アベリンジ


昔から面白いことが大好きな俺。
ネタがあるなら進んで事を起こす相当な悪戯っ子だと自他ともに認めてる。
とある日、俺は楽しそうな遊びを思い付いた。

「かなめ緊張するう。けど明日超楽しみー」
「俺も楽しみだよ。明日20時に迎え行くね」

なんて。
女のフリしてコミュニティサイトで男釣るわけ。
いざ会えばもちろんキレられるけどその時のわなわなした顔がすっげえ面白くて。
ウマイこと写メ撮れたら友達と大爆笑。

今日の獲物は今までで一番まともそうな奴。
やっぱりというか獲物には変人が多くて変態話に付き合わされたり、オナニーのお手伝いさせられたり、女に成りすましてアポを取りつけるのもなかなか簡単じゃなかった。
でも今回の獲物はそれがなかった。手間もなく楽々と釣れた。
なんて哀れなやつ、と薄ら笑いを浮かべながら獲物の迎えを待った。

「‥かなめちゃ、ん?」
「はい、かなめですう」

そうその顔最高。
俺はオカマ声で煽りながら写メを撮る。

「孝さんだっけ。真面目そ。こんなとこで出会い探さなくてもいいのに。あーまぢウケる」

リーマン顔なお兄さんはショックのせいか硬直して何も言わない。
撮れた写メをオカズに思う存分爆笑する俺をじっと見ている。
いい写真も撮れたし満足して車を降りようとしたとき、

「おっいい男じゃん。ラッキー」

え、誰。
声がした後部座席を慌てて振り返ると見知らぬ金髪男。

「とりあえずかなめちゃん? ああ、かなめ君か、」

突然後ろから金髪男に羽交い締めにされた。
有無も言わさず口に何かを布のようなものを当てられて、暴れる身体と俺の意思とは反対にどんどん意識が薄れていった。




「‥あ、」

何だろう。眩しい。
身体が動かない。頭がぼやけて足が冷えてる。

「ハローかなめ君。おはよう、分かるかな。僕、車にいたんだけど」

覗き込んでくる金髪男の言葉が意味を成さずに耳を通り抜ける。

「いきなり本題入るけど何でこんな目に合うか分かる? 最近かなめ君ちょっと人を舐めすぎてたよねえ。君くらいの悪質な常習犯になるとうちに依頼来ちゃってさあ。まあゆっくり理解していっぱい後悔しなよ。薬で頭も身体もおかしいだろうけど。ほら孝」

今まで俺と連絡とってた孝さんが無表情で俺の足元の方に立った。
重たい頭で周りを見回すとベッド以外何もない部屋。コンクリートの打ち壁。
ベッドの上に俺が寝てる、だけ。

突然無言の孝さんがいきなり俺の何かを弄り出した。
何、なに、いやだやめて、

「え‥あ、あっあ、あっ、いっ、ひゃあああああんっ!」

ビュビュビュクッ!

「すごいすごい!触っただけなのにイッたとか!今回の薬強いねえ」
「ルー、早くお前もやれ。薬切れるぞ」

抵抗しようと手を動かしてみるけど、脱力したように力が入らなくて虚しくも軽く腕が揺れるだけだった。
悲しいことに拘束してない理由が分かった。

「はいはい。孝はただ早くこの子食べたいだけでしょ」
「当たり前だ。俺が釣ったんだぞ」

いや違う釣ったのは俺のはず。

「おりぇになに、すりゅぅ、」

俺に何するつもりだ。
そういったはずなのに呂律が回らなくてまるで赤ちゃん言葉。
まぢ俺きもい。

「まーだ喋れないよ。喋れる頃には──あーまたある意味で喋れないだろうけど」

ルーって人が自分で爆笑してる。

「ルー」
「はいはい。これから真剣に"仕返し"するよ」

ルーの目つきが変わって孝さんが頷く。
"仕返し"って、な、に?




