手がかり
ウェンディを連れて帰ったナツ達は、待ち構えていた一人の青年と顔を合わす事になった。
「こやつはガジル、鉄竜のドラゴンスレイヤーじゃ」
ミストガンと同い年ほどの青年だ。全く愛想がない上に、耳だけではなく顔中にピアスが施されている。ナツの隣にいたウェンディが怯えたようにナツの背後に隠れた。
「仲良くしないさいね」
マカロフの言葉に、ナツはにっと笑みを浮かべてガジルへと手を差し出す。
「俺はナツ、火竜のドラゴンスレイヤーだ」
「わ、私は、ウェンディです。天竜のドラゴンスレイヤーです」
最後は聞き取れないほどに小声になりながらも、ナツの背後から顔を覗かせながらウェンディも、挨拶を付け加える。
しかし、ガジルの方からは声を発する事はない。ナツも、手を差し出したまま、動きを止めてしまった。握手を求めているのは誰が見ても分かるというのに、ガジルは興味ないとばかりに顔をそらしてしまった。
「て、てめぇ……」
ガジルの態度に、ナツの目が吊り上がる。今にも飛びかかりそうなナツに、マカロフは溜め息をついた。
「やめんか、ナツ。ガジル、お前も今日からワシらの家族になるんじゃ、仲良くしなさい」
マカロフは、未だナツの背後に隠れているウェンディへと視線を向ける。
「ウェンディ、君の部屋も用意してある。後で案内してもらいなさい」
「あ、ありがとうございます」
礼儀正しく辞儀をするウェンディに笑みを浮かべ、マカロフはミストガンを見上げる。
「後はお主に任せる。竜の力の制御と扱い方を教えてやってくれ」
ミストガンは頷くと、ナツ達へと目を向けた。
「これから、お前達にドラゴンスレイヤーの戦い方を教える。ついて来い」
部屋を出ていくミストガンに、ナツ達もついていく。
ナツが施設で暮らしてきて七年になる、施設内で知らない場所はない。暮らすようになってすぐに探検もしたのだから、細かい場所まで把握していたつもりだった。
ミストガンについて行き、たどり着いたのは、図書室でもある資料室。幼い子供が読めるような絵本から、マカロフが昔使用していた資料も置いてある。
中に入ったミストガンは、資料室の奥へと進んでいく。奥の方は照明器具が設置されておらず薄暗い。
「なぁ、ここで何するんだよ」
ドラゴンスレイヤーの力の使い方というぐらいだから、戦闘方法だと考えていた。それはナツだけではなく、すでに七竜門の記憶を告げられているウェンディとガジルも同様。
屋内以前に、本棚が密集する様な狭い場所で何をするのか。三対の目が訝しむ中、ミストガンは、最奥にたどり着くと本棚に手をかけ、横にずらした。無理やり移動させたというわけではなく、元よりそう言う作りだったのだろう。その証拠に、本棚で隠れていた場所には地下へと続く階段があった。
「足元に気を付けろ」
ミストガンが階段へと足を踏み入れながら、片手を胸辺りまで持ち上げた。天に向けられる手のひらに明かりがともる。
「火だ!」
「あなたもドラゴンスレイヤーなんですか?!」
足を止めることなく階段を下りていくミストガンの手の上で、炎が揺らめく。そのわずかな明かりでもないよりはましで、暗闇は免れている。
暗さで先が見えないから感じるだけかもしれないが、階段は永遠に続いている様な気さえする。
どこまで続くのか。問おうとナツが口を開く前にミストガンの足が止まった。暗闇に慣れ始めた瞳には、ミストガンの前に扉があるのが分かる。
ミストガンの手が扉を開け、中へと入っていく。ナツ達がそれに続いて足を踏み入れてすぐだ、設置されていた照明器具が一斉に明かりを灯した。
眩しさに目を固く閉じたナツ達は、少しずつ明かりに目を慣らしながら、目を開く。
