「おい、そこの男。名無しをじろじろと見つめるとはいい度胸だな。斬滅してやる」 「下衆め。名無しを映したその目を切り刻んでやろう」 「三成も元就も止めてよ!てか買い物に来ただけなのに何でそんな物騒な物持って来てるのよ!」 仕舞って!と名無しが叱咤すると、二人は渋々手に持ったそれを戻し、先程の男に射殺すような視線を向ける。 男はひっと声を上げると矢のようにその場から逃げて行った。 その後も名無しを挟んで歩く三成と元就はいつも以上に鋭い視線で周囲を見渡す。 そんな二人を交互に見て名無しは長い溜め息を吐いた。 「石田」 不意に元就が声を発した。 「言っておくが、名無しは我の物ぞ」 そう言って三成を横目で見る元就。 「少しでも名無しに触れてみろ。この世から消し去ってやる」 「何を言っている、貴様。斬滅されたいのか」 微かに青筋を浮かべている三成は元就を見下ろして、そう呟いた。 押し殺した殺気が二人からゆらゆらと溢れている。 「いつ名無しが貴様の物になった」 「いやらしい目で名無しを見るな。この変態」 「おい!無視するな!大体貴様も人の事を言えないだろう!」 「我は名無しの成長ぶりを見ているだけよ。貴様と一緒にするでない」 「大層な理由だがしていることは下心が丸出しだな。貴様の方が変態だろう」 「貴様に言われたくないわ」 一触即発。 その言葉がぴったりな雰囲気に誰もが二人を避けて通りすぎている。 ここで二人は初めて違和感に気づいた。 いつもなら二人が言い合っているとすぐに止めに入る名無しがいない。 そう、いないのだ。 「毛利、貴様が余計なことを話し始めたせいだぞ」 「たわけが。とうとう名無しは貴様に愛想が尽きたのであろう」 そう言い合う二人だが、顔面は蒼白である。 「…先に名無しを見つけた方が勝ちとしよう」 「ふん。後悔するでないぞ」 次の瞬間二人は名無しを求めて走り出した。 *** 「ありがとうございましたー」 店員の声に見送られて、名無しは本屋から出て来た。 新作の小説が買えて満足そうな名無しはふと周りを見渡す。 さっきまで煩く騒いでいた三成と元就の姿がいない。 はぐれてしまった。 今更気づいて慌てて名無しは携帯を開き、メール作成を起動させる。 「ねぇ、そこの君。一人なの?」 「良かったらさぁ、俺達と遊ばない?」 「カラオケにでも行こうよ。おごってあげるからさ」 頭上から降り注いだ無数の声。 携帯画面から視線をずらし声のした方に顔を向けると、いかにもチャラそうな男が3人、名無しを取り囲んでいた。 「結構です。連れがいるんで」 面倒くさいな。 冷めた名無しの受け答えにめげずに一人の男が細い名無しの腕を掴む。 「いいじゃん。少し遊ぶくらい」 「連れだってよぉ、どこにもいねぇじゃん」 「俺達といいことしようよ」 男の手が名無しの腕に容赦なく食い込む。 痛みに顔をしかめる名無しを見て、男達はニヤニヤと薄気味悪い笑みを浮かべる。 「大人しく来てもらおうか」 ぐいぐいと引っ張られる腕を振り解こうとする名無しを見かねて別の男が手を振り上げる。 思わず目をつむった名無し。 男の手が名無しの頬に触れそうになる。 パシン!と乾いた音が響いた。 「おい、貴様。名無しを傷付けようというのか」 そう聞こえてきた聞き覚えのある声。 思わず目を開けると、銀髪の青年が男の腕を握り締めながら立っている。 少しでも触れたら破裂してしまいそうな怒気が三成の周辺に漂っている。 段々強くなっていく三成の握力に堪え切れず、名無しを殴ろうとしていた男が悲鳴を上げ始めた。 もう片方の腕で三成を殴ろうと振りかぶったが、それよりも先に三成の拳が男の顔面にめり込んでいく。 ダラダラと鼻血を勢いよく垂らして男は地面に崩れ落ちた。 残った2人の男は顔を真っ青にして突っ立っている。 「てめぇ!よくも…」 そう言ってポケットからナイフを取り出して三成に突きつける。 少しも表情を崩さない三成に男の方が焦り出す。 すると、男の後ろを見つめていた三成はふっと笑みを零した。 男もつられて後ろを振り返ると、いつの間にか目付きの鋭い青年がいることに気付き、今度はそちらにナイフを向けて何か喚き出した。 「下衆が。いつまで名無しに触れているつもりよ。その薄汚い手をさっさと離さぬか」 「なんだてめぇ!俺に指図すんじゃねぇ!」 そう言ってでたらめにナイフを振り回しだす男。 それを軽々と避け続けている元就が急にしゃがんだのに男は呆気にとられる。 次の瞬間元就の強烈な蹴りが男の腹に見事にきまった。 無様に地面に転がる男を元就は鼻で笑う。 次々と地面に倒れていく仲間を放心した様子で見ていた最後の男は、顔を地面に擦り付ける様にして必死に土下座し始めたが、三成と元就の容赦ない蹴りによって気を失うこととなった。 「三成…元就…。迷惑掛けて、ごめん」 私が勝手に離れなければこんなことにならなかったのに…。 震えた声でそう言って俯く名無し。 自己嫌悪に陥る名無しの頭をぶっきらぼうに撫でながら三成が呟く。 「名無しは何も悪くないだろう。こいつらが全て悪い」 「まったくその通りよ。名無しに非はまったくないであろう」 そう言って背中をさする元就。 先程の表情とは違って二人とも優しげな眼差しで名無しを見つめている。 「二人とも…ありがとう…!何かお礼しなきゃね…!」 名無しのその言葉に三成と元就がピクリと反応する。 そして二人は同時に言った。 嫁になって下さい (貴様…!我の邪魔をするな!) (貴様こそ!名無しは私の物だ!) (あーもう喧嘩しないでよ…!) --------------- 優様へ キリ番4646リクエスト作品 遅くなってすみません! なんかもうgdgdすぎる(´・ω・`) 書き直し受け付けますので…! リクエストありがとうございました! (11/05/30) |