18 ひ ど い
「夏美!無事か!?」
「恭…さん!?」
夏美は…無事、ではないようだ、…装着していた機械は何故か消えていて、スク水姿になっていた。
駆け寄ろうとして、止まる。…こりゃ、やばい状況?
「また会ったな、地球人…」
「…ガルル…出来れば、会いたくなかったんだがなぁ」
「何故…わざわざ戻ってきたんだ?」
「…俺にもわかんねぇよ…」
本当に、俺は何でここに居るんだろうなぁ、…最強でもなければ、…不思議な力があるわけでもねぇっつーのに、さ。
恭は自分が何を考えているんだろ、と思いながら自嘲した。
「…地球侵略はさせねぇ…」
「…ならば、お前を倒してからするとしようか」
「ああ、来いよ」
恭はガルルに向かってにやり、と笑いかける。
ソレを合図にするように、ゾルルのとタルルが恭に向かって走る。
…ガルル、自分は戦わねぇのかよ。…つか、2対1かよ!
1対1だろ!?と心の中で冷や汗を流しながら恭は身構えた。
タルルが恭に向かって目からタルルジェノサイドを発射する、恭は「タママのやつよりもすげぇんじゃねぇ?」と感心しながら、後ろに後退し、ビームをかわし、足をまげてしゃがみ、上を通っていったゾルルの鍵爪をかわす。
そのままの勢いで地面を思いっきり蹴り、タルルとの距離をほぼ零にする。
「ほぅら、よっ!」
「なぁーーっ!?」
近距離で、攻撃をかわされ驚いた顔のタルルの足をがしりと掴みながら、恭は右足を軸にして、ハンマー投げのように思いっきりタルルをゾルルに向かって投げる。
「うわぁああっ!?」
「邪、魔……!」
「へぶっ!!」
まっすぐにタルルはゾルルに向かって突っ込み、ゾルルは鍵爪じゃない方の手で…おもいっきり、小蠅を叩き潰すかの用に叩き落した。
タルルはぽよんぽよんと地面を跳ね、ぐふっ、とうめいている。
…なんだか、見た目が可愛いからか…苛めてる気分だ…。と恭はその様子を見て微妙な気分になった。
「よそみ、とは………余裕…だな」
「あん?よそ見しててもよけられるんだよ!」
ゾルルの左腕から長い刃物が飛び出す、俺は身体を反転させ、その刃をよけ、その勢いでゾルルを蹴り飛ばす。
「ぬ・・・!」
「チッ…!」
恭の蹴りは少しゾルルを掠めた程度で傷は与えていなかった。
「…ゾルル兵長とタルル上等兵の技をかわすとは…なかなかだな」
「…ははは、まぁ、コレくらい出来て…当然だろ?」
ガルルは感心したように俺に向かって言う、俺は余裕の表情でニヤリ、と笑った。
…実際、全く余裕じゃなかったりする。足は震えるし、頭は割れそうだ。…視界も、ぶれている。
「フッ…確かにそうだな…だが、周りの状況を良く見てから言うんだな」
「……、ちっ……人質、かよ」
「恭さん…」
ガルルは、夏美に向かって銃を当てる。…俺が、抵抗したら…夏美の命は無いってか?
「……わかった、降参だ」
人質を捕られるとは・・・、ああ、くそ…ちゃんと夏美を安全な場所に避難させておけば…。
「なかなか賢いようだな、地球人よ」
「…どーも」
俺はため息を付いて、両手を頭の横らへんに挙げた、降参のポーズ。
…結局、俺がここに来た意味無い…。
俺はその場に座り込み、何もしないということをガルルに見せ付ける。
「・・・地球人の抵抗は予想外だったが・・・これで想定された地球での戦闘はほぼ終了した。」
俺が抵抗しない事がわかったのか、ガルルは報告じみたことを言い始める。
…、ガルルの発言によると、まだドロロは…無事…。クルル達はやられちまったのか…。
…ドロロは、ドロロなりの考えがあるんだろう、…ケロロ小隊の中で、ドロロが何気に一番大人だったしな…。
「ボケガエルは…?」
俺がドロロの真意を探ろうとしていると、夏美が俯いたまま、ガルルに声をかける、…そうだ、ケロロ達はどうなる…?処分とか、されるんだろう…な。
夏美とガルルが話しているのを聞くと、どうやら…やはり、厳しい処罰…。
「紹介しよう、我々の隊長だ」
「……、ケロ、ロ?」
「ゲロ♪」
どこにいたのかわからないが、ケロロにそっくりな…いや、違う、そっくりだが、全く違うケロン人が現れた。
…尻尾、ついてる…。ケロロって、昔こんな風だったのか…?
「……可愛いな」
ぽろり、と漏れた言葉は、誰にも届かなかったようだ。
…うん、可愛いが、性格悪そう…。
…どうやら、こいつはケロロのクローンのようだ、…クローンということは、…作られた、命。
「ケロン軍の中でも”隊長の素質”を持つ者は限られている、それゆえ”隊長”には予備のクローンが準備されているのだ
精神汚染、肉体的損傷が激しいとされた場合は、新たな素体と入れ替えることになる」
ガルルの説明を聞き、俺は先ほどのように、言葉がこぼれた。
「…かわいそう、だな」
今度の、俺の呟きはクローンに、届いたようだ、
クローンは俺のほうを振り向き、首を傾げる。
「ゲロ?…何がでありますか?地球人。」
「…お前のことだよ」
「?…何を言っているのか、解からないであります」
「………、わからねぇなら、それでいいさ」
「ゲロゲロ?」
知らないほうが、こいつにとっては幸せなのかもしれない、こいつは、利用されているだけだ。
あくまで、クローン。ケロロの代用品。
オリジナルには、どう足掻いても敵わない、コピー。
「…余計なことは言わないでくれますかな、地球人」
「…………はいはい」
俺の言いたいことが解かったのだろう、ガルルは俺に向かって、低い声で忠告をする。
…なんだ、罪の意識は…あるのか……?
「…地球汚染の深刻な疑いのある旧・ケロロ軍曹は…一度タマゴまで還元・復元され、再び予備兵役につくことになるのだ
…全ての記憶も…傷とともに消えた上でな」
そう、ガルルがいい、どこかを見る。
ガルルの目線のほうには、大きなカプセルのようなものの中に入っているケロロ、が。
「ケロロ…」
「ボケガエルーーーッ!!」
夏美は泣きながら走って、ケロロに近づこうとする、がソレを半機械のが止めた。
…、ひどい、な。
記憶まで、消すなんて、ひどい。
俺の中で、何かが音を立てて切れた。