「す、すげぇ……寮の下ってこんな風になってたのか」
ナツの口から驚きの交じった嘆声がもれる。
ナツ達がいる場所は、広い空間になっていた。施設の寮の敷地面積いっぱいまで使った、競技場と言えるだろう。
ミストガンはナツ達へと振り返り、ウェンディへと視線を向けた。
「私はドラゴンスレイヤーではない。ドラゴンスレイヤーは七竜門と同じく、七名しか存在しないんだ。そして、今現在、属性が重なっているという確認はされていない」
「それなら、どうして道具も使わずに火を出せたんですか?」
「マジックとかじゃねぇか?」
ウェンディの問いに、ナツが口を挟む。冗談を言っているのなら咎められるのだが、ナツの顔は至極真面目で、おかげで緊張は打ち消されてしまった。
脱力したように空笑いをするウェンディに、ガジルは舌打ちをもらす。
「頭おかしいんじゃねぇか?」
「あァ?!てめぇ、今何て言った!」
溜め息交じりに呟いたガジルの声に、ナツは目を吊り上げる。掴みかかろうとするナツを制するように、ウェンディの手がナツの服を引っ張った。
「喧嘩しちゃだめですよ!」
「離せ、ウェンディ!こいつに、どっちが強ぇか分からせてやる!」
「ギヒ!やってみろよ」
ウェンディではナツの力には叶わない。ナツは、ウェンディを引きずるようにガジルに掴みかかった。
至近距離で睨みあう二人に、ミストガンは咎める声を落とす。
「寄せ、今は仲間内で争っている場合ではない」
三対の目がミストガンへと向く。ミストガンの瞳は、落ち着きながらも、その奥に強さがある。ナツの手は自然とガジルから離れていた。
「続けよう」
ミストガンの言葉に、ウェンディが胸をなでおろしながら頷く。
「私は、政府の管轄下にある研究所で生みだされた、ある人間のコピーだ」
「……クローン、という事ですか?」
ウェンディの言葉に頷いたミストガンは、背負っていた鞄を降ろし、中の物を取り出した。姿を現したのは五本の杖。マカロフも杖を持っているが、それとは全く異なった造りをしている。
「この杖に七竜門の力がこめられていて、私は、その力を操る術を持っている。そして、それを与えてくれたのがイグニールだ」
ナツの目が驚愕に見開かれる。ミストガンの力の事よりも、己の父親の名が出た事の方が、ナツには衝撃が強い。
ミストガンは、杖を眺めながら続ける。
「政府がバラム同盟と裏で繋がっている事は話したな。私が生み出された理由も、ドラゴンスレイヤー生成の為だった」
新世代のドラゴンスレイヤーの候補として、ミストガンも含まれていた。その為に訓練を受け、戦う術を叩きこまれていく。そうして、戦闘人形の生活を繰り返していたミストガンと、イグニールは出会った。
元より同じ実験施設で、同様の実験だ、それまで出会わなかった方が不思議なぐらいだ。
「その時、すでにイグニールには自由などなく、常に監視の目があった」
そんな中、イグニールはタイミングをつかんで、ミストガンと何度も顔を合わせていた。監視者の目はあったが、二人が怪しむ行動に出ないために、阻まれる事はなかった。
「闇しか知らない私にとって、イグニールは初めての自由な世界だった。訓練の日々は変わらなかったが、たまに会う事が出来るイグニールの話しは、私には眩しかった」
そして、そんな日々が続いたある日、監視者を撒いたイグニールが接触してきた。その手には、幼かったミストガンの背丈を簡単に超えるほどに長さのある杖。
イグニールの切迫した雰囲気にのまれながら、ミストガンはイグニールから杖を受けとった。それと同時に、使命も。
「三名のドラゴンスレイヤーの監視及び助力。バラム同盟と政府の陰謀の阻止。そして……」
