ほらー | ナノ


銃口の奥に暗闇を見た

「っ…!」

鈍痛が体中を走り廻る。
名前は腕へと目を向けると、応急処置で縛っておいた布が血で真っ赤に染まっているのに気付いた。
傷口は熱を持っているようで傷の付近が酷く熱く感じる。
逃げ込んだ家屋には運良く村人はいないようで物音一つ聞こえてこない。
しとしとと降り続く雨の音だけが名前の耳へと届く。

「何か、手当て出来る物とかないかな…」

そう呟きながら立ち上がろうとする名前だが、眩暈を感じて再び座り込んでしまった。
かなり出血しているようで目の前が霞むようだ。

「はぁ…もう、どうしよう…」

涙声で名前は呟く。

「…っ…石田さん…」

無事でいるだろうか。
もしかしたら、あの村人達みたいに…。

「うぅっ…!」
そう考えた時、名前に頭痛が走った。
ちらちらと誰かの視界が名前へと伝わる。
おぼつかない足取りで名前のいる家屋へ近付いてくる誰か。

「誰…?」

まだ生きている人の視界だろうか。
それとも…。
名前は傍らに置いてある武器を握り締めて目の前の障子を見つめる。
微かに聞こえてきた足音が段々大きくなり、ついに何者かの姿が障子にぼんやりと浮かんだ。
荒い呼吸音に名前には緊張が走る。
目の前の障子が荒々しい音を立てて開かれた。

「っ名前…」
「い、石田さん…!」

ぽろぽろと両目から涙が溢れている名前に近付こうとする石田。
石田の両目からも同じように溢れているそれの色を見た瞬間、名前は小さく悲鳴を上げた。

「嘘…石田さんまで…そんな…!」
「…、名前…?」

後ずさる名前と近付く石田。
とん、と名前の背中に壁が当たった。

「名前、怪我…して、る…のか…?」
「えっ…?石田さ、ん…?」

名前の腕をじっと見つめていた石田は腕に巻いている布へと手をのばす。
小さく呻いた名前を慰めるように石田は優しく名前の頭を撫でた。

「まだ、血が…止まら、ない…のか…」
「っ…うん…」
「今、止血、して…やるから…な」

そう言うと石田は立ち上がって部屋の中を物色し始めた。
探すこと数分。
石田は真新しそうな布を手にして再び名前の足元にしゃがみ込んだ。

「痛む…だろう、けど…我慢、しろよ…」
「っあぅ…!」

手際良く名前の腕に布を巻いた石田はそのままもたれ掛かるように名前に抱きついた。

「ありがとう…石田さん」
「これくらい、なんとも…ない…。…っ気に、する…なっ…っうぁ…!」
「石田さん…!?」

突然呻き出した石田は頭を両手で押さえながら床へと倒れ込んだ。
掠れた声でしきりに嫌だ、嫌だ、と連呼する石田。
名前は必死に石田さん、と呼び掛けるが返答はない。
するといきなり石田の動きが止まった。

「石田さん…?大丈夫…?」
「は、はは…名前、か…?」

そう言って石田は立ち上がった。
先程とは違う雰囲気に名前は冷や汗が流れるのを感じた。

「あれ、怪我、してる…のか…?」
「石田さん、どうした、の…?!ひぁっ…痛っ…!」

名前の怪我をしている腕を掴んでにやにやと笑う石田を見て名前は背筋が凍った。

「なぁ…痛いか…?ほら、どう、なんだ…?」
「ひぅっ!嫌だ、止めてっ!…っあぅ…石田さ、痛い…!」
「ひゃははは、名前の、その顔…たまんねぇな…」

布を解いた石田は赤く腫れ上がっている傷口へと顔を近づけた。
大きく息を飲んだ名前をにやにやと顔を歪めながら見上げる。

「消毒…してやる…よ」
「あああっ!痛っ、痛いよ…!石田さん、止めてっ…うああああっ」

頬を涙で濡らして名前は懇願するが石田はそれを無視して傷口に舌を這わし続ける。
そして、石田は息も絶え絶えな名前を見て薄ら笑うだけだ。

「ずるい、よなぁ…俺だって、名前を…」
「ひぅっ……石田、さん…?」

自身の腰へと手をのばした石田。
かちゃり、と冷たい金属音が小さく鳴った。
手にしたそれを名前の額へと向ける。



銃口の奥に暗闇を見た
(名前が何かを言い切る前に拳銃の発砲音が室内に反響した)





アンケでご要望があったヤンデレ石田さん夢です。
ヤンデレ美味しいです(↑ω↑*)モグモグ
私が書いたら微妙な感じですが…。
こんなものになってしまいましたが
気に入って下さるとうれしいです…!

お題お借りしました。
泣殻

(11/10/31)



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