小説 | ナノ
愛してるよ



静雄視点※微エロ








学校の帰り道。何かあったら大変だからと家まで送る。家に入って行くのを見届けて、鞄の中から取り出した手紙をポストに入れる。直接言うには恥ずかしいことも、文字でなら伝えられる。俺の携帯番号も書いた。いつでも声が聞けるように。お前が寂しくないように。かけてくれると嬉しい。

毎日送り届けた後、想いをつづった手紙をポストに入れる。嬉しいに違いない。だって恋人からの手紙なんだ。
でも手紙に番号を添えたのに、電話はなかなかかけて来ない。きっと勇気がないんだ。だから俺からかけてやる。

教えてもらったお前の番号。毎晩かけて声を聞く。怒鳴った声も可愛くて、ついつい夜中に何度もかけていた。でもいつからか着信拒否。あぁ照れなくてもいいのにな。でも俺も悪かった。毎晩聞いてたお前の声。録音してたから毎日聞けるが、寂しくてたまらない。
机に置いた一枚の写真。中学のときらしいそれは、今と変わらず可愛くて。
そっとその写真に口付ける。いつか本人にしてみたいと思いつつ、録音した声を聞きながら自慰行為。きっとお前の啼く声は可愛いに違いない。早く聞いてみたいと願いつつ、お前の写真を汚す白色。

外で俺とお前は話さない。男同士で付き合ってるだなんて、バレたら大変だから。
お前は誰にでも優しく笑った。俺はそれに耐えられるほど心は広くない。でもお前が俺のことを一番愛していると信じているから何も言わない。嫉妬なんてみっともない。俺はお前の恋人なんだ。
でも焼きもちくらいは仕方がない。あいつが出したごみ袋。縛った口をほどいて中を見る。俺以外の奴と触れ合った証拠。浮気は流石に許せない。透明なゴムの中に溜まったそれは、白くどろついていた。
どうして浮気したんだと電話した。着信拒否されているから非通知で。お前が何か言うまで俺は何も言わない。最初は怒っていたお前も、最後には辛そうに泣いていた。
お前が浮気をやめたらやめる。反省してくれたならいいんだけどな。
壁に貼った写真たち。自然な表情が撮りたくて、本人には言わずに撮った。こっちを見ているものはないけれど、笑った横顔が愛おしい。持ち帰ったあれの中身を口に含む。生臭いはずのそれも、なんだか甘く感じた。今までにないくらい身体は熱くなった。これを直接飲めたなら。

遠慮することはない。俺たちは愛し合っている。浮気なんて一瞬の気の迷いだ。俺にはお前だけのように、お前には俺しかいない。そうだ俺が一緒に住んでやろう。そしたらきっとお前も喜ぶ。だって俺が嬉しいんだ。ならお前も同じ気持ちのはず。
俺がずっと一緒にいたなら浮気もしなくなる。寂しいからしたんだよな。そんなことにも気付けないだなんて、恋人失格だ。そんな俺をお前は許してくれるだろうか。俺はお前の浮気を許せる。愛してるから。

携帯片手に家を飛び出す。発信履歴に並ぶお前の番号。留守電に今から行くとメッセージ。
何度も来たお前のマンション。高鳴る胸を押さえながらエレベーターでお前の部屋へ。ドアを開けようとすると鍵がかかっていた。まだ合鍵は貰えていない。これから貰えばいい。ドアを数回叩く。返事はない。もしかすると倒れているのかも。辛くて俺に助けを求めているのかもしれない。そう思うと居ても立ってもいれなくて、ドアを壊して中に入る。あぁ、お前の匂いがする。肺の中をそれで満たしたくて深呼吸。
部屋を覗くとベッドの上にお前はいた。目を閉じて静かに眠る。とても綺麗で男だとは思えなかった。頬にかかった髪を触ろうと手を伸ばす。
その瞬間、ベッドの上にいるお前は俺にナイフを向けた。きっと怖い夢でも見たんだ。大丈夫、俺が来たからもう怖くない。刺そうと向かってきたナイフを避けて、その身体を抱き締める。あぁ服なんて無ければ直接肌に触れ合えるのに。きっと柔らかいに違いない。怖かったのか身体はガタガタと震えている。

ナイフを取り上げてそっと手の甲に口付ける。あまりの肌触りについ歯を立ててしまった。白い肌に赤い血は映えた。その血を舐めとる。血も甘いだなんて。もっともっと知りたい。お前のこと。他の誰も知らないことを俺にだけ教えてくれ。

涙で潤んだ瞳で見つめられる。そんな目で見るな、我慢できなくなる。薄ピンク色の唇を動かして、ずっと直接聞きたかった声が俺の鼓膜を震わした。





「ねぇ……君、だれ?」








あぁ、やっぱり綺麗な声だった。

















曲聞きながら書いた。

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