see no evil



 ぼくの飼い主は、ハンジ。という人らしいです。
 ぼくは他の巨人とは違い「知識」と「理性」があるらしいです。でもぼくは他の巨人たちとあんまり関わりがないから正直そう言われても、本当なのか嘘、なのかわかりません。
 ハンジと出会ったのは半年ほど前、です。ぼくは何時ものようにぽかぽかと暖かいお日様の光を浴びていました。(どうでもいいですが、空に光るお日様が、そういう名前だと知ったのはついこの間です)
 沢山のお日様の光を浴びて元気になったぼくは、ちょっと歩こうかな、と適当に歩いていました。このあたりの森はぼくのおうちです。あ、でももうぼくのおうちじゃありません。

 てくてくてく、と歩いていると知らない匂いがしました。生臭い、魚、とちょっと似ているけど、違いました。
 なんだろう、と思って探してみればそれはそこにありました。ハンジでした。その時はわからなかったけど、ハンジがそこに倒れていました。
 ぼくはそのとき始めて人間というものを間近で見ました、いつもは森の中から遠くの人を見るだけです。お馬さんに乗って、ぱかぱかと、走っていく人を眺めてはその人達の数を数えて、帰ってくる頃には誰か迷子になっているのか、いないなぁ、と思っていただけでした。

 ぼくは、ハンジをちょん、とつつきました。その途端、ハンジはびくりと肩を震わせ僕を見上げました。
 その目は、なんていうか、ちょっと、こわかったです。ぎらぎらとしていて、ぼくを追い掛け回す狼さんみたいで、ちょっとじゃない、たくさん怖かったです。
 
 ハンジは何かを探すように辺りを見渡しぼくから離れました。でも、ずりずりと体が動くだけでそこまで離れません。
 (後で知ったことなのですが、ぼくを殺す武器を探していて、足は折れていたみたいですハンジ、こわい。)


「…私も、ここまで、かな」


 ハンジが小さくつぶやきました。
 ぼくは首をかしげました、喋った。おはなし、した。びっくりです、なんでかと、言うと。動物たちははなさないからです、話す生き物を初めて見ました。

 なんだか嬉しくて、ぼくも口を開きました。
 ぼくは、お話できるんです、この動物と同じなんです。仲間、かな?でもちっちゃいね、ぼくのおめめくらいしかない。


「わた、し、も。こお、ま…てか、な?」
「…え!?」


 ハンジは驚いていました。目が飛び出そうなほどで、この動物は目が飛び出るのかぁと思いました。でも違うみたいでした。
 ハンジはぼくから目を離さないままに、少しだけ僕に近寄りました。ぼくは伸ばしてきたハンジの腕を掴みました。こわれないように、ちょっとだけ力を込めて。


「うわっ!?」



 ぶらーん。
 とハンジはぼくの手につかまりました。
 小さな物はよく動きます。他の巨人達とは違って、よくしゃべりました。
 ぼくは、片方の手のひらの上にハンジを乗せました。ぺたん、と座り込んだハンジはぼくを見ます。


「お、お前は…喋れる、の?」
「お、あぇわ……しゃ、れる、の?」
「す…すげええええっ!!えっ!?嘘!?喋れる!?喋った!?」
「ッ…!?」


 ハンジは行き成り大きな声を出しました。ぼくは顔を近づけていたのでその大きさにびっくりして目を閉じました。
 僕の手のひらで目を輝かせるハンジ、なんだか、とてもきらきらしていて、大きな水たまりに映るおひさまみたいでした。


「ねえねえねえ君!?私食べないの!?食べないのもしかして!!」
「ねえ、ね、ね。いみ?あ、たべ…??」

 
 あまりに早くしゃべるハンジだから、全く何を言ってるのかわからないです。でも、ぼくもちょっとは、賢い?のでした。
 ゆっくり話せば、わかるんです。ぼく賢い、から。(ハンジはいつも言葉を覚えるたびに頭を撫でてくれるのです、賢いね、といって) 


「ゆ、ゆく、り」
「えっ!?ゆくり?ゆくり…ゆっくり!?うおおおおすげええええ!!」


 ハンジはずりずりと体を動かすと、ぼくの親指にすがりつきました。
 ぼくの大きな指は、ハンジが両手を回しても、ちょっとだけたりません。ハンジは嬉しそうにほっぺたをくっつけています。あ、ちょっと、あったかいなあ。日向ぼっこしてるみたい。


