「ハッピーハッピーバレンタインデイ」

 さーっ、やって参りました始まりましたっ!! 本日司会を努めさせていただきますのは、千葉県立総北高校自転車競技部の超絶イケメン、歩けば誰もが振り向いてまう! 浪速のスピードマン、鳴子章吉や! はにかんだ時のきらりと光る八重歯が特徴やで! おおきに、おおきに。ギャラリーのみんなもええカンジにテンションあがってこの鳴子章吉の晴れ舞台としては充分すぎる出しモンやで! さて、今日はなんの日か知っとるか? 勿論、2月14日のバレンタインや!! もーーーワイは1週間前からドキドキウズウズして落ち着かんかったけど、それはなぁモチのロンのロンのモチ、ワイには彼女がおるからや!
 話すと長くなるかもしれんが超絶カワイイ、ワイの天使や! その笑顔の破壊力といったら、もうタイヘンやで、ホンマに地球を作り上げたんは神様なんか? ってくらいカワイくてタイヘンなんや! もう言ってること訳分からんな、いや、わかっとるで! 訳分からんことぐらいわかっとる!え? そんなことええから本題に入れ? せっかちやなぁ、しゃーない。なんでワイがこんなにワクワクドキドキハッピーなのか教えたろやないかい!

「鳴子くん、おはよう!」
「おっはよーー! 名字さん!」
「今日も元気だね!」
「せやろ! 朝イチに名字さん見れてホンマ嬉しくてつい元気になってまうわーっ!」

 この、この天使が! ワイの彼女!! ほんっまかわええー…… ってしもた、そうやないな。このバレンタインデーという輝かしい日に、ワイの彼女名字さんがチョコを用意してないわけがない! 興味ないとか言っといて意外とちゃんと作ってくれるような所が好きなんや! って脱線しすぎや!
 ワイは名字さんと二人で並んで学校に向かう。ゆうても、二人で並んでるのは名字さんが最寄り駅までつく間だけや。チョコを貰うならこの時しかないで。ちょっとソワソワしながら歩いていたが、そのまま駅について「じゃあまた学校でね、鳴子くん」と笑顔で手を振られた。……まあ、今日という1日はまだまだ始まったばっかりやで! 漢(オトコ)、鳴子章吉。焦らずいこか。


 とまあ焦らずとはいったもののソワソワしてまうわなぁ。この日をどれだけ待ち望んだかわからんで。名字さんの手料理が食べれる日なんてこの日くらいしかないんやで! 大袈裟? ンなわけあるかい! あんまり早起きじゃない名字さんがいつも弁当作ってくれるわけナイやろ! いや作って欲しいけども! でもアカン、名字さんに無理なんかさせられへん。ただでさえ部活が忙しいんや、ワガママいって放課後残ってもらってるのもある。いや、そりゃ毎日名字さんの愛妻弁当食べたいけどな?
 愛妻弁当で思い出したけど、お昼はみんなメシを持ち寄ったりしてるし、このタイミングやろ、チョコは! と意気込んで名字さんのクラスの前をウロチョロ。あっ、出てきた!

「名字さん!」
「鳴子くん、どうしたの?」
「いっいやあ、名字さんの顔が見たなって…」
「えっ、あ… で、でもごめんね、お昼は友達と食べるから…」
「あっ。そ、そやな。いつもそうしてるしなぁ。いや、気にせんといて! また放課後なぁ!」
「うん、じゃあね。」

 …このタイミングでもなかったか。いや、何言ってんねん。まだまだ勝負はこれからやで! 必ず、名字さんの愛情こもったチョコレートを獲得してみせるで!!!


 とはいったものの、夕日も落ちてすっかり夜になってしもた。もしかしたら、ホンマは用意してないんかも…。いや、そうや、勝手に期待してたんはワイや…。バレンタインデーはなかったんかもしれん。ちょい落ち込み気味で自転車漕いでたけど、駅におる名字さん見つけてそんなんなかったみたいにパワーが溢れてきた。ほんま、ワイって単純やな。
 そのまま名字さんと他愛もない話をする。今日の国語の先生がズッコケたこととか、いろんなことばっかやけど、ついには名字さんの家の前までついてしもた。

「…じゃあ、またな。名字さん。」
「うん、また明日ね!」

 ここや! とおもったタイミングもササーっとすぐに家に入った名字さんの後ろ姿で跡形もなく消え去った。…今日という日はなかったんや…。バレンタインデーなんてモンはなかったんや…。とぼとぼと歩き、自転車に跨ろうとしたその時だった。

「鳴子くん、まってーー!」
「…え、名字さん?」

 小走りで駆けてきた名字の手の中には、紙袋が1つ。まっま、ままま、まさ、まさかな、まさか、それはっっっ!!!

「そ、それって…!!」
「はい、ハッピーバレンタイン! 渡すのすっかり忘れてたよ!」
「あ、あ、ありがと……」
「手作りだし、ちょっとヘンかもしれないけど…」

 て、てって、手作り……! チロルチョコとかじゃなくてよかった!! 今、ホンマにそう思う!!! ワイは「ヨッシャーーーー!!!!」ってつい口から出て、そりゃもうお月様に届くんじゃないかってくらい飛び上がった。目をまんまるにしてる名字さんを抱きしめてくるくるまわる。いやー、ホンマ嬉しい!

「メッッチャ嬉しい! 今日1日、ずっと貰えないかソワソワしとったんや! よかったぁ、ホンマに、よかったーー!!」
「えっ…ずっと、待ってたの…?」

 …あーっ、もうワイは! カッコつかん!! 恥ずかしいわ! でもそんな赤い顔で見つめられたらホンマのこと言うしかないやろ。

「そや、だからホンマに嬉しい。ありがとな、名字さん」
「そんなに喜んでもらえるとは思ってなくて… よかったぁ…」
「喜ぶに決まっとる! 大好きな女の子からもらうバレンタインチョコ、嬉しくないわけないやろー!」

 ギュッと名字さんを抱きしめて、ルンルン気分で帰宅する。家に帰ってドキドキと高揚した胸で箱を開けると、そのには可愛らしいピンクの手紙が。

 “ 鳴子くん、大好きだよ ”

 小さく書かれた可愛らしい文字は、ワイの心臓を鷲掴みにするには充分やった。もう…、どんだけワイのことメロメロにすればええねん…!
 
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