好きな人の誕生日を一番にお祝いしたいと思うのは別に不思議じゃないと思う
でもそれが叶わないなんてこと十二分に承知している
だって真田君は、テニス部の副部長なんだもん
幸村君でしょ、それに柳君とか赤也君
誰にしろ確実に、日付が変わると共にメールを送るはず
あ、電話かも
どっちにしたって一番にお祝い出来ないことは明らか

だったらね、考えを変えてみればいいんだ
最初が駄目なら最後

友達にだったら可愛いメールを送るけど、真田君にそんなの送ったら怒られそうだから無し
色んな文面を考えて、結局はただ一文"おめでとう"とだけ書いたメールにした
シンプル過ぎるかな、女の子らしくないかな、素っ気ないかな、なんて思うところは沢山あったけど最後には諦めた
だってもう他に思い付かない



5月21日…23:59
送信、っと
きっと私が最後のお祝いかな

さて寝ようっと…あ、電話だ


真田…君?



「も、もしもし」
「夜分遅くにすまない」
「ううん、大丈夫」

まさか電話がくるなんて思ってもいないから尋常じゃなくドキドキする
不意打ち過ぎるでしょ

「その…だな……メール…感謝する」
「えっと…どういたしまして」

沈黙。だって話すことないし
いや、話したいことは沢山あるけど切り出せないもん
そんな、さ、私は好きな人と気軽に話せるタイプではないんだよ


「…祝ってもらえないかと思った」
「え?」

聞き間違い?
何か勘違いしちゃいそうな言葉が聞こえた気がする

「…お前に祝ってもらえないのは少々寂しいと思ってな」

もう勘違いしてもいいかな?
と言うか、もうしてる
そんな嬉しい言葉が聞けるなんて

「本当は一番にお祝いしたかったけど、たぶん無理だなぁ…って思ったの。だから逆に一番最後にしてみたんだ」

それに、そしたらフォルダの一番上に残るから

「そうか、考えてくれたのだな……有り難う。あ、で、では遅いからそろそろ切る。ではな」
「うん、お休み」


慌てた真田君の声が凄く新鮮
あんなメールしか考えられなかったけど、喜んでもらえたなら結果オーライ

最初だろうが最後だろうが一番には変わりないし
きっと気持ちがあれば大丈夫なんだね



今日の終わりに





発想の逆転も大切だよね





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05/21副部長おめでとう!15歳だね
主催企画"たるんどらん!"に提出