ほらー | ナノ







「メアリー」

背後で呼ばれると同時に首に絡む両腕。ぎゅっと抱き締められて、首元にちくりと違和感が走った。吐き出された息が肌を滑り落ちていく。

「ジェイムス、どうしたの…?」

首を後ろに向けると、首元に顔を埋めているジェイムスの金髪が見えた。再び彼の名前を呼ぶと、ようやくジェイムスは顔を上げた。暗く淀んだ瞳がゆらゆらと揺れている。何に怯えているのだろうか。

「メアリー…」

押し殺した声で。彼はそう呟いた。メアリー。

彼は私に初めて会った時から私のことをメアリーと呼んでいる。私にも元の名前があったんだろうけど、今ではもう思い出せない。それにメアリーと呼ばれるのは、嫌じゃない。

「私とずっと…一緒にいてくれ、メアリー」

首筋が微かに濡れるのを感じた。

「えぇ。ずっと、これからもずっと一緒にいましょう」

言い終わると同時に私は咳き込んでしまった。風邪を引いたのかもしれない。こほこほと咳をしたせいなのだろう。ジェイムスの体が微かに震えている様な気がした。


きっと気のせいなんかじゃない
(あぁ、あの時と同じだ)
(この両腕が私の首を絞めるまであと何日だろう)




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暗いお話や狂ってるお話が好きなのです。
しかし上手く表現出来ない(´`)

お題お借りしました。
泣殻
(11/11/24)

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