Way back



 僕が僕の彼女を可愛らしい店の前で、見知らぬ大人な男と並んでいるのを見たのは丁度僕が産まれてきたことを祝福する日だった。そんな最高な日に最高な彼女の最悪なシーンに巡り会ってしまうなんて僕も相当、運が悪いらしい。彼女は僕より年上で、すこしだけスカートを短くして高校の制服に身を包んでいる。高校生になった叶はやっぱり僕よりも大人びて見える。そんな彼女とお似合いだと言わんばかりのすてきな男子高校生と一緒に店から出てきた。二人は仲よさそうに笑いあっている。そんな様子にやっぱり僕はむかむかして、どうしようもなくなってその場を飛び出した。彼女の腕を掴むと、驚いたように目を丸くしていた。

「叶、この子が例の?」
「そうそう。」

 なんだかむかっとする。叶の腕を握る僕の力が強くなる。この男が僕のことを”この子”なんて言っているのが自然と耳にはいり、子供扱いされていると気づかぬうちに思っていたのかもしれない。僕は彼女の腕を思い切り引き寄せて子供みたいなキスをした。ただ押し付けるだけのキス。叶は目を丸くしていたし、向こうの男も驚いているようだった。

「・・・じゃあ、俺帰るから。頑張って。」
「あ、え、うん。」

 叶、またそっち向くの?僕はわがままを目で訴えてから、男の姿が見えなくなった時に手を繋ぎ、歩き始めた。なんであんなところに男といたの?あの男は誰?やっぱり僕は叶から見たら子供なんでしょう?不安で後ろ向きなことばかり頭に浮かぶ。僕はそれでも彼女にたくさんの事を尋ねることが出来ず、口を閉じたまま歩いていた。僕は大人の男でもないしエスコートだってまだまだかもしれないけど、僕だって叶を守ろうとすれば喧嘩だって勝てるしなんだってできるよ。覚悟が違うんだよあんな男とは。しかし僕の口をついた言葉は、あまりにもマヌケな言葉だった。

「嫌いに、ならないで・・・。」
「輝気・・・。」

 そんな同情するかのような目で見ないでくれ。そんなことを期待してあんな弱々しいことを言ったつもりじゃないんだ。けれど、どんなに弱々しくても僕がそう思っているのは本心だ。嫉妬させるようなことしないで。でもそんなことを思っている僕のことを嫌いにならないで。なんてわがままなんだろう。叶はゆっくりと綺麗なその唇を上下に開いた。

「輝気・・・。」
「う、うん・・・。」
「お誕生日おめでとう!」

 笑顔で目の前に出されたそれに書いてある文字は先ほど事件が起きた店のロゴ。もしかして、誕生日プレゼントを・・・?

「あいつに手伝ってもらったんだ。・・・輝気が初めての彼氏だから、男の子ってどんなの欲しいかわかんなくて・・・。」
「叶・・・。」

 僕はプレゼントごと叶を抱き寄せた。僕は本当に彼女のことが大好きらしく、未だに心臓がどきどきと波打って痛いくらいだ。髪から香る叶の香りは僕だけのもの。叶は嬉しそうに声を高くして喋った。

「でも、怒らせちゃった。ごめんね!でも私は、どんな輝気でも大好きなんだよ。嫌いになんてなれない!無理!」
「もう・・・!」

 嬉しい言葉に照れ隠しが上手くできない。本当にどこまで行っても最高の彼女だ。僕は本当に叶が好き。次は一緒に誕生日プレゼントを買いに行こう。でも結局は、神様から叶という最高の贈り物を貰ったから、もうなんでもいいや!




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