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軍パロが予想以上に盛り上がって書いたものです。時代背景、設定などは特に決まってません。とりあえずシズイザは敵同士です。矛盾には目を瞑っていただきたい。





しくじったと心の中で舌打ちする。数日前から俺は敵対している軍の偵察に来ていた。
本来は部下に任せているのだが、ここ最近不審な動向が目立っていたので自分の目で確かめるべく同行していた。明日には撤退する、そんなとき奇襲を受けた。見張りも立て完璧なはずだった。それだけに、敵ながら見事だと辺りを囲まれながら思ってしまった。しかし事態が最悪な状況であることに変わりはない。捕虜になったのは自分だけではなかった。
自分は他人より少しばかり頑丈にできている。一人でなら少し無茶をすれば、逃げることもできるだろう。そう思い何とか自分一人を捕虜にするよう申し入れたが、聞き入れてはもらえなかった。そのせいで下手な行動はできない。
目隠しと手足の拘束をされ、トラックの荷台に乗せられる。しばらくトラックに揺られていると、砂利道だった道は舗装されたものへと変わった。

足枷を外されると、トラックから降ろされた。腕は拘束されたまま、またどこかへ誘導される。どうやら自分だけが降ろされたらしく、背後から仲間の心配する声が聞こえた。大丈夫だと一言言って、連れて行かれるままに歩いた。
途中何段もの階段を降りていることから、地下へ向かっていることは確かだった。数人分の足音が異様に響く。重い鉄格子を開け閉めした音が響くと、ここまで自分を連行した男たちは戻って行ったらしい。
自分の荒い息使いだけが聞こえる。慎重に辺りの気配に気を配りながら、腕を拘束していた手錠をいとも簡単に破壊した。

「へぇ、それくらいなら壊せるんだ」
「!!」

突然声がした。背中に嫌な汗をかく。まさか人がいるとは思わなかった。スピーカーか何かと思ったが、声が聞こえた方には確かに人のいる気配がする。
引き千切るように目隠しを取ると、そこは頼りない電球が照らしているだけの牢屋なような場所だった。壁も天井も床もコンクリートでできている。
そして、目の前には木製の質素な椅子に腰かけながら、口元を歪めている男。

「やだなぁ、そんな怖い顔しないでよ」
「……」

男はくつくつと笑いながら俺を見ていた。真っ赤に染まった目が細められる。男はずいぶん整った容姿をしていた。背もたれに置かれている腕も白く、細い。軍服を着ていることから軍人であるのは確かだろうが、素手で殺せそうだと思ってしまうほど弱々しい印象の男だった。

「ここが何をするための部屋か、君なら分かるよね?」
「……拷問か」
「正解」

室内と言っていいのか分からないが、そこには資料で見たことのある拷問器具が数多く置かれていた。もしかすると器具や部屋のあちこちにある黒い汚れは血液なのかもしれない。
この軍の捕虜になったものは生きては帰ってこない。冗談交じりに行った仲間の言葉を思い出した。しかし、一切拘束されていない自分がここから逃げることは簡単だ。目の前にいる男を殺して、背後にある鉄格子を壊す。だが、それができないでいた。

「じゃあこれから何をされるのか分かるよね」
「……今すぐ手前を殺して逃げればいいだけの話だろ」
「それでもいいよ?そんなことをしたらお友達が酷い死に方をするだけさ」

予想した通り、仲間は人質に取られていた。誰だって同じことをするだろう。
取り乱したところで何もないと深呼吸を数回してこれから自分は何をするべきか考えた。とにかく仲間の安否を直接確かめたかった。口では生きているようなことをほのめかしているが、それも作戦かもしれない。必死に助けようとして、既に死んでいたのでは意味がない。
男の些細な変化も見流さぬよう睨みつけていると、感心するように白々しい拍手をした。

「やっぱり噂に聞いているだけはあるね。実に冷静な判断だ。たいていの奴は仲間なんて二の次で、自分さえ生き残ればいいって命乞いしてくるからさぁ……君みたいな反応は滅多にないよ」

男はポケットから折りたたみ式のナイフを取り出すと、ぴたりと刃先を俺の首筋に当てた。冷たく光る刃はよく手入れされているのか、刃こぼれ一つなかった。
次の瞬間、男は腕を振り上げて切っ先を首めがけて振りおろした。脅しか何かかと少しは思ったが、男の目が本気なことに気付いた。
しかしいくら男が力を込めても、俺の肌は血どころか傷一つ付いていない。しばらくすると男は諦めたようにナイフを首筋から離した。

