付き合うって、何をどうしたらいいか解んない。…だって、初めてなんだもん。人と付き合うのなんて───。 もう14歳になった。まわりの友達にも、彼氏がいる娘たちはいるし、私だってそういう相手がいてもおかしくない…んだと思う。 「空、何ボーッとしてんだ? 置いてくぞ」 「…えっ、あっ、待って!」 ───でも、相手は太一なんだもん。 1週間前、太一に『空のことめちゃくちゃ好きだから、付き合ってほしーんだけど』って言われた。 言われた時はびっくりして、まともに返事を返せなかった。…私も太一のこと大好きだったから、なおさら。 でも、今まで別に進展する様子があったわけじゃなくて、むしろこのまま、中学生の間はずっと仲の良い友達どまりかななんて考えてた。 私には、仮に失敗してこの関係をなくすことの方が怖かったし、勇気が出なかったから。 とにかくOKだって返事はなんとか返して、今に至る訳だけど、付き合ったからって別に何かが変わったわけじゃない。いつもどおり朝一緒に学校に行って、帰りも予定があえば一緒に帰るだけ。これは付き合う前からしてたことであって、付き合ったからしてる恋人らしいことでもない。 でも付き合ったことないから、どんなことをしたら付き合ってるっぽいのか解らない。 「───それで、蘭ちゃんと、コナンくんが新一のふりして電話で話すんだけどね」 「おう」 「"探偵キッドは寒いわよ"ーなんて言われてて、思わず笑っちゃった!」 「ははは!蘭、手厳しいなー」 太一との帰り道。肩がふれそうなくらい近い。カバンを持つ手がかすっているような、そうでないような。 他愛ない会話をしているだけ、なのに太一がいる右側は、体が燃えているかのようにじりじりと熱い。ただ一緒に帰ってるだけなのに… …手とか繋いだ方が良いのかな?『繋いでいい?』とか確認とるべきよね。…繋いでみたいけど…でもただでさえこんな状態なのに、繋いだら右手が燃えちゃうわ。 …こうやって一緒に歩くことには慣れっこだったけど、付き合ってからは意識しちゃってかなわない。 相当末期かも、あたし…。 「───なぁ、」 「な、に?」 「これじゃ、付き合ってても付き合ってないころとなんも変わんねーねーよな」 「えっ……」 ふと真面目な顔した太一の言葉が、ずしっとのし掛かる。た、た、確かに、私もそう思ってたけど、でもどうしたらいいか解んなくってこんなになってるのに。 「…空は、もしかして俺と付き合うのヤだった?」 「な、なんでそんなこと言うの?」 「だって、話しかけても上の空だし……なんかあんまり笑ってない感じするから、さ」 …どうしよう、どうしよう。太一がそんな風に思ってたなんて。否定したいけど、声が出せない。太一はあっちを向いてて表情が見えないけど、今までずっと一緒だったから解る。この声は間違いなく悲しんでいる。 「───つまんねーこと言っちまったな。わりーわりー。さ、帰ろーぜ。 立ち止まってたら暑いしなぁ」 ちらりともこちらを見ずに、私を置いて、歩き始めてしまった。 ───言わなきゃ。ああ、でもなんて言ったらいいの?何を言えばいい? (太一、待ってっ) そう思った私は、おもわず駆け寄って、前を歩く太一の左手を取ってしまった。 太一が驚いて振り返る。 「……太…一、のこと…は…全然嫌いじゃない…し、むしろ……その………、たまには、…こういうこと、も…したい…な……って思う………」 あああ、一体私は何を言ってるんだろう。自分史上一番恥ずかしい言葉を言ってるに違いないわ。 顔があつい。顔あげられない。 ちょっとの沈黙のあと、太一は「そっか、俺もだ」って(多分、長年一緒にいる私だけが解るであろうな、とびっきり嬉しそうな声で)返事をしてくれた。 驚いた太一の手が、私の手よりも熱かったってことは、太一も私と同じようなことを考えていたのかしら? なんだか嬉しくなって、私よりもだいぶ大きな太一の手をギュッと握り返した。 明日の帰り道も、こうやって手を繋げたらいいなあ…なんて思いながら。 熱い右手と帰り道 ---------------------- 青さんに恐れ多くも私の誕生日プレゼントと頂きました…! 青さんの太空は自然体で本っ当に大好きなので凄く嬉しいです!有り難うございます(';ω;`) 『初々しい感じの太空』とリクエストしたのですが、想像以上に初々しくって萌え転げてしまいました(*^o^*) コナンキャラの名前が出た時、一瞬コナンでリクしてしまったのかとびっくりしました… 何だかすみませんでした(><) サプライズめっちゃ嬉しかったです!(バレンタインですね…!) 青さん、有り難うございました! |