ラクサスの身体は水中に投げ込まれる。
ラクサスは沈んでいく体を浮上させ、慌ててプールの縁にしがみ付いた。背後からする水音に振り返れば、ナツと目が合う。
「て、てめ……何しやがる!」
「お前が嘘つくから悪いんだろ!」
言葉だけなら怒っているのに、表情は嬉しそうに緩んでいる。
名を呼んだだけだというのに。ラクサスは内心呟いて、水をすくい上げながら手を振り上げた。
水はナツの顔面に見事に命中し、ナツは目元を手で擦りながらラクサスを睨みつける。
「何すんだよ!」
「お返しだ、クソガキ」
「じゃぁ、お返しのお返し……」
「やめろ」
水をかけようとしていたナツの頭を掴み、水中に沈める。
ナツは幼い頃から泳いでいたせいか、通常の人間よりも肺活量が多いせいか、長い潜水が可能だが、それでも予想もしない事では対処ができない。その上、水中に沈められた瞬間、一気に酸素も吐き出してしまったのだ。
ナツが、ラクサスの腕を叩いて抗議すると、頭を押さえていた手が離れた。
「ぶは!なに、すんだ、バカ!」
開いた口から、含んでしまっていた水が流れ出る。その姿が、風呂で見かけるライオンを模した吐水口に見え、ラクサスは思わず噴き出した。そのままくつくつと笑い続けるラクサスに、ナツのぶつけようとした怒りがそがれてしまうどころか、ラクサスの表情に見入っていた。
「……ずりぃ」
性格が悪い。対面してからの態度で、そう思っていたのに、やはり眩しく見える。
胸を締め付けるような感覚に、ナツは無意識に己の胸に手をあてた。
「なに見てんだよ」
ぼんやりとしていたナツの顔にラクサスの手が伸び、鼻をつまんだ。
「ナツ」
唇の動きがスローモーションに見える。名を囁いてくる声が酷く鼓膜を震わせる。
ナツは、ラクサスの手を振り払うと、一気に身体を水中に沈めた。少しずつラクサスと距離を開けながらも、ナツの混乱は収まらない。
なんだこれ、なんだこれ、なんだこれ――
頭の中は疑問符で満ちていて、胸の鼓動が煩く鳴る。水の中なのに、全身が熱を持っていくのを感じた。潜る前に酸素を取り込んだはずなのに、大して時間が経っていない今、すでに息苦しい。
顔を上げれば、ラクサスの身体と、揺れる水面にぼやけながらもラクサスの顔が見える。視線が合った気がして咄嗟に顔を俯かせたが、その視線の先には、水槽の外から窺ってくる客の目があった。
先ほどまで何ともなかったのに、羞恥心が湧いてきて、幾多の視線から逃げて海面へと勢いよく顔を出す。先ほどと同じ場所に出たはずが、ラクサスの姿がなくなっている。
「あれ?ラク……」
「ほら、さっさと上がれよ」
影と共に声がかかる。ナツが顔を上げれば、水から上がっていたラクサスが手を指し伸ばしてきていた。
「お前の相手してたら腹が減ったんだ、少し付き合え」
引き寄せられるように、ナツは差し出される手に己の手を重ねていた。手が握られ、水中から体が引き上げられる。
体が熱くて、繋がっている手はそれ以上に熱を持っていく。最初対面した時よりもラクサスの目は優しく、ナツは目が離せなかった。
「……おい、そんなに苦しかったのか?」
ラクサスの瞳が訝しんだことで、ナツはようやく我に返った。自分の頬に流れる水滴。水槽の水ではなく、瞳から零れている涙だった。
「あれ、なんだこれ……」
感情が昂って、溢れ出た涙。片手で涙を拭っていると、繋がれていた手が離された。惜しむ暇もなく、離れたばかりの手はナツの目元に触れた。視線を上げれば、至近距離にラクサスの顔があり、ナツの息がつまる。
「な、なんだよ」
ラクサスの指がナツの涙をすくい取った。
「普通だな」
呟かれたラクサスの言葉、理解できなかったのは一瞬だ。ラクサスの手が離れていくのを見つめながら、ナツは唇を引き結んだ。
そうだ、こいつは人魚を探してるんだ。
ナツの脳裏をよぎったのは、人魚の涙という言葉。ミラジェーンの話しを思い出しながら、己の胸に痛みが走っている事に気付いた。目の前にナツが居ても、ラクサスはナツに人魚を重ねて見ている。
人魚なら、大きな手で触れられるのも、キレイな目も髪に触れるのも、許されるのだ。
「もし、俺が人魚なら……」
半ば無意識な言葉だった。それでも、それ以上は続く事はない。
訝しむラクサスの瞳を見つめながら、ナツは、言葉の出ない口を閉ざしたのだった。
2011,11,06
この話の設定でラクサスは23ですから。痛い!強烈に!