「よっしゃあ!侑士にぎゃふんと言わせたる!」

俺がこう意気込むのには正当な理由がある。それは従兄弟との"誕生日プレゼントどっちが多く貰えるか勝負"以外のなにもんでもない。自分の誕生日にいくつプレゼントを貰ったか覚えといて、(侑士よりも後にある)俺の誕生日にお互い教え合う。これは俺らの物心ついた頃からの毎年の恒例行事となっとったりする。
…そんでここ数年は俺の連敗続き。ただし!何年か前、侑士がまだ大阪におって俺と同じ小学校にいた頃なんかは、俺の方が多かった。なのに氷帝に入ってからの侑士のモテっぷりっちゅーたら…おっそろしい位や。白石くらいモテるんちゃう?とたまに本気で思う(それでもやっぱ白石のがモテとるけど)。

せやけど今年は自信がある。部活の功績のおかげなんか、今年は確実に今までよりもプレゼントの数が大分多い。これならきっと侑士に勝てる!そう思ったら帰路につく足も弾むっちゅー話や。

「侑士の悔しがる顔が目に浮かぶわ〜」

左手に持った紙袋。そん中一杯一杯のプレゼントに視線を落とした途端、階段を踏み外しそうになる。我ながら浮かれ過ぎとったわ…

態勢を崩した勢いで五段分を一気に飛び降りる羽目になって、そのせいで足がジーンと痺れる…まあ踏み外して怪我するよりはマシやな。

「うん、今日の俺ついとるわ……ん?」

痺れに閉じていた目を開けて顔を上げると、階段を降りてすぐにある昇降口が視界に入った。…正しく言うと視界に入ったのは昇降口にいた誰か。制服から女子と分かるだけで、顔には影がかかっとって誰なのか分からん。…けど、俺を見とるような…あ、階段踏み外しそうになったの見られたんやろか。……それめっちゃ恥ずいやん…
「見られてませんよーに」と心の中で呟きながら真っ直ぐ歩きだすと、その誰かはすぐに踵を返し走り去った。誰やったんやろ…


少し考えつつも自分の下駄箱の前まで来た時、そう言えばさっきの誰かもこの辺にいたなあと思い出した。もしかして下駄箱にプレゼント入れてたとか?まっさかなあ…

「…まさか…や…」

数秒前まさかと思っていたことが現実となって目の前にある。
俺はそれを確認すると、すぐにそのラッピングされた包みを紙袋に入れ、全速力で駆け出した。勿論、さっきの誰かを追いかけるために。



校門を出てすぐ左右を交互に見ると、お目当ての背中を発見した。そこから追いつくのはクラスメイトから笑いをとるより簡単やった。

「ちょっ…待ってや!」

俺に気付いて走り出すも、すぐに肩をつかみ此方を振り向かせた。

「…プレゼント有り難う、名前」

プレゼントを入れていた人物は、名前やった。

「ちゅーか…俺に本気で走らすんやから…名前は凄いなあ」
「えーと…凄いことではないと思うけど…」
「ええの。名前は凄い!明確な事実やで?」
「あはは…」

名前は俺が三年間片想いし続けてきた人。三年間同じクラスやったけど、プレゼントを貰ったんはこれが初めてやから素直に嬉しい。…そりゃ好きな子から貰うんや、嬉しくないわけないやろ。

…正直言うと、あの包みを見た瞬間なんとなく名前だって気がした。そうやったらええな〜の願望もあったけど、気付いたら本気で走り始めていた。…名前くらいなら本気で走らんでも追いつくのに、

「それだけ俺も本気、ってことやな〜」
「え?どう言うこと?」

どうして今年はくれたのか分からんけど、"プレゼントをくれた"その事実が何よりも嬉しかった。

「ははっ気にせんといて。……それより名前」
「何?」
「来年も楽しみにしとるで!」

きっと来年も名前はプレゼントをくれる、はず。



本気な謙也君




「来年は手渡し希望で!」





……………………

企画"謙也くんのお誕生日"様に提出