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「あー、ひまー!」

事務所内に響くのは俺の心の叫び。

「…かなめうるさーい」
「んだよ、だってそうだろ? 依頼は全く来ないし、孝さんは何か知らないけどまたいないし、ルーは珍しくメガネかけて本なんか読んじゃってるし」

似合うでしょ、なんてどや顔されると張り倒したくなる。

「ダテメガネも伊達じゃないのよー」

さらに寒いギャグなんか言われたもんだから、すかさずメガネを取り上げた。

「てゆーか、何でそんな知的男子ぶってんの?」
「んー、暑いの苦手だから。いわゆる夏バテ? 性欲も湧かないんだよねー」

僕流の夏の過ごし方だよ、と爽やかな笑顔。
エセ爽やか青年め。

「どうせ本つってもエロ本だっしょー?」
「違うよ、失礼な。官能小説だってば」

文学的に言えばそうなのかもしれないけど俺からしたら一緒なようなもんだ。
またまたどや顔のルーに自然と漏れるため息。

「はあ…何か面白いことねぇかなー」

誰ともなく呟いたつまらない独り言にルーはのんびりと反応した。

「…あっ。そういえば仕事あるよ、やる?」

俺の目はただいま絶賛まん丸中。

「ばかだなあ。仕事はなにも依頼を解決するだけじゃないのだよ、かなめくん」

ワトソンくん風に言われても。
俺は今までそれ以外の仕事をしたことないし。

「かなめ最初うち入るとき言ってたじゃん」
「覚えてない。焦らすなよ、なんなの? 面白いの?」
「ん、スリリングだよ」

スリリングとくれば面白いに決まってる。
俺はわくわくとルーの言葉を待つ。

「…薬の調達」

にやっと笑ったルーに俺は抱きついた。






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