「ねえ、君の。名前は?」
「なま、え…無いれ、す」
「やっぱり言葉わかるんだすげええ!!反復するだけじゃないんだ新種!?私も食べないしどうしよう困っちゃうなあもう!何から聞けばいいんだろう!!」
「…?」


 沢山お話するハンジをぼくはつん、とつつきました。
 ハンジは途端によろりと傾きずれた眼鏡を直しました。


「なに、いてる。わからない、で、す」
「ああごめん!ごめんね!だからつんつんやめて結構痛いから脳みそぐわんぐわんしてるからさ!!」
「…?」
「…痛いから、やめてね」
「ぁい」


 ハンジの真剣な、ゆっくりした言葉にぼくはいいよ、って返しました。ハンジはまたふるふると震えだしましたが口を抑えて我慢していました。叫びたい、んだと思うです。



「私はハンジ。君の名前は…そうだな…ナマエ!」
「…ハンジ…ナマエ…?」
「そうそう!すげええ巨人に名前呼んでもらえたああああ私人類初だよ絶対これ人類初めてだあああああっ!!」
「…ハン、ジ、おおきい…れす」
「あ、ごめんごめん。…ところでさあ、ナマエ。私いきたい場所あるんだ、連れて行ってくれる?」


 行きたい場所、とはどこだろう。そう思ったけど、初めて喋れて、ぼくは嬉しくて、頷いた。
 腕を上げればハンジは驚いたように「うお!?」って、悲鳴をあげていた。
 ぼくの頭の上に、ぽすんとハンジを落とす。
 ハンジはぼくの髪の毛に捕まっている、と思う。ちょっと引っ張らないでいたい!


「ど、ち?」
「あっち!まっすぐ!」
「ぁい」


 ハンジに言われるままについていったら。たまに見かけるお馬さんにのった沢山の人がいました。
 皆ぼくをみてぽっかりと口を開けていたけどすぐに僕に向かって、痛いことをしました。
 ちくちくと刺さるのが痛すぎてぼくは、必死になって体をよじりました。その場にくるくると回って、痛いのから逃げようとしました。


「なんだアイツ!?奇行種か!?」
「退避!一旦距離を取れ!」
「うわ、っちょ、ナマエ!ナマエ!回りすぎ!気持ち悪いからっ!!」
「ぅ、ううー!」


 たくさんの声が聞こえます、でもぼくは痛いからくるくる回りました。
 


「ナマエ!」
「…ッ…う、あ」


 ハンジの声に、ぼくは動きを止めました。あ、そうだたしかぼくの頭にハンジがいたんだっけ。
 死んじゃったかな、と思って頭を探って、ハンジを捕まえました。ハンジはぐったりとしていたけれど、疲れたように笑ってました。

 
「…もうやめてね」
「で、も。いたい、いたい、いや。です」
「うん、わかった。皆にちゃんと説明するから。…だからおろして?」


 ぼくの指を撫でるハンジ、ぼくはゆっくりとハンジを地面に戻しました。
 ふと見れば、ぼくに痛いことをした人はみんなぼくとハンジを見て、びっくりしています。目が飛び出て落ちそうでした。



 それから、ぼくは調査兵団という人たちに連れられて大きな壁をくぐって、中に入りました。
 今は古いお城の近くにいます。ぼくの家は、ここになりました。
 毎日ハンジが来てぼくとお話して、たまに、ちょっとだけ嫌な痛いことをして、帰ります。ちくちくとするので、ぼくの目とか、指とかを刺すの、でも、ハンジは泣いてた。だから、いい。


「ナマエ!」
「ハンジ、きた!」
「うん!遅くなってごめん!今日もいっぱいしゃべろう!」
「あい!」


 ニッコリと笑えば、ハンジも嬉しそうにわらいました。
 いいのです、ぼくの首と腕と脚には、大きな枷と鎖がついているけれど。
 好きに散歩もできないし、日向ぼっこも出来ないし、たまに殺され、かけちゃうけど。いいのです。


「ハンジ、なに、話す?です?」
「そうだなあ。この前の続きなんだけど…」



 ハンジと話せるから、いいのです。




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Y子さんに捧げます!
巨人主!書いてみちゃいましたてへぺろ!巨人視点は楽しいし楽でしたそしてやはり私の好みによりハンジさんお相手っていう・・すみませんでもこれを気にわいたもハンジさんの魅力にハマればいいと思うよ(真顔

リクエストありがとうございましたー!




bkm
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