ミストガンは、言葉を切ってしまった。
訝しむ様に首をかしげる面々に、再び口を開く。
「後は、お前達が知る通りだ」
ナツがマカロフから聞いた話し同様に、ガジルとウェンディも、イグニール達の意思を聞かされたのだ。
沈黙が落ちる中、ミストガンは懐から小瓶を取り出した。蓋を開けて、ナツへと向ける。
「手を出せ」
言われるままに差し出したナツの手のひらに向けて、瓶を傾ける。中に入っていた物が、一つこぼれ落ちた。ウェンディとガジルの手にも同様に一つ落としていく。
「何だこれ?」
三人の手のひらには、飴玉のような物。指で掴んでじろじろと眺めるナツに、ミストガンが口を開く。
「エクスボールだ。これを飲めば、お前達の中で、未だ引き出されていない竜殺しの力を引き出す事が出来る」
ミストガンから吐きだされた残酷な単語に、ひゅっと喉が鳴る。
音の元へとナツが視線を落とせば、ナツの服を掴んでいるウェンディがいる。その手は小刻みに震えていた。
「大丈夫か?」
ウェンディは頷くが、力ないそれは平気とは思えない。ナツは、ミストガンへと顔を上げた。
「なぁ、続きは明日にしようぜ。ウェンディにも寮の中案内してねぇし」
「ナツさん、私は大丈夫ですよ」
ナツが気遣っているというのは分かる。しかし、言葉とは逆にウェンディの顔色は悪い。現実とはいえ、全てを受け入れるには精神が幼いのだ。
「分かった。心身ともに弱っている今の状態では、力をうまくコントロールする事も難しいだろう。訓練は明日からにする」
ミストガンの言葉に笑みを浮かべて、ナツは、俯いているウェンディの背中をポンポンと叩く。
「んじゃ、決まりだな!歓迎会だ!!」
ナツの言葉通り、地下から上がったナツ達を待っていたのは、ウェンディとガジルの歓迎会。妖精の尻尾の者たちが準備をしていたのだ。テーブルには料理やケーキが並ばれている。
料理を前に、主役であるウェンディとガジルよりも目を輝かせるナツだったが、その視界の端に見知った顔が映ると、一瞬でナツの意識はそれた。
「ルーシィ!」
ナツを狙ってきた男たちに襲われてから、ルーシィとは顔を合わせていなかった。まだ数時間しか経っていないが、理由が理由なだけに、ラクサスの口から無事だという言葉を聞いていても、不安があったのだ。
駆け寄るナツに、ルーシィも安堵したように表情を緩める。
「ナツ!良かった、無事だったのね……ミラさん達が大丈夫だって言ってたけど、心配したんだから」
ルーシィの頬には赤い筋が出来ている。襲われた時にできた傷だ。
それを見て、ナツがくしゃりと顔を歪める。
「悪い……怪我させちまって」
ルーシィは気付いたように、己の頬に触れると、苦笑した。
「これぐらいすぐに治るわよ。ていうか、ナツのせいじゃないでしょ」
ルーシィは事情を知らないだけだ。だからと言って話してしまえば巻き込むことになってしまう。
黙り込んでしまったナツに、ルーシィは続ける。
「本当、かわいすぎるって罪だわ」
「相変わらずだね」
どこか遠くを見つめるルーシィに、声をかけたのはナツではない。声のした真下へと視線を落とせば、ハッピーが魚をかじっていた。
「どういう意味かしらー」
「自意識過剰っていうんだよ、そういうの」
翼を出して飛んでいくハッピーに、ルーシィは目を吊り上げながら追いかける。それを目で追っていたナツの視線は、途中で止まった。
ルーシィとはまた違った金髪の持ち主、ラクサスが食堂を出ていく。ナツも、それを追って食堂を飛び出した。
「ラクサス!」
自室へと戻ろうとしたのだろうラクサスの足は、ナツに名を呼ばれて止まった。首をひねって顔だけで振りかえる。
「何だよ」
「俺に戦い方教えてくれ」
「あん?教えんのはあいつの仕事だろ、俺に頼るんじゃねぇよ」
ラクサスの言葉は尤もだ。しかし、ラクサスの面倒くさそうな顔にも気にすることなく、ナツは口を開く。
「ミストガンには明日から教えてもらう。今日、少しでもいいから教えてくれ」
もし、ナツがミストガンに教えを乞えば、ウェンディも、無理をして訓練を開始するだろう。
ナツは、真っすぐにラクサスを見つめる。
「時間を無駄にしたくねぇんだ」
ラクサスは小さく息をつくと、ひねっていた首を戻して、歩きだす。
呼びとめようと口を開いたナツだったが、声を発する前にラクサスの声が向けられた。
「さっさと来い、無駄にしたくねぇんだろ」
「お、おお!」
その晩にラクサスに体術などの戦法を教わり、翌日からは過酷ともいえるミストガンの訓練が続いた。エクスボールを体内に取り込んだとしても、力を引き出すだけに過ぎない。
一週間という長いと言えない期間、ナツ達は竜殺しのすべを叩きこまれた。そしてその昼、今まで訓練に加わった者以外足を踏み入れる事はなかった地下に、訪問者が来た。
「訓練中にすまない」
長い茜色の髪を揺らしながら現れたのは、妖精の尻尾で育ったエルザ。高校卒業した後は、妖精の尻尾と関連深い場所で働いている。ナツ達には、そう告げていた。しかし、実際には違う。
現れたエルザに、ナツが駆け寄った。
「な、何でここにいるんだ?」
少し慌てた様子のナツとは逆に、ミストガンは平然とエルザに歩み寄る。
「何かあったのか?」
「七竜門の情報を掴んだ。一人だけだがな」
エルザの口から出た言葉にナツは目を見張る。何故知っているのかと目で問うナツに、ミストガンは口を開いた。
「エルザは諜報員だ。七竜門の居場所を探っていた」
「その話しは後でする。それよりも今は」
得てきた情報を告げるべきだ。
大人しく口をつぐんだナツに、エルザはミストガンへと顔を向けた。
「政府の人間が出入りしている廃墟のホテルがある。調べた結果、そこに七竜門の一人が囚われていると確認できた」
エルザは、一度ナツへと視線を向けた。
「そこにいるのは火竜で間違いない」
「……父ちゃん?」
エルザが諜報員だという説明も耳にうまく入ってはいかないほどに、イグニールの情報はナツの心を大きく揺さぶった。
そして、漸くイグニールの場所を見つけることが出来ても、その場を移動されては振り出しに戻ってしまう。その前にと、明日、踏み込むことになった。
その後の訓練は、早々に切り上げた。明日の為の体力温存のためもあるのだが、ナツは落ち着かなかった。
食事を終えて、就寝時間になっても眠気は訪れない。ナツは、部屋を抜け出して、寮の屋根へと上った。座り込み、見慣れた景色をぼうっと眺める。
訓練をしてまだ一週間、付け焼刃という程度の戦術しか身についていない上に、ナツは父親であるイグニールと対峙しなければならない。
消し去ろうとしても不安は拭えるわけがないのだ。
「眠れねぇのか?」
「グレイ……」
振り返ればグレイが立っていて、グレイはナツの隣へと腰を下ろした。
「お前、よくここで泣いてたもんな」
「な、泣いてねぇよ!」
ナツの頬に赤みが差す。グレイの言っていたことが事実だったからだ。実際に、ナツは幼い頃から悲しくなった時や落ち込んだ時は、屋根に上っていた。気付かれていないと思っていた分気恥ずかしい。
「明日、行くんだってな」
グレイの言葉に、ナツはわずかに目を見開いた。だが、それはすぐに溜め息と共に諦めに変わる。
「お前も知ってたのか」
「まぁな」
七竜門に関する事を知っているのはエルザだけではなかった。政府やバラム同盟と戦う為の人員だ、エルザ同様にグレイにも役割があるのだろうか。
