∵勝てねえ


今俺は、人生最大のピンチに追い込まれている
俺が彼女を怒らせてしまって、ちくり、と俺には刺さるようにしか感じないビンタが、とてつもなく重く感じた

「お!桐生チャ〜ン!!!そっちから電話なんて珍しいやないか!どうしたん?」
「に、兄さん…俺…ハルに許してもらえないかもです…」
「なんや?喧嘩でもしたんか?女は抱き締めればだいじょ」

ピッ

俺は頭を抱えながら電話を切った
こうなったら力也に相談するしかねえ!
なんだかんだ言って、あいつはハルとも仲いいし、いろいろ対応分かるはずだ!

「兄貴?どうしたんですか?」
「ハルと喧嘩した…」
「ええっ!?兄貴とハル姐さんが喧嘩…珍しいことも起こるんスね…」

力也が驚くほど俺達は喧嘩のしない仲のいい恋人同士だった
まあ、ハルもたまってたんだろう…なんなら言ってくれればよかったのに…

「力也…俺ほんとどうしたらいいか…」
「あ、兄貴!大丈夫っすよ!ハル姐さん、兄貴にゾッコンですから、メロメロに酔わせ」

ピッ

俺はそういうのが聞きたいんじゃねえ!
どいつもこいつも何を考えてるんだ…俺は真剣に悩んでんだ…
俺はため息をつきながらハルがいるだろうアサガオ前の浜辺に歩いた
こんな解決策もない俺でも、大丈夫だろうか…

海を眺めていたハルは俺が横に座ったと気づき、体育座りして顔を隠した

「ハル…あのな…」
『ごめん…』
「ん…?」
『ぜ、全部聞こえてた…』

その瞬間、俺は彼女を見たまま固まった
そんな俺に気づいて彼女は言う

『全部じゃないけど…私、一馬にそんなに悩ませてたんだって思って…』

小声でごめん、ともう一度言う彼女を抱き締めた
俺こそごめんな、許してくれ、と言うと彼女は腕の中で頷いた

『あのね、私考えたの』
「なんだ?」
『小さく刻んで料理すれば、ピーマンだって気づかないで食べれるかもって!』





(な、なに残してんの?一馬)
(こいつは嫌いなんだ)
(なんで!大人なんだから食べなさいよ!)
(無理だ! )
(バカ!死ぬまでピーマン食べれなくても知らない!!)
(バチン)





彼女のために一生懸命ピーマンと格闘する桐生さんとかないですかね


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