「ごめんな、迷惑かけて・・・」 「全然!あんたたちのお蔭で慣れてるからね!」 「はは、ねえちゃんには勝てねえな」
堂島組の事務所で、堂島組長さんの帰りを待つ ダイゴくんが、驚くほど離してくれなくて困っているからだ 堂島さんが来るまで、私の我儘で彰と一緒にいる 普通なら彰みたいな人がくる場所ではないらしいけど、私はよく分からないうえに、被害者なので、そんなの無視だ
「ダイゴくん偉いね、泣かなかったね」 「泣くわけねーだろ!なめんなよ?!」 「はいはい」
私の太ももの上に頭を置いて、大人しく私に頭を撫でられている 彰はそれを見るたびに、苦笑いをした
「そういえば、友達はいいのか?」 「うん、なんか巻き込まれたくなかったみたいで」 「は?そんなんで友達かよ」 「あの子いつもそうなのよ、正直な子だし、私からもそうしてって言ってる」 「へー、そう」
彰は納得いかなそうにして、曖昧にそう言った
「そういえば、一馬は?元気にしてる?」 「ああ、あいつは変わんねーよ。相変わらずよくわかんねえセンスの服着たりするよ」 「あはは、変わんないんだね!」
▽
「またな、名前・・・」 「うん、またね」
眠そうなダイゴくんに手を振って、私と彰は歩く 堂島さんも怖そうな顔で謝るので、私は早く退散しようと、すぐに帰り始めた
「・・・今日はホントに悪かったな、うちのやつらが」 「彰のせいじゃないよ、大丈夫」 「ねえちゃん・・・」
私は彰に微笑んで、前を向くと、汗をかきながら走ってくる男がいた なんだかその姿には、とても見覚えがあって、私は目を凝らした 「あ」と気づいたころには、私はその人にタックルされて コンクリートに頭をぶつける所を、視界が逆転して、目の前に短い髪の男が広がった
「一馬!」
一馬は息を切らしながら、私の肩を掴んでいた そうして私を抱きしめると、「名前・・・」と私の名前を呟いた 締め付けるように抱きしめられた後、一馬の手や顔に血がついているのを見て、目を丸くした
「ど、どうしたのそれ!怪我したの?」 「喧嘩してきたんだろ、な?桐生」 「あ、ああ・・・」
タバコを吸い始めていた彰が一馬を見て、ため息をついた
「今日は桐生の家にでも泊まればいいさ」 「は?おい錦・・・!」 「一馬、いいの?私、行く先がなくて・・・」
お金もないし・・・と呟くと、俺の家は狭い、と反論した 一馬といたいな、という私の気持ちが筒抜けなのか、彰は一馬を説得して、泊まれることになった
「じゃ、あとはよろしく!」 「あ、うん。またね!」
彰は用事があるんだとか言って、カッコイイ車で颯爽とどこかへ行ってしまった |