バレンタインデー当日。この日一日世の男子が羨む位にお忙しい身である立海男子テニス部の面々。その中のとある一人の隙を私はずっと狙っていた。
お堅く、普段は近付くことすら躊躇われる彼にも、この日はわらわらと女子が集まるものだからなかなか隙がなくて困る。

やっと不器用ながら頑張った手作りチョコ(本命)を渡せるチャンスが到来したのは、放課後になってからだった。二人しかいなくなった教室で、小走りで近付く。

…が、しかし

「真田君。これ、貰って下さい」
「名前…まったく、お前もか…。浮かれた行事に参加しおって」

はい予想どんぴしゃ。真田君の小言なんて簡単に予想出来ていた。むしろ予想通り過ぎて笑えてくる。

「まあまあ。日頃の感謝がたーっぷりこもっているんだから、そう邪険にしないで欲しいなあ」
「ただの口実だろう」
「あー…あながち間違ってないかも…」

バレンタインという名の、日頃の感謝という名の、その真意はただ真田君に少しでも関わりたいが為。

「周りに流されているのだろう、たるんどるぞ」
「あ、じゃあバレンタインでも何でもなくて、差し入れってことで。毎日部活お疲れ様。それじゃあ」

せめて真田君が苦手そうな可愛らしい柄を避けて選んだ、シンプルな真っ白い紙袋を机の上に若干無造作に置いてから、急いで教室を後にした。あれ以上話していたら突き返される可能性だって出てこないとも限らない。

それにしても、今日も相変わらず真田君は厳しい。それにめげない自分はなかなか偉いと思う。自画自賛。
それもこれも好き所以だね。この溢れんばかりの愛がなければ、きっと真田君に対してこんな風に振る舞えてはいないだろう。愛って偉大。

でもって、改めて実感。

「真田君大好きだー」

周囲に人がいるかの確認さえ忘れて、思わずそう呟く位には愛があるのです。



スイートピュアボーイ




(甘い私と苦い君、足して2で割って丁度いい)







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副部長は何だかんだ言いつつも貰ったチョコはきちんと食べるし、お返しもすると思います。