おだい | ナノ


すきだあいしてるほれてるよ。いつも心で叫んでます

「す、す…すきゅっ…あぁ、もう…す、すき、です…」


はあ、と私は大きな溜め息を吐いた。
部屋にそれが虚しく零れ落ちていった。
私の言葉にもちろん返答はない。
この部屋には私しかいないのだ。
先程からずっと好きですと繰り返し言い続けている自分は異常者に見えることだろう。
しかし、これにはちゃんとした理由があるのだ。

***

「ああ…牧野さん、こんにちは」
「あっこんにちは…宮田さん」

教会の前で花壇の手入れをしていたら、不意に後ろから声を掛けられた。
振り返ると宮田さんがアタッシュケースのような物を手にして佇んでた。
しゃがんでいた私は必然的に宮田さんから見下ろされることになる。
異様な威圧感のような空気をひしひし感じながら私は、お元気でしたか、と尋ねると、ええ、まあという素っ気ない返事が。
沈黙が二人の間で流れ始めた。
うぅ…気まずい…。
この状況から逃れるためにまた口を開こうとしたら、私より先に宮田さんの口が動いた。

「そういえば、このあいだ…」
「あっ…はい」
「名前さんがぼやいていましたよ。牧野さんが私に好きだって全然言ってくれないって」
「えっ…そ、そんなこと言ってたんですか…!」

思わず立ち上がると宮田さんが若干驚いた様に私を見つめた。

名前さん、私にはそんなこと言わないのに…。
宮田さんには言って私には言ってくれない。
なんだか寂しさにも似た感情が私を侵していく。
そんな私の様子を見ていた宮田さんが微かに眉間に皺を寄せてまた口を開いた。

「やっと付き合えるようになったんですから、たまには好きくらい言ってあげればいいじゃないですか」
「で、でも恥ずかしいですよ…!そんな、面と向かって…その…好き、だなんて…」
「はあ…貴方はそれでも男ですか。ちゃんと金玉ついてます?たったの二文字言うだけじゃないですか」
「たったの二文字でもやっぱり恥ずかしいですよ…。というかそれよりもこんな道端で何て単語を言ってるんですか…!」
「ああ、そういえばまだ往診が残ってるんでこれで失礼します」
「ちょっと、宮田さん…私の話を聞いて…」
「ということで牧野さん、そういうことです。早くどうにかしてくれないと俺が困ります。愚痴を聞くのは苦手なので」

それでは、と言い残して彼は颯爽と患者の家へと歩いていってしまった。
私の心情は複雑に混ざり合ってその後ろ姿を見ることしか出来なかった。

***

「はあ…たったの二文字も十分に言えないだなんて…」

なんだか情けなくてベッドの上にばふんと倒れこんだ。
ぎしり、とスプリングが唸る。
私だって、言いたいのは山々なのだ。
しかし、羞恥心が邪魔をする。
それ以前に名前さんと話すだけでとても緊張してしまって、頭が真っ白になる始末だ。
どうすればいいのだろうか。
ぐるりと体を動かして俯せになる。
直接言わないでも自分の想いを伝える方法。
電話は無理だろうし、だからってメールっていうのも…。
うーんと唸りながら再び仰向けになる。
あぁ…!あるじゃないか。私にぴったりの方法が。
がばっと起き上がって机と向き合って引き出しから便箋を取り出した。
これなら、自分の思いをいくらでも伝えられる。
もう名前さんが不安にならないように私がどれほど名前さんのことが好きか、教えてあげましょう。



すきだあいしてるほれてるよ。
いつも心で叫んでます

(いずれは口で伝えられますように)






あれ、夢主が出てない…ぞ(白目
仲吉村目指してみました
なんか宮田先生別人になっちゃったけど



(12/01/23)



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