変身の応用





ルーシィと共にミラジェーンに変身の魔法を教わったナツ。未だ完全とは言えないが、能力系な分覚えが早く、早々に諦めてしまったルーシィとは逆に、ナツは練習を重ねていた。
それも全ては、悪戯の幅を増やす為。そういう事に関しての学ぶ力は凄まじい。

「変身!」

ポーズをとる必要はないのだが、ナツは手を高らかと上げ呪文のように叫んだ。
ポンっと軽い音がしてナツの身体が変化した。

「わぁ、凄いね!ナツ!」

ハッピーは目を輝かせてナツを見上げた。

「練習したかいがあったな」

嬉しそうに笑みを浮かべるナツの顔は普段と変わりないのだが、身体だけは違った。
男性には見られない丸みを帯びた身体。胸には通常ではありえないふくらみがある。腰はくびれ、おかげでズボンがずれ落ちかかっていた。

「どうだ?」

ナツは、頭の後ろに手をまわしてポーズを作った。それに、ハッピーが楽しそうに笑っている。

「本物の女の子みたいだね」

今のナツの姿は、身体だけが女性になっているのだ。
ハッピーの言葉にナツは満足そうに笑みを浮かべて、普段あまり使用しない上着を着込んだ。もちろん、豊満な胸を隠すためだ。

「よし。んじゃ、まずは……グレイのとこに行くか!」

「あいさー!」

ナツはハッピーと共に家を飛び出した。
変身で出来うる限りの悪戯を考え、その中で誰もが驚きそうな悪戯に絞ったのだった。そして、まず標的になったのがグレイ。

ナツはハッピーと共にグレイの家へと訪れた。
ルーシィの家同様に窓から侵入すれば、家に居たグレイと出くわした。

「おま、何してんだよ、人ん家で!」

ルーシィの家に不法侵入する事はあってもされる事はなかった。グレイはナツの姿に目を向いた。
しかしそんな事は関係ない。ナツは、グレイへと歩み寄った。

「お前に話しがあんだよ」

「あァ?なんだよ」

嫌そうに顔を歪めるグレイに、ナツは上着のボタンを外していく。
ナツの行動に最初は訝しんでいたグレイだったが、ナツが上着の前をくつろげると、その目は驚愕に見開かれた。

「お前、それ……」

ナツは顔を俯かせて、ゆっくりと口を開いた。

「もう隠しきれねぇから、お前にだけは話しとこうと思ってさ」

「ちょ、ちょっと待て!何がどうなって、」

動揺するグレイの声にナツは肩を震わせながら、胸を強調させるように腕を組んだ。

「グレイ、俺」

「おおおい、とにかく隠せよ!」

ナツの上着は無防備にも開きっぱなしだ。豊満な胸がむき出しで、突起が揺らめく布で見え隠れする。
顔を赤くして目をそらすグレイだが、正常な男子だ。ちらちらと胸に視線が向いている。その反応にナツはにやりと口端を吊り上げると、グレイの手を取った。

「俺、どうしたらいいかな」

グレイの手を胸に押しつける。手のひらから直接伝わる柔らかい感触にグレイは更に顔を赤らめた。ぱくぱくと口は酸素を取り込むだけで言葉を発しない。

「グレイ」

グレイの手を掴む力を込める。それが決め手となって、グレイはその場に倒れてしまった。
湯気を発しそうなほどのグレイの姿に、ナツは盛大に噴き出した。

「ぎゃはは!見たか、今のグレイ!」

「あい!ばっちりだね!」

身体をゆすったりつついたりしてみるが、グレイは全く反応しない。
暫く腹を抱えて笑っていたナツとハッピーだったが、ふとグレイに視線を落として、笑いは止まってしまった。グレイの鼻から赤い液体が流れている。

「……ど、どうしよう、ナツ」

「お、おお」

気持ち悪い。自分達が仕掛けた悪戯なのに、ナツとハッピーはドン引きだった。
後日、グレイはナツに熱い視線を送っていた。それに対してナツは顔を青ざめながらもひたすら耐えていた。全て悪戯だったのだと説明したのだが、グレイは「安心しろ。誰にも言わねぇよ」と全く信用しなかったのだ。

「もう二度と変身しねぇ」

ナツの声は恐怖で震えている。
それにハッピーはただ頷くしかできなかったのだった。




2010,11,15〜2010,12,19
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