遊戯王 | ナノ



嘔吐の日





急ぎ足で洗面所へと向かう。早く早くと自分を急かしながら長い廊下を歩いていく。曲がり角を通り過ぎて、ようやく辿り着いた。いささか乱暴に扉を開けて洗面台の前に立つ。真っ白な大理石汚してしまうのは毎回気が引けるのだが、この吐き気を抑えるなんてことは到底できない。少し身を屈めて洗面台に顔を近づけ、蛇口を捻って水を流す。透明な水に紛れるようにして先程胃に収めた夕食を全て吐き出した。びしゃびしゃとまだ消化されていないが原形を留めていない飲食物が次々と胃から押し戻されてくる。咽喉元がぎゅっと押される感触が何とも言えず心地悪い。ぼろぼろと涙を零しながらも嘔吐を繰り返す。はあはあと空気を吸い込んでいると、激しい音を立てて再び扉が開かれた。

「おい、」
「…っ…ごめんなさい」

ちっと舌打ちをしてWは私を床に押し倒した。思い切り頭を打ちつけてしまい目の前がちかちかと明滅する。身を縮こませて痛みに耐えるが追い込みをかけるようにWの足が私の下腹部を容赦なく蹴り上げた。

「うあ゛っ!!はっ…はぁっ…」
「吐くときは俺に言えって何回言わせれば気が済むんだ、名無し」

ぐりぐりと腹を圧迫するWの足によって私はせり上がってきた胃液をだらしなく床にぼたぼたと吐き出すはめになった。

「いいねぇ、その顔。他の奴らなんかとは比べ物にならないほど美しいよ」

くははははとWは愉快気に笑った。そんなことで褒められたってまったく嬉しくない。よりいっそう下腹部に圧力が加わり嗚咽が漏れた。内臓がおかしくなってしまうんじゃないかと思うくらいに、痛い。唾液なのか胃液なのかもうよく分からない液体がごぷりと口から吐き出される。痛みに呻いているとぎりぎりと与えられていた激痛が急に消え去った。あぁ、ようやく足をどかしてくれたのか。そう思ったのも束の間。お次は髪の毛を無造作に掴まれぐっと上に引っ張り上げられた。頭皮を駆け巡る鈍痛に顔が歪む。するとこの男はとても嬉しそうに笑みを零すのだ。まったくもって狂ってる。そう言ってやろうと口を動かすが口から出てきたのは痛みに呻く声と大量の胃液を含んだ吐瀉物だけである。

「うぐ…っ!!あ゛ぅ…いたいよ、Wっ…!…ひぐっ……」
「もっと泣き喚いて苦しめよ。俺を満足させたら止めてやるから」

そう言ってWは吐瀉物やら胃液やらでてかてかと光る私の唇に口づけてきた。私が嫌がるのを知っていて奥に引っ込んでいる舌をWは引きずり出していく。酸欠になりかけて意識が飛びそうになるとまた体に激痛が駆け巡る。満足させたら止めてやるだなんて、よく言うよ。どうせ明日になったらまた繰り返すくせに。終わりなんか与えるつもりもないのに見え透いた嘘ばっかり言うんだ、こいつは。

「なっ…?!てめぇ…!ちっ、いってぇな」
「うぇ、鉄臭い」

今までの仕返しにがりっとWの舌を噛んでやった。柄にもなく泣きそうな顔をして痛みに耐えているWは気の毒なほどに滑稽だ。ははっ、ざまあみろ、






今日は嘔吐の日ですね!
げろちゅー好きです。

(12/08/09)



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -