「ごめんな、迷惑かけて・・・」
「全然!あんたたちのお蔭で慣れてるからね!」
「はは、ねえちゃんには勝てねえな」

堂島組の事務所で、堂島組長さんの帰りを待つ
ダイゴくんが、驚くほど離してくれなくて困っているからだ
堂島さんが来るまで、私の我儘で彰と一緒にいる
普通なら彰みたいな人がくる場所ではないらしいけど、私はよく分からないうえに、被害者なので、そんなの無視だ

「ダイゴくん偉いね、泣かなかったね」
「泣くわけねーだろ!なめんなよ?!」
「はいはい」

私の太ももの上に頭を置いて、大人しく私に頭を撫でられている
彰はそれを見るたびに、苦笑いをした

「そういえば、友達はいいのか?」
「うん、なんか巻き込まれたくなかったみたいで」
「は?そんなんで友達かよ」
「あの子いつもそうなのよ、正直な子だし、私からもそうしてって言ってる」
「へー、そう」

彰は納得いかなそうにして、曖昧にそう言った

「そういえば、一馬は?元気にしてる?」
「ああ、あいつは変わんねーよ。相変わらずよくわかんねえセンスの服着たりするよ」
「あはは、変わんないんだね!」










「またな、名前・・・」
「うん、またね」

眠そうなダイゴくんに手を振って、私と彰は歩く
堂島さんも怖そうな顔で謝るので、私は早く退散しようと、すぐに帰り始めた

「・・・今日はホントに悪かったな、うちのやつらが」
「彰のせいじゃないよ、大丈夫」
「ねえちゃん・・・」

私は彰に微笑んで、前を向くと、汗をかきながら走ってくる男がいた
なんだかその姿には、とても見覚えがあって、私は目を凝らした
「あ」と気づいたころには、私はその人にタックルされて
コンクリートに頭をぶつける所を、視界が逆転して、目の前に短い髪の男が広がった

「一馬!」

一馬は息を切らしながら、私の肩を掴んでいた
そうして私を抱きしめると、「名前・・・」と私の名前を呟いた
締め付けるように抱きしめられた後、一馬の手や顔に血がついているのを見て、目を丸くした

「ど、どうしたのそれ!怪我したの?」
「喧嘩してきたんだろ、な?桐生」
「あ、ああ・・・」

タバコを吸い始めていた彰が一馬を見て、ため息をついた

「今日は桐生の家にでも泊まればいいさ」
「は?おい錦・・・!」
「一馬、いいの?私、行く先がなくて・・・」

お金もないし・・・と呟くと、俺の家は狭い、と反論した
一馬といたいな、という私の気持ちが筒抜けなのか、彰は一馬を説得して、泊まれることになった

「じゃ、あとはよろしく!」
「あ、うん。またね!」

彰は用事があるんだとか言って、カッコイイ車で颯爽とどこかへ行ってしまった
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