「ははは!噂は本当なんだね。向こうに化け物みたいなやつがいるって聞いてたけど、実際この目で見るまでは正直疑っていたよ」

先ほどまでナイフが触れていた肌を、指でなぞられる。くすぐったさにが抵抗すると、今度は刃先を眼球に向かって突き付けられた。肉体が頑丈でも、眼球は致命傷になるかもしれない。
俺が動けずにいると、男は満足したのかまたナイフを首筋に当てた。

「でも良かった。もし噂が嘘で君が死んじゃったら、流石に俺の立場も危うくなってただろうから」
「……」

口ぶりは焦っているような言い方だが、顔は相変わらずにやけていた。今さら化け物だと罵られたところで思う事はない。そのおかげで今があると言っても過言ではないのだから。
俺が黙っているのを怒っていると思ったのだろう。男はごめんごめんと、思ってもいないだろう謝罪を口にした。

「あぁ怒っちゃった?そんなつもりはないんだ。機嫌直してよシズちゃん」
「はぁ!?」
「え、変かな。静雄だからシズちゃんなんだけど」

さも当然のように男は言った。そもそもこれから自分が拷問する相手に、あだ名なんてつけてどうするんだと聞きたい。
その名前が気に入ったのか、それとも俺の反応が気お気に召したのか。男は何度もその呼び方で俺を呼んだ。
反論しようと口を開いたその時、けたたましい音が地下に響いた。一体何の音かと部屋を見回すと、机の上に置かれた連絡用だろう電話が鳴っていた。
男は舌打ちすると静雄のナイフを下ろし、先ほど座っていた椅子を電話の近くに引きずって行く。

「はーい、何ですかー」

男はそのまま椅子に腰かけると足を組み、心底めんどくさそうに返事をした。右手でチパチとナイフを出し入れしながらも、受話器の向こうへ耳を傾けている。
耳をすませると、受話器越しに聞こえたのは男の声だった。何を言っているかまでは、よく聞こえなかった。男が電話に気を取られているうちに、これからだするべきか考える。
殺されずに捕虜にされたという事は、利用価値があるからだ。恐らく欲しがっているのは情報。それを聞き出すために拷問でもするのだろう。この体質のせいもあってか俺は拷問に対してなんら恐怖はない。それよりも目の前で仲間に銃を突き付けられでもしたら、それこそどうすればいいのか。多少の犠牲は仕方がないと軍人としてそれが当然なんだろうが、俺にとっては受け入れ難いものだ。

「はいはい、分かりました!以後気をつけます。……で、こいつどうするんですか?」

男は横目に俺を見る。その視線は冷たい。赤い色がその冷たさを引きだたせていた。
何を受話器の向こうで言われているのかは分からない。必死に耳を澄ませて聞きとろうとしたが、声だけでなく何か雑音も入っているようでまたしても聞こえなかった。。

「……じゃあそれでお願いします。俺はもう部屋に戻りますからっ」

言い切る前に、男は受話器を叩きつけるように戻した。地下室にその音は大袈裟なほど響いた。

「良かったね、今日はここで寝なくて済むらしいよ。シャワーくらいは貸してくれるんじゃないかな」

ここでは寝たくないよね。男はそう呟きながら血のこびりついている奇妙な器具を俺に見せて来た。俺はそこま詳しくはないが、おそらく爪を剥ぐためのものだろう。少しずつ弱らせるにはちょうどいい。
本格的な拷問をされるのは初めてだ。どんな程度なのだろうかと考えていると、男は急に距離を詰めて来た。整った顔がすぐ近くまで近づき、そのまま耳元に口を近づけられる、

「明日からよろしくね、シズちゃん」

男はポケットから注射器を取り出すと、そのまま俺の首筋へと針を刺した。俺の身体はある程度は薬に対しても免疫はあったが、量が多いのか新薬なのかすぐに効果が表れ始めた。それ以前に針がこうも簡単に刺さるとは思わなかった。いつも治療をするとき、刺さりきらずに何本も折ってしまっていたのに。
ぼやける視界の中で、男は最初と同じように口元を歪めて笑っていた。それは子どものような笑顔だ。ナイフ刺している時も、まるで子供のような顔をしていたとぼんやりとし始めた頭で思った。

「……今度のおもちゃは楽しめそうだなぁ」

地下に響く男の笑い声を聞きながら、俺は意識を失った。





















Q、続くのか?
A、ノーコメント

原作っぽい臨也が書きたかった。



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