ほらー | ナノ

「名前…怖がらないで…早く出ておいで……」


愛おしい人の声が聞こえる。
石田さん、石田さん。
そう呼びたいのを堪えて、私は必死に息を潜める。
見つかったら最後、私は化け物になってしまうのだろう。
村の人達のように。
石田さんの、ように。


「ヒヒヒヒ、名前…。何処にいるんだ…?」


カツカツと足音があちこち彷徨っている。
身の毛がよだつような笑い声が反響する。


「ひっ…」


慌てて両手で口を抑えるももう既に遅い。
ピタリ、と足音が止んだ。


静寂。
必死に息を潜める。
空気はまったく振動しない。
このまま窒息出来たらどんなに楽だろう。
そう思った時、再びカツン、と足音が響いた。


さっきとは違い、真っ直ぐ私のところへと近づいてくる石田さんの足音に冷や汗が全身に溢れてくる。
かたかたと震えてきた体を両手で抱き締めてみたがそれでも震えは止まらない。


また足音が聞こえなくなった。
しかし、今度は荒い呼吸がクローゼットの薄い扉を通して聞こえてくる。


もう、駄目だ。
どうせ死ぬなら、石田さんに殺してもらいたい。
掠れる声を精一杯振り絞って声を出した。


「石田、さん?」
「やっと見つけた、名前」


大好きな石田さんの声。
優しいその声にぼろぼろと涙が零れ落ちる。
キィー…と耳障りな音と共にクローゼットが開いた。
それと同時にぎゅ、と抱き締められた。
おずおずと石田さんの背中に私も腕を回す。


突如ブチ、と肉が引き千切れる音が頭上から聞こえた。
思わず見上げると、石田さんの口から赤い液体がぽたぽたと零れている。
にっこりと石田さんは微笑んで、私の唇を塞いだ。
ぬるり、と口内に入ってきた舌と一緒に多量の液体が流れ込んでくる。
それを飲み込んでいく内にだんだんと頭が痺れてきた。
さっきまであんなに怖がっていたのが馬鹿みたいだ。
早くこうしていれば良かったのに。
どうして今まで拒絶していたんだろう。


「俺が殺してあげるからね、名前」


そう言って石田さんはヒヒヒ、と笑った。


「あまり痛くしないでね、石田さン」


両目が熱い。
どろりとあれが零れたのと同時に拳銃の乾いた音。


「お休ミ。#ヒロイン#。早く起キテね…」


彼のその言葉を最後に私は意識を手放した。



闇はやさしく笑うだけ

(ようこそ、この素晴らしき世界へ!)



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石田さんの笑い声大好きです(笑)
ゲームでもう少し喋って欲しかったなぁ…。


お題お借りしました。
泣殻


(11/07/04)




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