パチリパチリという音を弾かせて薪が燃えている。赤味を帯びたオレンジ色が激しく踊っている。ご飯も食べた後なので暖かい火が眠気を誘ってきた。何気なくぼー、と隣にいるお面屋さんを眺める。今日手に入った品物を確認しているらしく、私が見つめていることには気がついていないようだ。それをいいことにじっとお面屋さんを見つめる。炎の明るさが当たっている部分は赤く色づいているように見える。あぁ、意外と色が白いんだなーとかけっこう睫毛長いなーとか色々と観察していると、不意にお面屋さんが私の方へ顔を向けた。あ、ばれちゃった。

「どうかしましたか?」
「いや、なんでも、ないです」

そうですか、とお面屋さんが呟いた。手に持っていた品物を丁寧にしまって、お面屋さんが再び私の方へ向き直った。

「ところで、ナマエさん。今日は何の日か知っていますか?」
「え、何か特別な日でしたっけ」
「今日はハロウィンっていう日なんですよ」
「ハロ、ウィン?」
「えぇ。異国の文化で、子供たちが仮装をしてお菓子を貰う日なんです」

へぇ、と感嘆の声が漏れた。初めて聞いたがなんだかとても楽しそうなイベントだ。ハイラルでもやればいいのに。やっぱりお面屋さんは物知りだなーとしみじみ思っていると、お面屋さんがくすっと笑った。

「trick or treat」
「とり、?えっ?何語ですかそれ」
「お菓子くれないと悪戯しますよ」
「うぇっ悪戯、?え、でもいまお菓子もってな…」

最後まで言い終わらないうちに、ふに、と唇に何かが触れた。目の前にはお面屋さん、が。思考が全く追いつかない。でも、これは、間違いなくキスされた、。

「っは、」
「ご馳走様です」

くすくすと笑ってお面屋さんが私から離れた。それなのに顔がまだ熱い。きっと、耳まで真っ赤に違いないだろう。秋になりだいぶ肌寒くなってきた風が今はとても心地よい。

「ふぉっふぉっ、顔がすごく赤いですよ」
「だ、誰のせいだと思ってるんですか、!」

ぽふっとお面屋さんの胸元に顔を埋めて顔の熱を逃がそうとしたのに、ぎゅ、と抱きしめてくるものだからこの顔の熱はまだまだ消えてはくれないだろう。



現在心が乱れております
(不意打ちだなんてそんなのずるい)




お題元:泣殻

(12/10/31)



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