皮肉すらそのまま自分に返ってくるという不条理さ。
「ごめん・・・」
『え・・・?』
俺は名前から目を逸らした
『な、なに、ごめんって・・・』
名前は恥ずかしさから顔を赤くし、困惑していた
『ベルトルト、今、私に、キスした・・・?』
俺が頷くと、名前は涙を浮かべた
「やめて、泣かないでくれよ・・・僕は君を泣かせたいんじゃない・・・なのに、ごめん・・・」
『なんで謝るの・・・?』
「君のこと、大切だと思ってる・・・」
『私もだよ?』
名前は声を震わせていた
涙目で見上げてくる彼女に、俺は心が押しつぶされそうだった
「そうだろ?・・・名前も僕も、お互い大事だろう?だから、そんな名前の気持ちを、僕の事で裏切るようなことしてごめん」
謝って逃げればよかった。そして名前も、俺のことを殴りでもすればよかった
何してるんだろう、俺・・・
「だから、ごめんね・・・でも、僕は名前の事好きだから」
『私も好きだよ!でも、ベルトルトと同じじゃない・・・でも、離れたくない!友達でいたいのに!』
名前は優しい
こんな俺にキスされても、俺と話したいと思ってる
俺は目元が熱くなった
「・・・ほんとに、ごめん・・・僕、寝るね・・・」
寝れるわけない
『・・・ま、待ってよ・・・!』
俺は名前の声に答えずに走った
もう涙が止まらなかった
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