「ああああんっ、あっひあひっ…あんあんっ!ぁっらめらめぇっ…おかしくなっちゃっああんっああっらめ、も、触っちゃやあああんっ」

俺はビクビクと身体を痙攣させ、受け止めることができない快感を発散させていた。

「かなめ君は幾つだったかな」
「あひ、っあひゃ…ああ、っにっにじゅう、に!はっあっ、あう、んっ」
「22歳かあ。大学生?」
「いやあぁやめ、ろっ、あひゃっん!はあはあ、行ってな、っ!…んふぁぁ」
「そっか、まあ何にせよ悪い癖をやめないとなー」
「あああっやめ、孝っ、ん、ああっい、いいぃっそこそこお、あひ…っあ、もっとぉ、あはああっ」
「って聞いてないじゃん。孝真剣になりすぎー」

額から垂れる汗を拭いながら前立腺ピンポイントでがつがつと腰を振る孝さん。

「そっちはお前担当。俺はこっち担当。お前、真剣に"仕返し"するってさっき宣言したよな」

はいはいと拗ねたように答えるルー。
また俺の顔にちゅっちゅしながら喋りだす。

「かなめ君気持ちいいでしょ。彼のセクテクは半端じゃないからね。いいなー僕も気持ちよくなりたい」
「ルー」
「はいはい。──かなめ君、男に陵辱されてどう?」
「あっあっあっ、あはん、気持ちいいっいい…ぃっあひゃっん」
「ほらやっぱり気持ちいいよね羨ましい。…じゃあ正気に戻ったらどう思うと思う?」
「っあひん!ああああったかっあひっ、んふ、いっいっいっイッちゃ、いくいくいくっ、あ、あ、ああああああんっ──!」

正気に戻ったら?
男に犯されたって嘆いてプライドズタズタ。
ああ、釣りなんてやめよう。
怖い目見るのはもう嫌だ‥──。




「まじウケるなあんたら」
「「は、?」」

イったすぐに正気を取り戻した俺。
実は薬の抜けがすこぶるいい体質。
ぐちゃぐちゃのままベットを陣取り、呆然としてる二人を指差して腹抱えて笑ってやった。

「つまりあれだろ、あんたら仕返し屋ってやつ? 話には聞いたことあるけど本当にあんだね、ていうかやり方がウケるね」

これが誘拐されたヤツの台詞かって俺も思う。

「情報収集のときノンケかどうか確かめなきゃ。残念ながら俺ゲイだしある意味釣りの男漁りもまじだから」

にしても、

「面白いっ!ほんと面白そうな商売!な、な、俺仲間に入れてくんない? 何でもするよ!薬の入手とかタチでもネコでも何でも!」

2人が相変わらずぽかんとしてるから落ち着いて大きなため息をひとつと、

「じゃないと警察いくからな」

脅してやった。裸で。
すると我に返った片方の孝さんがふっと嘲笑した。

「そう、お前のように警察行く獲物がいるだろうし捕まってもおかしくない仕事だぞ?」
「警察なんか。だって孝さんたち無事じゃん」
「それはたまたま。僕たち運いいからねえ」

絶対ウソ。
こんな商売やってるからには何か確実にブタ箱行きの切符を持たなくて済むコネがあるとか。
でも、例えそんなコネがなくても、

「俺は今まで面白いことのためなら何でもしてきたし。だから大丈夫だって」

俺の変な真剣さが伝わったのか、

「そうか…それならようこそ仕返し屋へ。見習いくん」
「えっ…孝、本気?」
「かなめの釣り技量は充分仕事でも通用するレベルだ。あと平凡な若い男は色々な場面で使いやすいしな。まあ何よりこんな目にあったのにそのポジティブさと度胸のでかさ。バカなだけかもしれんが素直に感心したよ」

戸惑うルーに飄々と答える孝さん。
その態度にふーっと軽く息を吐いたルーはうって変わって嬉しそうに言った。

「そうだね3Pできるしね」

そんなにそれが惹かれる理由だったのか。
孝さんも満更じゃなさそうに頷く。

なんて面白い人たち。

ほら、釣りやっててよかっただろ。
こんなでかい獲物釣り上げちゃったんだから。




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