ピンク……に、似合いませんけどっ
「おい名前」
「は、はいいっ!」
え、えれんくん!
彼の金色の瞳に見つめられただけで心臓がドキドキバクバク。
私なんて眼中にもないだろう彼がなんの用事だろうか。ま、まさか、毎日してる視線のストーキングがバレてしまったのだろうか?
エレンくんの硬そうな掌が私の耳横にある髪をサラ、と拾った。心臓が爆発しそうだ。
「耳飾り、どうしたんだ?」
「えっ」
髪を分けて耳に触れたエレンくんの指。ちょっといやらしい。
というよりエレンくんはなぜこの耳飾りに気づいたのだろう。流石に物理特訓の時は外していたけど。
昨夜、クリスタにこの可愛らしい耳飾りを貰って、なんだか自分が可愛くなった気分でいた。もしかしたらエレンくんが気づいてくれるかも、なんて期待をしながら。
しかし気づいてくれたは気づいてくれたで、どうすればいいのだろう。エレンくんの質問の本当の意味がわからない。
「えと・・・似合いませんか?ピンク・・・。」
「は?そんな事言ってねえよ。むしろ似合ってるだろ。」
「えっ!」
顔に血液が上るのがわかる。
さらっとそんな恥ずかしい事を言うなんて・・・。エレンくんらしいと言われたらそれまでだけど・・・。
「あ、ありがとう、ございます・・・。」
「おう。いつもそういうのしてないだろ?だからさ・・・。」
きっと私は女っ気がなくて平凡だから、不釣合いだよなんて気を使ってくれるんだろう。
少し落ち込みながら、エレンくんの言葉に相槌を打った。
「なんか今日は雰囲気違うなって思ったらそれかって思って。」
「・・・だめだった?」
「何が?」
「雰囲気違うの・・・。」
「なんで?」
「え?」
「え?」
「・・・え?」
「はあ?」
雰囲気違うのがだめじゃないなら、一体何がだめだったのだろうか。
聞き返すと、エレンくんが気分を悪くしてしまったようで、むっとしてしまった。ヤバイ。嫌われちゃう。
「あ、う、ごめんなさい・・・。」
「だめなんじゃなくて、そういう名前もいいなって事だよ。」
「へ」
マヌケな声が出てしまう。
だってそんな・・・。立て続けにエレンくんに真面目な顔をしてそんな事を言われたら、期待してしまう。
「名前って可愛いからな。」
その言葉に何の意味が含まれているのかはわからなかったけど、その言葉とエレンくんの優しい表情に何も言えなくて、エレンくんの後姿を見送った。
エレンくんって、なんでこんなに私の心を乱すのが得意なのかな・・・。
ぎゅっ、と締め付けられるような切なさを感じる心臓を握り締めた。
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