11
〔翔side〕
そして、翌日の昼休み。
「あ。翔くん!こっちこっち!」
聞き慣れたはずなのに違和感を感じるその声の主を探して視界に納めると、やはり見慣れた顔が笑顔で大きく手を振っていた。
困惑して一瞬立ち止まる。
すると相手も固まってしまい、それを見た音也が駆け寄ってきた。
「もう翔!早くみんな待ってるよ」
「いや、あれ見たら戸惑うだろ普通に!?」
最近はどもることも少なくなっていたし、名前呼びも強制的に決められたので、その辺は別に驚いてはいない。
しかし、
「何かナチュラルにタメ語になってんじゃん」
「嫌なの?」
「……いや、じゃないけど、」
むしろ嬉しいけど、何だかむず痒い。
「じゃあいいじゃん!!」
そう言って嬉しそうに翔の腕を引く音也。
「ひよりが言ってたんだ。冴乃って、人見知りだから最初に控えめな態度で接するだろ?そうすると仲良くなってから打ち解けた接し方をするタイミングが掴めないんだって」
――もっと仲良くしたいけど、タイミングを逃してるだけなんだ。
そう言った音也は、翔よりも冴乃を知っていて……少し、悔しかった。
「ああっあああのしょっしょしょ翔くんっ、あああああの、あのですねっ!?」
冴乃と那月と自己中女(早乙女ひより)とまだ知らないその他数名の輪に向かうと、尋常じゃない吃り方で冴乃が話しかけてきた。
それを見た自己中女が、俺に一瞥してから溜め息を吐いた。
「いいのよ冴乃。あんたは何も悪くない。そこのチビがヘタレてるだけ」
「へ?」
「お前今チビっつったな!?」
「私より小さいくせに威勢だけはいいんだから」
いきなり喧嘩を売られた。この女の方が背が高いのは悲しくも事実なのだが、何故今いきなり喧嘩を売られた。
「大丈夫だよ冴乃。翔ってば照れてただけだからー」
「そうそう。翔ちゃんは照れ屋さんなんですよぉ〜可愛いなぁ〜」
「てれ……!? つか那月離れろ!抱きつくな!」
「ほ、本当に?『何かいきなり態度変わってきめぇぞコイツ』みたいな、そういうのじゃない!?」
「……お前、案外ネガティブなのな」
那月の拘束を何とか苦しくない程度に緩めつつ、翔は溜め息を吐いた。
勿論、キモいとかそんなこと思ってない。むしろ今までよりずっと気分がいい。
「ま、改めて宜しくな、冴乃」
翔が俯いてネガティブゲートを開いている冴乃の頭をぽんぽんと軽く叩くと、
「私のがお姉さんなのにーーーっ!!」
と言って軽く拗ねてしまった。
〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜
少し短いけど一区切り。
ようやくみんなと仲良くなってきてくれた……(つд;*)
結局一番15歳組が喋ってる…。
2013.02.22
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