※S2E5のネタバレ








 さてさて、困難続きの船内ではまた大変なことが起きていた。ウイルス性の病気であるヌルヌルにかかってしまったコランは滑る滑る、滑りまくる。それはもう物理的に滑りまくるのだ。そして滑りまくったコランに、運悪くぶつかってしまう名前。コランに続き、全身ヌルヌルになった名前と、そのまま動かなくなってしまったシロー。最初からクライマックスのようであった。

「シローどうしたの? タオル持ってきてくれたんだよね?」
「…ん、そうだ!」

 シローの低いとも高いともいえない丁度いいその声がラウンジに響く。目を丸くしていたシローは不意をつかれたような声だった。少しだけ震えている指先でふわふわのタオルを名前の身体に寄せる。白いタオルはコランから分泌されたヌルヌルで汚れていった。シローは何かに焦っているようであったが、名前は全く何のことか分からなかった。それもそのはず、自分の最愛の人が謎のぬるぬるした液体で全身びちょびちょのぬるぬるのべとべとになっていて、健全な成人男性であれば何か違うものに見えてしまっても仕方ない。シローはできるだけ見ないふりをして名前の身体を拭いてあげていた。

「ん、シロー。もういいよ」
「いや、まだ…」

 シローが気を逸らすためにコランの寝相を頭に思い浮かべている所だった。ふに、と柔らかい感触がシローの指先に広がる。名前のそれは人よりあるという程ではなかったが、人並みにはあった。男には与えられていない柔らかいその感覚にシローは大パニックであった。静かに視線だけを彼女に向ける。真っ赤な顔でシローの指先から瞳までをゆっくり見上げていた。健全な成人男性であり、騎士でもある彼は仕事が絶えず続いていた。休憩時間は身体を休めたりリラックスすることが多かったが、その休憩時間だってほぼ無いようなもの。身体のなかのモノが溜まっていくのは仕方がないことだった。それ以上に、大好きな名前とひとつ屋根の下にいるのに、一夜を過ごせないというのもシローの身体を鈍らせる原因となっていた。名前に負けないくらいに真っ赤になっていたシローはハッとすると「すまない!」と慌てながら手をひっこめる。ひっこめる時に反動でついうっかり押し潰してしまった柔らかい名前の胸にごくり、と喉が鳴る。
 シローはもう限界だった。散々我慢していたものは、柔らかい胸とヌルヌルに濡れたことで少し透けた下着、そして顔を赤らめて眉を下げ、零れ落ちそうなほど涙を溜めた熱い瞳。「シロー…」と優しく、愛おしく自分の名前を呼ぶ声。その全てによって今までの努力はガラガラと音を立てて崩れ落ちていった。

「…名前、ダメだ。離れてくれ」
「えっ、シロー…?」

 震える掌を握りしめたシローは、名前の小さな肩に手を置いた。シローがこれ以上力を入れれば壊れてしまいそうなくらい小さくて細い肩だった。
 シローは強い男だった。大好きな人を困らせて泣かせたくない。愛しているから、きちんとしたところで、きちんとした時にその身体を抱きたかった。

「このままお前といると、襲ってしまいそうで…」
「シロー…」

 名前はというと、今にも襲いかかってきそうな大きな獅子を見つめていた。シローになら何をされてもいい、そう思っていた。しかし、シローは自分を想って、理性を抑えている。そんなシローが愛おしくてたまらなかった。名前はシローの手からタオルを奪うと、彼の赤い頬にキスをした。

「な、な、こら、名前! な、何してるんだ!」
「私のために頑張ってくれるシローへのご褒美、でいい?」

 真っ赤なシローを横目に、そのヌルヌルを素早く拭いてしまおうと手を急がせるのであった。





シローにこらっ!て言われたいし、ヌルヌルって言われたら……ね………

2018/03/23
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