踏みならすかのような足音と共にバタァン、と荒々しい音が静まり返っていた室内を揺らした。ドアへ目をやると疲れきったような怒っているような表情を浮かべたWがまっすぐ私の元へやって来ていた。

「W、お帰りなさい」
「トリックオアトリート」
「はい?」
「今日ハロウィンなんだろ」

そういえば、今日は10月の最終日だったっけ。すっかり忘れてた。でもいきなりトリックオアトリートなんて言われてもお菓子なんか持っていないわけで。そう言おうと口を開きかけた瞬間、両肩を掴まれ、噛みつかれるようなキスをされた。ぐちゅぐちゅと口の中を蹂躙され、飲みきれなかった唾液が口の端から零れていった。

「はっ、あ、う…」
「ん、やっぱ、菓子貰うより悪戯する方がいいな」

にんまりとWが微笑む。垂れていった唾液が重力に従って落ちていく。あーあ、やらし、とWが私の顔を見て愉快気に笑った。座っている私の腕を取ってWは寝室へと向かう。歩く速度が速くて何回か躓きそうになるがWはまったくお構いなしだ。若干手荒にベッドへ放り込まれるとばふん、とベッドが揺れた。あっとういう間に私の上へ馬乗りになったWが再び私の口内へ舌を挿し込んでくる。歯列をなぞられ舌を甘噛みされ、ぞわりと背筋が震える。

「ハッピーハロウィン」

そう言ってWはくつくつと笑いを零した。



所望するのは悪戯なので
(拒否できるならしてみろよ)




(12/10/31)



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