幸せになれよ、なんて言いたくないけど


世界がもし100人の村だとしても君を連れ出して二人きりの世界を作ります


俺、なにやってんだ?
遠くに見える団体をぼーっと見ながら思った。
その中からあいつらにピントが合う。
あぁ、俺ってバカなのか。
傷つきたくないから、あの中に入らないって決めたのに。
それなのにこうやって遠巻きに見ているだけでこんな気持ちになるなんて……。
俺は自分自身を操作できなくなっていた。

「おーい、ヤマトも来いよー」
そんな気持ちを知ってか知らずか、太一は手をぶんぶん振って俺を呼んだ。
その横でにこにこしている空を見ると心が痛む。
「いや、俺はいいや……」
「なんだよ、ノリわりぃーなー」
「いや、ちょっとダルくてさ」
本当はダルくなんかなかった。
けど、今そうじゃないかと言われると否定できない。
「おい、大丈夫かよ?」
心配そうな顔をした2人が走ってきた。
ほかのヤツらも遠くからこっちを見守っている。
「大丈夫だって……」
「でも、顔色悪いわよ?」
「そうか?」
原因はお前らなんだけどな、なんて口が滑っても言えない。
太一も空も優しいから、きっと2人を困らせることになる。
「俺、なんか飲み物買ってくる」
とにかくこの場から離れたくなって、俺は立ち上がった。
2人の顔が歪んで見えた。
太一も、空もなにも言わずに俺を見ているだけだった。

ガタン、と音をたてて自販機からジュースの缶が落ちてきた。
それを開けて飲もうとしたとき、太一が現れた。
「だいぶ探したんだぜ?……こんなとこまで来てたのか」
「あぁ、まぁな」
距離を置きたかったんだ、お前らと。
「本当に大丈夫なのか?」
「あぁ、大丈夫だ。心配かけて悪かったな」
「そうか、ならよかった」
にかっと笑う太一の顔は昔から変わらなかった。
変わったのは、それを見ている俺の方だ。
「それより、空は?」
「あぁ……あいつは薬屋に行った。日射病なんじゃないかって、大騒ぎしてたよ」
日射病に効く薬なんてあるのかわからないけど、2人が自分のためにいろいろしてくれるのは悪い気もしない。
「あ、空といえばさ、俺……」
――今日告白したいんだ。
太一はそう言った。
俺はただそうか、と小さな声で言うことしかできなかった。
「でさ、ヤマトにお願いがあってさ……」
「なんだよ?」
「みんなの前で告白なんてできないから今から空を迎えに行こうと思うんだけど、みんなに上手く説明してくれねーか?」
太一は顔の前で手を合わせて、懸命に頼んできた。
俺は太一のことを恨んでなんかいないし、嫌いなんかじゃない。
ただ、こいつに俺は憧れていただけなんだよな――
こんな風に全力になれる太一が、羨ましかっただけなんだ。
「あぁ、頑張れよ」
俺はそう言った。
「ありがとな、ヤマト」
「おう」
「じゃ、行ってくる」
太一は手を振りながら走っていった。
これでよかったんだ、いつか心からそう思えるようになりたかった。

俺はみんなの輪の中に戻った。
「太一さんと空さんは?」
「太一なら空が心配だって言って薬屋に行った」
「もう、太一さんてば本当に空さんが好きなのねー」
みんなが頷く、もちろん俺も。
あいつら、上手くいってるかな……
「ヤマトー!」
名前を呼ばれて振り返ると、タイミングよく太一と空が走ってきた。
「太一、どうだったか?」
太一は息を切らしながら頭の上で大きな丸を作った。
「本当にありがとう、ヤマト」
これでよかったと、そう思える日は案外遠くないかもしれない。
二人の笑顔を見て俺は思った。



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あーやちゃんから私の誕生日にいただきました…!
わぁぁ凄く嬉しい!*
太空度60%の太空←ヤマ文です^^
空への気持ちに気付いても思い合う二人の前じゃ何も出来ず…なヤマトが切ない´`
太一の告白を複雑に思いながらも後押しする所がヤマトらしいです
そして二人の幸せが自分の幸せでもあるっていう……
サプライズな誕生日文、本当にありがとうございました…!!



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