そこまで考えて、ナツは思考を消し去った。
勢いよく立ち上がり、身体をほぐす様に伸びをする。
「俺、もう寝るな」
屋根を降りようとグレイに背を向けたナツに、グレイは口を開く。
「ちゃんと帰ってこいよ」
ナツの足が止まった。無事に帰ってくるという事は、ナツが大きな物を失うという事なのだ。
振り返って無言で見つめてくるナツに、グレイは続ける。
「お前の家はここなんだからな。忘れんなよ」
「……ありがとな、グレイ」
屋根を降りていくナツ。
姿が見えなくなり、暫く経って、グレイは天を仰いだ。
「何で、俺には力がねぇんだよ」
ナツはまだ知らない、己が身を置いている児童養護施設である妖精の尻尾の真実。養護施設自体が、ナツを隠すための隠れみのであり、ロストチルドレンの保護施設だという事。
ロストチルドレンは、ドラゴンスレイヤーの生成時に影響を受けた可能性のある者達をさす言葉だ。
ロストチルドレンであるグレイは、実験施設の付近で生活していた。その頃にはまだ親も健在であり、退屈すぎるほどの平凡な日常を送っていたのだが、それは、あっけなく終わりを告げた。
グレイの両親を含めた、周囲に住む大人達が原因不明の死を遂げたのだ。
新型のウィルスであり、特効薬も開発されていない。そうグレイ達は告げられたが、実際には違う。強過ぎる竜の気にあてられた身体が持ちこたえられなかったのだ。
生き残ったのは、未発達の子どものみ。そして、生き残った子供たちは、政府に連れて行かれた。もちろん、実験材料として。
妖精の尻尾で暮らしている人間の中で、実験の結果が出ている人間は、ラクサスを除いては居ない。害があるわけでもなく、全く変化が訪れないのだ。
「グレイ」
名を呼ばれて、思考にはまっていたグレイは我に返った。顔をあげれば、長い髪を靡かせたエルザが立っている。
「悪いな。今日は助かった」
グレイの言葉に、エルザは眉を寄せた。納得がいかないと、目が告げている。それに、グレイは苦笑した。
グレイはナツに好意を抱いていた。だから、ナツの力になれる様にと、自ら諜報員を買って出た。エルザが伝えた火竜の情報は、グレイが掴んだものだったのだ。
「本当に、言わなくてよかったのか?」
「いいんだよ。あいつが知る必要なんかねぇだろ」
「しかし、あの情報を得るには危険だったんじゃないのか?」
グレイはエルザに応えるつもりはないようで、その場に寝転がった。見下ろしてくる星を眩しそうに見つめ、その目を閉じる。
「氷とか、いいよな」
グレイの言葉の意図が掴めずにエルザが首をかしげる。
「あいつが炎だから、もし俺に力があるんなら氷がいいって思ってよ」
「グレイ……」
エルザはグレイの隣に腰を下ろした。グレイ同様に天を仰ぎながら、口を開く。
「それなら、私は無限の鎧や剣だ。腕には自信があるからな、武器が多くあるなら私は負けないぞ」
ふふっ、と笑みをこぼすエルザに、グレイは顔を引きつらせた。
「冗談に聞こえねぇよ」
エルザは、武術や剣術の大会で、賞を総なめしているのだ。それも全ては、諜報員としての力を鍛えるため。
空気が和らぎ、談笑を始める二人。その屋根の下にはナツが立っていた。壁に背を預けた状態で、声に聞き入るように瞳を閉じている。
「マジでバカだな」
開いた瞳には薄らと涙が浮かんでいた。しかし、それが悲しみからではないのは、表情が物語っている。
ナツは、笑みを隠すことなく、その場を後にした。
決心がついているかと問われれば、頷けるわけがない。それでも、支えてくれている者達の為にも、逃げるわけにはいかないのだ。
2011,04,08