ほらー | ナノ




もうどう足掻いても人間には戻れない



物音が聞こえてきて目が覚めた。
いつの間にか寝ていたらしい。
目を開けると、居間に知らない人が何人かいて、私を見て何か話してる。
声が低くて何を言ってるか分からない。
この人達は誰だろう。知らない顔ばかりだから、知り合いではない。
父さんか母さんの知り合いだろうか。



悶々と考えていると、金髪で、サングラスを掛けた男の人が私に近づいてきた。
恐怖で体が竦む。体がかたかたと震えてくる。



この人は異常だ。



何故だか分からないがそう本能が伝えてくる。
周りを見渡すと、寝室のドアが開いていて、その周囲に人はいなかった。
震える体に力を入れて、ドアまで走る。
躓きそうになりながら寝室に入り、急いで鍵を閉めた。



はぁ…と息を吐いて、ベッドに近づいた。
その瞬間、全身から冷や汗が溢れ、胃の内容物が口内にせり上がる。
目の前のベッドは血塗れで、その中に両親が重なるように倒れていた。
腹が抉られていて、臓物が辺りに飛び出ていて、肉片もベッドの周りに散らばっている。
虚ろに開かれた両親の瞳は私を捕らえて離さなかった。



堪え切れず口から嘔吐物が零れ落ちた。びちゃびちゃ。耳鳴りと激しい頭痛が私を襲う。
口元を手で拭うと、真っ赤な液体が手の甲にこびり付いた。
涙で視界がぼやけているからだろうか。
しかし目を拭っても手の汚れは赤いままだったし、床に飛び散った嘔吐物も同じく赤一色だった。



「なんだ、吐いてしまったのか」



後ろから男の低い声が聞こえた。
ゆっくり振り返ると、さっきの近づいてきた男が立っていた。
先程感じた恐怖は泡のように消えて、私はその男に抱きついた。
男は私を拒絶しなかった。ゆっくりと頭を撫でられてさらに涙が溢れる。
そうだ、私が、殺したんだ。寝ている両親を襲って喉元を食い千切り腕に噛みつき臓物を掻きまわしたんだ。血塗れの映像が脳内で甦る。生温かい血の温度を思い出して喉がひくついた。



「私は、人じゃないの…?」



不安で押し潰されそうになった私は目の前の男に問い掛けた。
すると、男は私の涙を指で拭き取って愉快気に吐き捨てた。



「お前は化け物以外の何物でもない。だが安心しろ。俺も同じだ」



そう言って男は微笑んだ。その狂気で染まった微笑は私の中枢に深く根付いていく。
そして、私も―。








名前変換ないですね、すみませんorz

お題お借りしました。
guernica

(11/05/01)




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