「!!!」 ガバリと布団を押しのけ起き上がる。悪夢を見た。今日で3回も続いていた。時計に目をやればすでに2時を回っていて物音一つない。再びベッドに横になり眠りにつこうとしたがどうにも寝付けない。その夢は妙にリアルで気味が悪かった。すっかり眠気も覚めてしまって急に独りという事実に心細くなる。私は枕を抱きしめて部屋を飛び出した。暗い廊下を歩いて目的の部屋へ。そこだけポツリと灯りがついていて肩を撫で下ろした。 「ウェ、スカーさん。起きてますか?」 控え目にノックして返答を待つ。しばらくしてガチャリとドアノブが回り、赤い目が私を映した。「どうした」とウェスカーさんは驚いたような顔をしたが私はその言葉を遮るように抱きついた。今まで怖かった分我慢をしていた涙が溢れる。ウェスカーさんはそんな私を抱きしめ返して頭を撫でた。しばらくして涙も治まってきた頃、ウェスカーさんに抱きあげられた。泣き疲れて力が入らずされるがまま。そのまま横抱きで運ばれ、ベッドの上に下ろされた。 「これでも飲んで落ちつけ」 差し出されたココアを飲む。「落ち着いたか?」「はい」ウェスカーさんはきっとやりかけであった研究資料を閉じて私の隣に座った。 「怖い夢でも見たか?」 「は、い」 「怖かったか?」とウェスカーさんの腕が伸びてきて私はその腕に収まった。まだ震えているのを気付かれてしまったのかもしれない。じわっと涙を堪えて頷くと抱きしめられる腕に力が入った。不意にベッドの上に下ろされた時に投げ出された枕が視界に入った。 「ウェスカーさん、」 「なんだ?」 「今晩、一緒に寝てもいいですか?」 もし断られたらどうしよう。そんな不安が渦巻く。きっとまだお仕事中で邪魔をしてしまった。いつも迷惑をかけてしまっているのにこんな時まで。夜という大事なプライベートな時間だというのに。 「ああ、構わない。その様子だと迷惑をかけていると思っているようだな。……図星か?」 うっと口黙るとウェスカーさんは笑った。そして「丁度俺も寝るところだった」と言って明かりを消した。ベッドサイドの明かりだけがポツリと周囲を照らす。私の枕がウェスカーさんの枕の横に並べられ、ベッドの大きさがかなりあるのが伺える。ウェスカーさんがベッドに入り、その横にスペースを作った。 「おいで」 いつもとは想像もつかないような優しく甘い声で私を呼ぶ。独りで眠れないなんて子供みたい、と苦笑しつつベッドに入りこむ。ふわりと腕に抱かれて吃驚して見上げる。 「ゆっくり眠れ」 頭を再度撫でられる。時々ぽんぽんと一定のリズムで背中を叩かれ、次第に眠気が私を襲う。 「ウェスカー、さん。ありがとうございます」 「気にするな」 優しく抱きしめる腕の中 ウェスカーは自らの腕の中で眠りについた黎を見て微笑む。「ウェスカー、さ、ん。だ、いすき」そんな黎の寝言に更に力が入った。そして、「愛している」と寝ている彼女の唇に口づけを落とし眠りについた。 |